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第6話 彼は絶望の風景を「極上の掘り出し物」と呼ぶ

馬車が霧深い山道を抜けた先に現れたのは、もはや村と呼ぶにはあまりに無残な光景だった。

うずくまって動かない老人、やせ細った子ども達。田畑はひび割れ、家々の屋根は朽ち落ちている。


「……見ての通りだ、カガリ殿。数年来の冷害、そして川の上流に陣取った魔物どもによる水流の遮断。もはやこの村には『明日』は残っていない。皆、最後の誇りを胸に、餓死を待つ身だ」


マサムネが苦渋に満ちた声で告げる。アリサは言葉を失い、持ってきた食糧の袋を抱きしめたまま震えていた。

だが、カガリの瞳だけは、計算機のように冷たくこの村をスキャンしていた。




カガリは馬車を降りると、泥濘ぬかるみを避けるように優雅に歩き、村人たちを観察し始めた。

スキル【ファミリー・レジャー】が、絶望の風景を「数字」へと変換していく。


【鑑定:九条の里】

・運営状態:事実上のデフォルト(債務不履行)

・人的資源:飢餓による稼働率 16%。ただし、個々の「基礎身体能力」と「規律ガバナンス」は最高ランク。

・潜在価値:武芸の伝承による高付加価値な「セキュリティ・サービス」への転換可能性 95%。


「……素晴らしい。ここにあるのは悲劇じゃない。……『極上の掘り出し物』だ」


「な、何言ってるのカガリさん!

こんなにみんな苦しんでいるのに……!」


「……マサムネ、この村のリーダーを呼べ。

……今すぐ、この不良債権の買い取り(買収)交渉を開始する」




村の広場に、動けるだけの村人が集められた。マサムネが持ち帰った緊急予備費によって、わずかな粥が配られる中、カガリは広場の壇上に立ち、冷徹な宣言を行った。


「九条の里の諸君。私はコンシリエーレのカガリだ。単刀直入に言う。……君たちの命は、現在『無価値』に等しい」


ざわめきが起こる。マサムネが制止しようとするが、カガリは続けた。


「食べるものもなく、ただ誇りを抱いて死ぬのを待つ。それは経営学的に見て、最も愚かな『価値の放棄』だ。

……だが、私は君たちの『洗練された武力と規律』に、投資する価値があると判断した」


カガリはアリサを指差し、さらなる食糧の山を積み上げさせた。


「これは今日から一ヶ月分の食糧だ。

……条件は一つ。今日から九条の里は、私の組織の『武装警備部門』として再編される。

君たちの刀は、これまでの私闘のためではなく、私のビジネスとこの村の利益を守るための『暴力装置ハードウェア』として運用してもらう」


「……我らに、誇りを捨てて雇われの犬になれと言うのか!」


一人の若者が叫んだ。しかし、カガリは鼻で笑った。


「誇り? 家族を飢え死にさせることが君の誇りか? 私の提案は『対等な雇用契約』だ。

……君たちが私の命を守り、私の敵を排除する。その対価として、私はこの村の飢饉を根本から解決し、君たちに『一族の繁栄』という配当を約束する」


カガリはマサムネの肩に手を置いた。


「マサムネ。君は九条の里を救いたいと言った。ならば、墓を守る守護者ではなく、利益を生む『執行官エンフォーサー』に今すぐに変われ。

……私の帳簿に、不履行うそはない」


マサムネは村人たちを見渡し、そして深々と頭を下げた。

それに続くように、村の武士たちが次々と膝をついていく。


「……承知した。これより九条の里、カガリ殿の『傘下』に入り、その牙とならん」


「いい返事だ。……では、最初のアジェンダを。

……まずはインフラの再建だ。マサムネ、上流を塞ぐ魔物とやらを『強制退去』させる。

……これは、我々の最初の大切な資産防衛だ」


カガリの冷徹な一喝が、死にかけていた村に、かつてないほど鋭い闘志を注入した。

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