第78話 漂着(カイン)
いやあ………………久しぶりだな…………カイン視点……………。
(カイン視点)
う……………うう……………。
目を覚ましたら、眩しい光に目が眩んだ。とりあえず俺は生きている。今は夕方。西日が強い。
ここは…………………砂浜?少なくとも、バハル港じゃねえな…………。
「げぼ…………げえっ…………げほっげほっ……………。」
体を起こし、腹の中の海水を吐き出した。ばちゃばちゃと音を発てて塩辛い液体が白い砂浜を濡らしていく。
辺りを見渡しても誰もいない。ジェルスも、メレンも………………。
………………二人とも…………無事だろうか……………。メレン……………助けてやれなかった……………!!助けてって言ってたのに…………アイツを守るって決めたのに……………クソ…………ッ!!
俺は無意識に砂浜を強く拳で叩いた。貝殻にでも刺さったのか、鋭い痛みが走り、血が流れた。
……………とりあえず、この状況をなんとかしないと。砂浜の近くには整備された道があるようだ。それを辿って行けばどこかに着くだろう。
俺は立ち上がろうとしてよろけた。力が上手く入らない。溺れている時に木片にでも打ったのか左足に激痛が走る。見ると、僅かに腫れて赤くなっていた。しかし、だからといってここでじっとする訳にはいかない。槍を杖代わりにしてようやく立つ事が出来た。そのままゆっくりと歩き出す。
砂浜から道へ出るまでのほんの10メートル程で既に息が切れ始めた。足を痛めているし、さっきまで溺れて意識不明。かなり体力を奪われていた。衣服が水を吸ってかなり重い。腹も減っている。
衣服の水を魔法で蒸発させようとしたが、この体では無理だった。僅かにジュッという音がしたかと思ったら急に体が重く感じた。体力の無い体ではこんな事すらできない。
仕方なく服の上着にあたるものを脱ぎ捨てた。いわゆるインナーだが、こっちの方がずっと楽だ。下の方は流石にやらなかったが。
それでも少し進んだだけでどんどん疲れが溜まってきた。せめて、何か食べ物があればなあ………………。
「はあ、はあ、はあ………………ああっ!!はあ、はあ、はあ……………。」
我慢できずに腰を下ろして休憩をとった。まだ俺の寝ていた場所が遠くに見える程度にしか進んでいない。こんなんじゃ、村かどこかに着くのに何時間かかるのやら…………。でも、進むしかない。止まってたら飢え死にするだけだ。
3分程休んで数十メートル歩き、休んで、歩いて、休んで、歩いて、休んで。歩いて………………。
……………2時間くらいたっただろうか……………。
辺りはすっかり暗くなっている。疲れはもうそろそろピークだ。何度も転びそうになっている。足の痛みもつらい。
しかし、それでも大した距離を歩いていない。もう嫌だ……………、あまりの辛さに泣きたくなってきた。
…………………あれ?あの光………………見間違いじゃあない、建物か?
…………なんとか、助かりそうだな。
建物に向かって懸命に歩いた。既に疲れは限界まで来ていたが、あそこまで行けば助かる。そう思ってただひたすら歩いた。
しかし、希望だけで何でも乗り越えられる訳は無かった。希望さえあればなんとかなるのはお伽噺だけだ。現実は非情である。
俺が光に気づいた地点と光のある場所の中間辺りでとうとう膝が折れて地面に着いた。立ち上がろうと杖(槍)を使うも、足が全く動かない。右足はプルプルと震えるだけだし、痛めた左足にいたっては微動だにしない。這ってでも動こうとしたが、そのままばったりと倒れてしまった。起き上がろうと腕に力を込めるがもはや自分の体を起こす力すら残っていなかった。
クソ、ここまでか………………。……………………?
何か聞こえる………………これは……………ネコの鳴き声?いや、なんかネコの物真似っぽい気もするけど……………。
「ちょっと、待ちなさい!!いきなり走り出して……………どうし……………ちょっと、あなた、大丈夫!?」
暗くてよくわからない…………しかし、誰かが走ってこちらに向かってくる……………。
助かった……………のかな………………。
安心したのか、俺そのまま意識を失った。




