第18話 準備
遅れて申し訳ありませんでした。
(カイン視点)
………………朝か……………。あまり寝れなかったな…………。
服があのメイドさんの涙でぐっしょり濡れている。どうして着替えてから寝なかったのか……………。安心して眠くなってしまったからなんだが……………。
いつの間に部屋に入ったのか夕食が下げられ、朝食が用意してある。なんかあっちの世界にない物が多い。これは…………生の魚の切り身?色が緑色だが……………。こっちは…………なんだ、この真っ赤なヘッドドレスみたいな果物は…………。
………飯は後だ。まず着替えよう。メイドさんに言えば用意してもらえるだろう。下に控え室があるって言ってたな……………。
俺は部屋を出て下の階へと向かう。
………………なんだ?地響き…………?バタバタと暴れる音。何かが倒れるバターン!!という音。皿が割れる音。甲高い悲鳴。そして静寂。
…………なんだ?明らかに普通じゃない。皆で派手に喧嘩してるのか?
……………とりあえずメイドの控え室の前まできた。再び暴れる音が中から響いている。…………静かになった。…………開けたくないなぁ…………。でも、様子みて何かあったら止めないとヤバイしな…………。
大きく深呼吸………。すー、はー、よし。俺は意を決してドアを開ける。
……………………バタン(ドアを閉める音)。
うん。見なかった事にしよう。あー、腹減ったなー朝飯でもたべようかなー
…………。
と、その時一際おおきなドーン!!!という音が響いて、ドアが静かに開いた。
「あ………カイン………様………どうか………なされ………ました………か……?」
なんか今にも倒れそうな程ボロボロだが大丈夫か?服が酷く破れ、あちこちから血が出ている。そして部屋の中から呻き声が聞こえてくる。
「いや………あの…………俺………大丈夫なんで……休んでください。」
「お気遣い……ありがとうございます………しかし………大丈夫………で………す………こ……………」
そうしてメイドさんが倒れてしまった。俺は慌てて駆け寄り…………部屋の内部を見た。
うん。さっきと同じ眺めだ。色々な物が散乱いた部屋の中にボロボロのメイド達が倒れている。テーブルの上には誰かの食事が置いてあり、その周辺は被害が全くない。何があった。
辛うじて意識のある一人のメイドさんによると……………。
「大丈夫です…………よく…………ある………こと………ですから…………。」
おいおい、こんな乱闘がよくあるのかよ…………この職場、大丈夫か?
しかし、メイドさんは頑なにいつも通りと言い張っている。……………信じよう。というより、この光景は忘れよう。
その後、王様の世話で無事だったメイドさんに話を聞くと、ちょくちょくあんな喧嘩して、全員倒れて、起きたら皆で散らかった部屋を片付けて、そしたら仲直りしてるらしい。ある意味すごい。
………とりあえず、朝飯食べよう。俺は自分の部屋に戻り、あっちの世界では見ない食事に手をつけた。
……………………。
…………うん。意外と美味い。見た目によらない。あの魚の切り身みたいな奴の味がチーズなのが予想外だけど、まあ食える。
さて、後はこの紅いヘッドドレスのような果物だ。艶があって見た目は美味しそうだ。匂いは…………しない。
……………。俺はとりあえず丸かじりしてみた。うん。美味い。だいじょ…………。
!!!
「あーーーーーーーーーッ!!!!(断末魔)」
辛い!!いや、むしろ痛い!!!昔間違えて唐辛子を丸ごと食べたことがあるけど(危ないので以下略)それより酷い。こんな食い物があるのか!!?
それから五分くらいしてようやく落ち着いた。全く………罰ゲームか……………。
…………旅立ちの準備しよう。俺は無事だったメイドさんにたのんで倉庫に案内してもらった。
様々な剣、槍、斧、弓、杖、棍棒、鞭など、ところ狭しと武器が並んでいる。とりあえず、色々素振りしてみよう。
まず、すぐ近くにあったバスターソード(片手、両手のどちらでも使える大型の両刃剣)を持って軽く素振りする。うわっ、重い。両手ならわりと扱えるけど(片手では重すぎて振り回すのがやっと。)、これじゃ動きづらいし、隙ができる。
次に一般的なランス(騎馬隊がよく使用する長槍)で突いたり横に振り回したりした。中々いい。保留。
バトルアックス(近接戦闘用の大斧)重い。却下。ロングボウ(長い弓)…………アーチェリーは苦手だ。却下。
そして色々やって、俺はロングソード(細長い両刃剣。軽量で盾と共に扱いやすい。)を選んだ。扱いやすさもそうだが、こういう世界を救う勇者はこんな剣を持っているイメージがあった。……………安直すぎるだろうか?
服は鎧だと動きづらいし、何よりもゴツい感じがしてしまうので、メイドさん曰く、軽くて動きやすい、旅人が好んで着る服を選んだ。町の人が着ているのに似ているが、試着してみると学校の体育服のように動きやすい。いいな、これ。これにしよう。
用意を終えた俺はメレンがまだ起きてない事に気づいた。
…………あいつも起こして、準備させよう…………。
俺はメレンを起こすため、メレンの部屋に向かって歩き出した。