表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白の探索者  作者: ニート無職
一章
1/46

職業

私の髪は、生まれつき白い。


 染めているわけじゃない。


 病気でもない。


 ただ、白い。


20XX年、この世界ではそんな特徴も“少し変わっている”程度になった。


 ダンジョンが現れたからだ。


 最初に出現したのは、東京駅地下。


 巨大な陥没事故だと思われたそれは、内部調査によって“異世界に繋がる空間”だと判明した。

陥没した地下には黒い"門"が立っていた。壊したり、動かそうとしたが、びくともしない。門は簡単に開いた。


 中には見たこともない生物がいた。


 剣や牙で襲ってくる怪物。


 光を放つ鉱石。


 そして、人間の身体能力を強化する未知のエネルギー。


人類はそれを"魔力"と言った。


門が現れた日に、人類の前にステータス画面が現れた。16歳になると、見えるようになるらしい。少なくとも私はまだ見えていない。


ステータスが見えるようになると【職業】を選べる


剣士、魔導士、治癒師。


選んだ職業によって人生は変わる。高レベル探索者は、『歩く災害』と言われている。


 それから数年で世界は変わった。


 ダンジョン攻略は国家事業になり、探索者はなりたい職業ランキング一位となった。


 配信者より、スポーツ選手より、人気がある。


 テレビでは毎日どこかの攻略配信が流れ、コンビニには探索者監修の栄養ゼリーが並び、学校には《探索者適性検査》が導入された。


 そして魔力は、人間そのものも変えていった。


 赤い瞳。


 銀色の髪。


 耳の尖った子ども。


 人類は少しずつ、“異世界側”へ近づいていた。


 だから白髪くらい、今ではそこまで珍しくない。



 小学校では「雪女」「じいさん」なんて呼ばれたし、高校生になった今でも、初対面の人にはだいたい二度見される。


 慣れたものだ。


 知らない人に髪を見られるのも。


 写真を撮る時、知らない子どもに「あの人アニメみたい」と指を差されるのも。


 今さら傷つきはしない。


 ……少し、面倒なだけ。


「水瀬 零、次お前」


 担任の声に顔を上げる。


 教室前方のモニターには、《探索者適性検査》の文字が表示されていた。


 高校一年。


 十六歳。


 今日、私たちは初めて“ステータス”を見る。


 教室の空気は朝から落ち着かなかった。


 有名クランへのスカウトを夢見てるやつ。


 将来のことを考え不安なやつ。


 ただ面白がってるだけのやつ。


 みんな浮ついている。


 そりゃそうだ。


 この日で人生が変わる人間もいる。


 前の席では、短髪の男子が小さくガッツポーズをしていた。


「剣士! マジか!」


 周囲から歓声が上がる。


 職業《剣士》。


 探索者としては王道中の王道。


 身体能力補正が高く、前衛適性も優秀。企業クランの人気も高い。


「いいなぁ……」


「勝ち組じゃん」


 教室がざわつく。


 先生は慣れた様子で次の名前を呼んだ。


「南、《治癒師》」


「えっ、うそ……!」


 今度は女子たちが騒ぐ。


 治癒師。


 希少職。


 パーティに一人いるだけで生存率が大きく変わる。


 国家資格扱いで、就職先にも困らない。


 泣きそうな顔で喜ぶ南さんを見ながら、私は窓の外へ視線を向けた。


 曇り空だった。


「……水瀬」


 再び名前を呼ばれる。


 教室の視線が集まった。


 いつものことだ。


 私は席を立ち、教壇前へ向かう。


 透明な水晶へ手をかざす。


 瞬間。


 ――ピカッ。


 一瞬、大きく光った。


「……え?」


 先生が目を見開く。


 教室が静まり返った。


職業 《勝負師》


 私は、意識を失った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ