第6回「美少女ドブネズミハンター始動」⑴
「壮介君!!」
「ん?どうした?」
家の座椅子に座りながら、スマホに熱中してた壮介が顔を上げると、なんと、のいのいが目を真っ赤に腫らしていた。
のいのいの透き通った瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちる。
「おい、のいのい、そんなに号泣して、何があったんだよ!?」
「壮介君!!」
のいのいが声を震わせながら叫ぶ。
「冷凍庫に入れておいたネズミ、勝手に食べたでしょ!!??」
……………。
「いやいや、のいのい、『冷蔵庫に入れてあったプリン、勝手に食べたでしょ!!??』みたいなトーンで訳の分からないこと言わないでよ!!」
「食べたでしょ!!??」
「食べれねえよ!!人間の食べ物じゃねえよ!!」
もしかしたらどこかの国ではネズミを食べることもあるかもしれないが、少なくとものいのいが指している「ネズミ」は人間の食べ物ではない。
それは、ブラ子、つまりコブラのエサ用の冷凍ネズミなのである。
「じゃあ、一体ネズミはどこに行ったのよ!!??」
「普通に使い切っただけなんじゃないか?ブラ子、よく食うし」
そういえば、ブラ子がとぐろを巻きながら物欲しそうな目で壮介のことを見ていたので、最後の一匹をあげてしまったような記憶もある。
ブラ子は、味わうことなく、それを一飲みしていた。
「壮介君、マズイよ!!ブラ子のエサがないよ!!!緊急事態だよ!!!」
「買ってくればいいだろ」
「そうね。狩ってきましょう」
……ん?? 会話が通じているような、通じていないような??
壮介は、イントネーションに気をつけながら、もう一度言ってみる。
「のいのい、ネズミ買ってきなよ」
「分かった。ネズミ狩ってくる」
……やっぱり通じてない!!!
高度に経済が発達した資本主義社会で、なぜハントなのか!!??
まさか、ゲームのやり過ぎで「一狩り行こうぜ!」を軽いノリで捉えてしまっているのでは!!??
……というような経緯で、2人は上野に訪れていた。
今日は日曜日。天気は快晴。
公園、動物園、美術館、博物館、そしてアメ横。
都内屈指の観光スポット密集地帯には、日本人や外国人、老若男女を問わず、多くの人がこぞっていた。
のいのいは全く意識していないだろうが、デートをするには最高のシチュエーションなのである。
外出するということで、のいのいは普段よりもしっかりメイクをしていて、寒い中でも精一杯オシャレをし、ベージュのコートの下からは生脚が覗いている。
壮介は「こんな美人な彼女とデートできるなんていいだろ。羨ましいだろ」と道行く人にマウンティングをしながら闊歩できたとしてもおかしくない。
もしも、のいのいが大きな虫アミと虫かごを持ってさえいなければ。
のいのいは、噴水前の広場で、通行人にぶつけそうな勢いで、虫アミをブンブンと振り回す。
「よしゃ!!ドブネズミハンター、ここにて始動するよ!!」
「美少女ドブネズミハンター始動」。これが今回のワクワクコブラパークのタイトルである。
「ブラ子、待ってろよ!!!のいのいママがご飯ゲットしてくるからな!!!」
のいのいは虫アミを振り回しながら走り出す。
壮介は、道行く人から、のいのいの同行人であるとバレないように、適度な距離を取りつつ、見失わない程度にのいのいの後をつけていった。
なぜ上野なのか。
それは、のいのいの「目撃情報」による。
のいのいが数年前、ABABに買い物に行った帰り、中華料理屋の看板の下をくぐって走り抜けるドブネズミを見たことがあるとのことだ。
今の時代になぜ若い女の子がABABに買い物に行くのかということをさて置けば、ありえそうな話である。
上野にはドブネズミが好みそうな、衛生管理が行き届いてない汚い中華料理屋がたくさんありそうだ。
のいのいと壮介は、まず「目撃情報」のあった中華料理屋へと向かった。
「ここだよ」
のいのいが立ち止まったのは、大通りに面した雑居ビルの前だった。
そのビルの一階には、壮介のイメージ通りの、衛生管理が行き届いてない汚い中華料理屋があった。
「どこだどこだ」
のいのいはしゃがみこんだり、地べたに伏せたりしながら、看板下や店と店の間の隙間などを覗き込む。
壮介としては、他人のふりをして距離を取るか、ラッキースケベを期待して距離を詰めるか悩みどころであった。
「いないなあ」
「まだ時間も早くて、陽も出てるからいないんじゃないか」
「そうなのかなあ」
「夕方になるまで時間を潰さない?さっきオシャレな喫茶店を見かけたからそこに入ろう」
よし、さりげなく誘えた。上野で喫茶店デート。最高のシチュエーションではないか。
「そうだね。中華料理屋さんの屋根裏にお邪魔させてもらおうか」
………ん?今日ののいのいはいつにも増して会話が通じないのか?
「のいのい、迷惑だから辞めようよ。普通、見ず知らずの人を屋根裏に入れたりしないから」
「私たちがドブネズミハンターでも?」
「ダメだろ!」
当然である。怪しさこの上ない。
「じゃあ、私たち、盗聴器ハンターということにしよう。『お宅の屋根裏から盗聴電波が出てますよ』って」
「ダメだって!!!」
たしかにそんな番組見たことあるけども!!
久々になってしまいました。
心が完全にミステリーに流れているので,この作品になかなか情熱を注げないんですよね。
このままエタろうかとも思いましたが,少しだけブックマークをいただけてるので,アイデアがあるだけ吐き出します。




