第16話 休憩(カイン編)
「こちらがカイン様のお部屋になっております。どうぞごゆっくりなさってください。御用の際はお手数かけますが、下の階にメイド達の休憩室がありますので、そこまでお訪ねください。」
俺を部屋まで案内してくれたメイドさんが俺に向かって言った。
「はい、ありがとうございます。」
俺がそう言うと、メイドさんは軽く一礼して、部屋から離れて行った。
俺は部屋の中に入り、中を確認した。
やや狭いが、綺麗に掃除されてる部屋だ。俺は少し狭いくらいの場所が落ち着く。逆に広い場所はどうも落ち着かない。……………俺が変なのだろうか?そういえば、メレンは広い部屋を所望していたな……………。
窓際にはシングルベッドが設置してあり、よく整えられている。その隣にチェストが置いてある。
部屋の中心に木製の低い四角いテーブル、ふかふかしてそうなおしゃれな白い椅子があり、テーブルの上の花瓶には見たことのない花が飾ってある。ユリの花ににているが花弁が2枚で、青紫の花だ。
その他は化粧台(俺には必要ない。)、クローゼットといった所か。
うーん……………。まずは風呂に入りたいな…………。ここの所随分風呂に入っていないし。ここに来る途中に風呂は東側の突き当たりにあるって言われた。行ってみよう。
…………城の中って広いなぁ………結構歩いているがなかなかたどり着かない………………。
あ、ここかな?2つのドアがあり、それぞれに文字が刻まれている。もちろんあのややこしい文字で。
俺は魔力でその文字を英語に翻訳する……………うわ、俺の魔法が下手なのか凄い歪んだ字になりやがった。とりあえず右が男湯、左が女湯のようだ。
左のドアの方からシャワーの音と高い音の鼻唄が聞こえてくる。恐らくメレンだろう。
……………中の様子を想像してしまった。俺は何をやっているんだ……………。
……………改めて俺は右の方のドアの中に入った。狭い更衣室になっている。俺は面会の時から着ていたこの服を脱ぎ、更に奥へと進んだ。
とても広い大浴場だ。一般的な風呂を始め、水風呂、サウナ、様々な色をしたお湯が張られている風呂(魔力により色が混ざっていないようだ)がある。
俺は軽く体と頭を洗い、その後湯船に浸かった。
あぁ……………。丁度いい水温だ…………。心地いい……………。久々の風呂がこんなにも気持ちいいとは……………。
入って直ぐに、俺は強烈な睡魔に襲われた。…………まぁ………当然…………だよな……………色々……………あり………………すぎたし……………病院じゃ…………慣れなくて…………………ろくに………寝れ……………なかった…………から……………な………………。
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「カイン様、起きて下さい。」
「う……………ううん……………。」
俺は……………そうか…………風呂の中で眠ってしまったのか…………。この金髪のスレンダーな体型のメイドさんが俺を起こしてくれた。年齢は俺と同じか少し上だろうか。
「お風呂に入ってから2時間程経過しても出てこなかったので大変失礼ですが、確認の為に参りました。風邪をひきます。おあがりになってお部屋の方でお休みください。」
「あ、はい。ありがとうございます。」
と言って俺は立ち上がった。………………が。
『あ。』(二人同時に)
そう、風呂に入っているから当然の事なのだが俺はいま裸である。つまり見せたくないものが丸見えであって………………。
「わーーーーーーーーーーー!!!!!」
「きゃーーーーーーーーーー!!!!!」
二人同時に叫んだ。俺、今年で一番デカイ声出したかもしれない。
「ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!あの…………その…………ごめんなさい!!」
メイドさんが凄い動揺して謝っている。目からぽろぽろ涙を流している。
「あの…………謝罪はいいので…………あの…………着替えるので…………。あと、泣かないで下さい…………。あなたは悪くないので…………。」
湯船で下半身を隠しながら俺はそうメイドさんに言った。
「はい…………失礼します…………ごめんなさい……………うわあぁぁぁん!!!」
メイドさんが号泣しながら出ていった。…………凄い罪悪感が残る。後で謝りに行こう。
俺は凄まじく暗い気持ちで着替え、風呂場の外へ出た。メレンの部屋の前でメレンがびっくりした様子でこちらを見る。
「あの………カイン………さっきメイドさんが大声で泣きながら走って行ったんだけど…………なにかあったの?」
「いや…………その…………すまん…………聞かないでくれ…………。」
「どうしたの?顔真っ青だよ?」
「俺は大丈夫……………。たけど…………ごめん………しばらく一人にさせてくれ……………。」
俺はそういって自分の部屋に行き、ベッドで横になりしばらくボーッとしていた。
するとコンコンとドアをノックする音がした。
「………どうぞ。」
「し、失礼します………。」
怯えたようなか細い声がした。さっきのメイドさんだ。
「あの…………食事を………お持ちしました…………。」
「あ、ありがとうございます…………。」
そのメイドさんはテーブルの上に食事を置くと、いきなり床に土下座した。
「あの、本当に申し訳ありませんでした!!」
俺は慌ててメイドさんに駆け寄った。
「あの………いいんです。俺を心配して来てくださったんですよね?それなのにこんな事になってしまって…………ごめんなさい。だから土下座なんてしないでください。」
「私……………これをメイド長に言ったら…………王様には黙っておいてあげるからちゃんと謝っておきなさいって……………、もし王様に知られたら…………私…………首が飛んじゃう…………うわああぁぁん!!!!」
また号泣し始めた。俺はどうしていいかわからないが、泣き止ませた方がいいだろう。
俺は昔に色々あって泣いてる女の子を泣き止ませるのは得意だ。学校でも泣いてる女の子を泣き止ませるのが得意と言われた事があり、実際数名泣いてる女の子をあやしたりした。
しかし、ここまで号泣してる人を泣き止ませるのは随分久しぶりだ。泣き止むかな…………。
とりあえず軽く抱き寄せ、背中をポンポンと軽く叩いた。抱き寄せるまでするのはあいつ以来だ。あいつは首筋から背中にかけて撫でてやると落ち着いたが……………この人はどうだろうか…………。
…………いや、今あいつを思い出すのは止めよう。
首筋から背中にかけて撫でているのを繰り返しているとだんだん落ち着いてきたようで、時々しゃくりをあげるくらいにまでになった。
「あの…………落ち着きました?」
「はい…………、すみません。そして、ありがとうございます……………。」
「あの……もう……気になさらないでください…………。」
「はい…………。ありがとう…………ございます……………失礼します………。」
そうしてメイドさんは部屋から離れていった。
俺は大きな安堵の溜め息を洩らした。やっと落ち着いてくれた…………。
…………なんか凄い疲れたな………………もう休もう…………。
俺は夕食に一切手をつけず、ベッドに横になり、そのまま眠りについた。