第77話 決意
(キュリア視点)
ジェルスが山へと向かうほぼ同時刻………。
わたしは昼ごはんを食べた後、いつものように村の子供たちと遊んでいた。みんなわたしを本当の姉のように慕っている。
川の近くで子供達とおしゃべりしていると、ふと、山へと向かう人影が見えた。
あれ、ジェルスさん……………?
なんか用なのかな?まぁいいか。
私はしばらく何も気にせずおしゃべりを続けていた…………が。
あれ?ジェルスさんって、あの事知っていたっけ……………?
「ごめんね、みんな。わたし、ちょっと用事ができちゃった。またね。」
わたしはそう言って家へと向かう。そしてお母さんに尋ねた。
「お母さん、ジェルスさんは…………。」
「あぁ、山に薪を取りに行ってもらったわ。少なくなっていたからね。」
「…………………危険区域の事、話した?」
お母さんの表情が一瞬で強ばる。
「いけない……………忘れてたわ……………。」
ジェルスさんが危ないかも……………。
わたしは気づけば自分の部屋にかけ上がり、普段は護身用の銃を持った。青い吸魔石が大気の魔力を吸ってその魔力を放つという仕組みのものだ。
そして家を飛び出す。
「ちょっと、待ちなさい!!キュリア!!」
お母さんの呼び止める声も聞こえなかった。わたしは一目散で山へと走って行く。
山に着くと、わたしはまず目を瞑り、気の流れを確かめた。
わたしには魔法の才能は全くないけど、唯一気の流れを読むことには長けていた。生き物の気配を感じたり、これから雲行きがどうなるかを知る事もできる。
どうやら奥…………多分危険区域で、生き物の気配、しかも戦っているのがわかった。急がないと……………。
私は奥へと走って行った。
(ジェルス視点)
俺達はまだ森の中を歩いていた。もうすぐ危険区域を抜けるだろう。どうやら、気の幹の傷が、危険区域の境界線だったらしい。
キュリアさんはずっと黙って歩いていた。しかし、危険区域の境界線を越えてしばらくすると、
「う、うう、うああ、うあああああああん!!!うあああああああああん!!!」
俺に抱きついて、大声で泣き出した。
「ちょっと、キュリアさん!!どうしたの!!?」
「うえええええん!!!わだしのっ!!わだしのせいでっ!!けがさせちゃった!!!あぶないめにあわぜちゃった!!!」
いきなりで戸惑いつつも、俺はキュリアさんを抱いて、なんとか泣き止ませようとした。
「そんな事ないよ、君がいなかったら俺は確実に死んでたし、君は俺の命を助けてくれたんだよ?」
「でもっ!!でもぉっ!!わだし、みんなをまもるためにごの銃つがうってきめたのにいっ!!まもるためだっだのにぃ!!!ぞれなのにぃ!!けがざせちゃったあっ!!!あぶないめにあわぜちゃたぁ!!!まもるためだっだのにぃ!!!」
……………………。
俺はなんて言ったらいいのか分からなかった。ただ、これだけはわかった。
俺が弱かったから、この子を泣かせてしまった。
俺は泣きじゃくる小さな女の子をぎゅっと抱き締めた。だんだんと落ち着いたところで、俺はキュリアさんに声をかけた。
「ごめんね………………。」
「え…………………。」
「全部、俺のせいなんだ………………。俺が弱かったから、俺が、あんな熊ごときに勝てない程弱かったから………………君に銃を使わせたし、君を泣かせてしまったんだ……………。君を、守れなかったんだ………………っ!!」
「そんな………………そんな事……………。」
キュリアさんがそう言ったが、俺は静かに首を横に振った。
「違わないだろ……………?俺があんなの、すぐに倒してれば、君はその銃を使ったのか………………?」
キュリアさんは言葉に詰まってしまったようだ。時々しゃくりあげるものの黙っている。
「だからさ………………。」
俺は笑ってキュリアさんに言った。
「俺、決めたよ。強くなる。強くなって、大事な人を守れるように、泣かせないように強くなるんだ。」
キュリアさんはしばらく俺をぽかんとした感じで見ていたが、
「わたしも……………」
「ん?」
「わたしも強くなります!強くなって、もう二度と自分のせいで、守るための力で誰かを傷つける事もないように!!」
「おう。」
そう言って、俺たちは微かに笑いあった。
「ま、とりあえず帰るか…………薪と篭捨てちゃったけど……………。」
「しょうがありませんよ……………それにしても、大丈夫なんですか?その怪我………………。」
「大丈夫大丈夫。それにしてもこの感覚、どこかで……………………」
!!!
「ど、どうかしましたか……………?」
「少しだけ、思いだした…………。」
「本当ですか!?」
「本当に少しだけだけど…………俺、火山で、女の子と戦ったのを思い出した……………相手の名前は…………聞いたハズだけどおもいだせない…………その時もこんな傷負わされた……………。」
「うーん…………火山で女の子と戦闘…………?状況が掴めませんねぇ…………他に何か思い出せませんか?」
「…………………いや、これだけだ………。」
「でも、少しでも思い出せて良かったですね。これがきっかけでどんどん思い出せればいいんですけと……………。」
「うん。」
うーん、俺って一体何者なんだろう……………恐らくガチの殺り合いだったと思うけど…………。
それも思い出すしかないかなぁ……………。俺、普通のティーンエンジャーだと思ってたんだけどなぁ…………。いや、剣携行してる時点で普通だとは到底思えないけどさ……………。
ま、こんな事考えてもどうしようもないか。まずは帰って、傷手当てして…………また薪も拾わないとな……………。
俺達は山の麓までたどり着いた。とりあえず、この傷手当てしよう…………。




