10/43
第10話
保育園を今話で卒園します。
その日から、
何も隠さなくなった。
やろうと思えば、できた。
でも、やらなかった。
胸の奥が、
冷たくなるからだった。
それだけだった。
みんなは、前と同じだった。
笑って、
走って、
泣いていた。
先生も、同じように声をかけていた。
何も変わっていなかった。
僕も、その中にいた。
でも、
少しだけ遠かった。
声も、
笑い声も、
少しだけ、遠かった。
何をすればいいのか、
よくわからなかった。
言われたことだけ、やった。
それ以外は、
あまり動かなかった。
ある日、
先生が声をかけてきた。
「これ、やってみる?」
毛糸と針を渡された。
やり方を教えられて、
その通りに動かした。
同じことを、
何度も繰り返した。
考えなくてもよかった。
ただ、
手を動かしていた。
それでよかった。
――邪魔になっていない。
それだけで、
十分だと思った。




