第62話 話し合い
「………………治療してくださり、ありがとうございました。」
「ああ。気をつけてな。若いのに、危ねえ事するんじゃねえぞ。」
火山での惨敗から一週間。俺はようやく病院から退院できた。また集中魔力治療室で寝たきりで一週間。外は夕方だった。部屋にずっといたせいか西日が眩しい。
俺は激痛で意識が朦朧としてたので覚えていないが、メレンがテレポートで逃がしてくれた後魔力の使いすぎで倒れてしまい、ジェルスが何とか助けを呼んでくれて病院に運んでもらい今に至る。
「で、あいつらが言うには本拠地は西の大陸にいると?」
で、今は宿屋で三人でこれからの方針について話し合い中。俺は入院中にメレンから起こった事を聞いている。
「うん。何で教えてくれたのかはわからないけど。」
ここのところメレンはずっと浮かない顔をしてる。
「ただ、サーリッシュが言ってたように、今殴り込んでも犬死にだろうな。………………どうする?」
……………………。
「おい、メレン。確かあいつらは、今は俺達を殺さない。そうだよな?」
「うん。それはそうだけど…………それが?」
「あいつらが俺達を“殺せない”としたら、俺達が何をしても、命の保障はある訳だな?」
「確かにそうだな。殺しにかかってくる事は無いハズだ。」
「なら、それを利用する。」
「どういう事?」
「修行だ。奴等を探すのは置いておいて、俺達の戦闘力を上げる。期間は……………そうだな。一年程。」
「待って。一年も修行してたら、その間に…………。」
「いや、カインの言ってる事、いけるかもしれない。もし俺達が修行してる間に世界を征服するのなら、火山で俺達を殺して、一気に各地へ攻めて、征服完了。それだけの事だ。」
「何の意図があるかはわからないが……………俺達を生かしておく以上、修行中に征服される事は無いと考えるのが妥当だろう。」
「……………わかった。不安だけど…………。このままじゃどうにもならないのは事実だしね…………。」
ここでジェルスが俺にたずねた。
「で、修行するのはいいが、いつ、どこで行う?」
「そうだな…………俺はこれから城でやってもいいと思うんだが………………。」
「私は西の大陸に着いてからがいいと思う。そこで修行すれば、もし修行中にあいつらが征服を始めても止めに行けるでしょ?」
メレンの発言を聞いて俺はなるほどと思った。
「それもそうか。なら、西の大陸へ行く為に、バハル港へ向かう。そこから西の大陸へ渡り、一年修行。修行が終わるか、奴等が征服を始めたら止めに行く。これでいいな?」
「ああ。」
「ええ。」
二人が頷く。
「よし、もう夕方だし、明日から一旦城へ戻ろう。俺の剣折られたから代えないといけないし、準備もあるからな。」
「私がテレポート使おうか?」
「いや、火山からここまで運ぶので倒れるくらい体に負担がかかるんだろ?ここから城まで飛んだら昏倒するか失敗してどっかに投げ出されるかのどっちかだろ。」
「そっか………………。」
「という訳で出発は明日。今日はもう休もう。」
「また歩き続けるのか……………。」
「我慢しろよ、俺だってすげぇ嫌なんだよ……………。」
「馬でもいたらなぁ…………。」
こんな感じでこの一日は過ぎていった。