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闘神と仙術スキルでアポカリプス世界を駆け抜けろ!  作者: クラント
狩人編

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閑話 中央の反応3


<中央 №8ブロック 深紅の巣内 ディー・ディー・ディー>



 地上から下ること数百メートル以上もの地下に作られた最奥の間。

 数百人単位の兵士が並んで訓練できそうな程広大なエリア。


 そこで繰り広げられる紅の巨人と黒の巨兵の戦い。



 紅の巨人は全高15mの超重量級……女性型。

 ゆったりとしたトーガを纏ったような外装。

 きらびやかに飾り付けられ、いかにも貴人といった風体。

 顔の部分はフードで隠されているものの、

 さぞやその素顔は美しいだろうと思わせる気品に満ち溢れている。


 これぞ超重量級の紅姫、機械種スカディ。

 それは北欧神話において、山の女神とも言われる女巨人の名。

 父の敵を討つため神々が揃うアースガルズに乗り込んだという逸話を持つ猛々しい女傑。

 それでいて数々の男神と関係を持ったという奔放さを併せ持つ。


 

 一方の黒の巨兵は、全高5.5mの人型戦車……重二足。

 メタリックに輝く黒一色に染められた装甲。

 極限までスリムに作られた鋭角的なフォルム。

 武装は拳から伸びる爪剣と前腕から鮫のヒレように生えた刃。

 そして、背中のバックパックに搭載されたミサイルポッドとキャノン砲。


 人類の英知を以って作られた人造巨兵。

 『黄星機工』が作り上げた最高傑作。

 

 限定的ながら重力制御と空間制御を組み込み、

 不可能と言われた虚数制御の発動を可能とした奇跡の産物。

 人型戦車の可能性を切り開いた最新型。



 『黒曜(オブシディアン)棺桶(・コフィン)』。

 


 しかしながら、今でこそ最高傑作と言われているも、

 当初は机上の空論を元に作り上げられた自殺兵器の扱いであった。


 速度と攻撃力に振り切った尖った性能。

 紙装甲としか言いようのない防御力の薄さ。

 

 その速度は常人なら10秒も耐えられずに失神。

 敵の攻撃は全て躱すことが前提らしい狂ったコンセプト。

 攻撃される前に潰せという馬鹿げた発想から生まれた奇物。

 

 伊達に棺桶と名付けられていない。

 狂人が設計したとしか思えない歪な仕様。


 だが、1人の天才と優秀なスタッフ達が、この機体に『重力制御』と『空間制御』、そして『虚数制御』を組み込むことに成功。

 

 敵の射撃は重力膜や歪曲空間フィールドで逸らし、

 躱せない範囲攻撃は瞬間的な虚数制御の『確率変動』によって防ぐ。


 これにより、防御力、耐久力はもちろんのこと、継戦能力も著しく向上。

 さらには重力や空間を攻撃に転用することも………



 しかし、これを十全に扱うためには天性の才能が必要。

 目に見えない重力や空間を感知する超感覚。

 それを極小単位で操作可能な精密さ。

 重力や空間を使った超加速に耐えられるだけの肉体的な頑丈さ。

 一つ間違えば自滅しかねない能力を冷静に扱うことのできる豪胆さ。

 何より人類とって未知の存在である虚数を把握する認識力。

 その実態すら定かでない虚数を操ってみせる思考力と思考速度。


 それらを兼ね備えなければ、この化け物は乗りこなせない。

 そんな人物は、世界中を探してもたった1人しかいないであろう。



『死の踊り手』ディー・ディー・ディー(以下DDD)。



 若き人型戦車乗りにして、恐れ知らずの猛者。

 自らの『史上最高の天才』と言って憚らない自信家。

 



「ギャハハハハハッ! 遅い遅い遅い遅い!」




 人型戦車の外部スピーカーから若い男の声が響く。




「デカブツがあぁ! 遅すぎるんだよぉ! ブクブク膨れた胸が重いんじゃないのかあぁ?」




 声の質は美声と言っても良い。

 しかし、その内容はとても上品とは呼べないモノ。

 まるでスラムの不良少年のような口ぶり。


 天才操縦士の一面を持ちながら、

 反骨心が抜けきらない、子供のような側面を持つ。

 

 『黒曜(オブシディアン)棺桶(・コフィン)』を駆り、

 次々に前代未聞の成果を叩きだす新規気鋭の若手狩人……DDDとはそんな男。




「俺様が削ぎ落としてやるよぉ! 綺麗さっぱり真っ平らになあぁ!」



 ガコンッ!



 『黒曜(オブシディアン)棺桶(・コフィン)』が背負ったバックパックから短めの砲筒が出現。

 


 ドンッ!



 そこから撃ち出される数発の超小型ミサイル群。

 

 バラバラと乱れるように砲筒から飛びだし、

 紅姫スカディへと襲い掛かる。

 


 バンッ! バンッ! バンッ!

 バンッ! バンッ! バンッ!



 その全ては紅姫スカディが纏う障壁に阻まれ届かず。


 小さな破裂音を響かせただけ……



 キラキラキラ……



 いや、違う。

 紅姫スカディの周りにミサイルの破片……、

 内部に仕込まれた『蒼粉(ブルーパウダー)』が舞う。


 蒼石を砕き、特殊な処理をすることで、

 機械種のマテリアル術の発動を妨害・解除するアイテム。



 紅姫が纏っていた障壁が音もなく消える。

 蒼粉はマテリアル術の強弱に関係なく、

 術そのものを打ち消してしまう。


 だが、効果時間はほんの数秒。

 しかし、その数秒があれば、『黒曜(オブシディアン)棺桶(・コフィン)』が振り下ろす死神の鎌が届く。



「行くぜええええ!!!」



 超加速で紅姫スカディへと突撃する『黒曜(オブシディアン)棺桶(・コフィン)』。

 


 両手の爪剣を振り上げ、錐揉み状態で飛行。

 

 急加速から急旋回。

 激しく前後左右、アップダウンを繰り返す、敵に予測をさせない変則軌道。


 辺りに舞い散る『蒼粉(ブルーパウダー)』が紅姫のマテリアル術の発動を妨害。

 迎撃体勢すら取れずに接近を許す。



「ギャハハッ! 死ね! くたばれ! ゴミ屑になって、ぶちまけられろ!」



 奇声とともに、『黒曜(オブシディアン)棺桶(・コフィン)』が唸りを上げる。



 ここからが『死の踊り手』たるDDDの真骨頂。

 紅姫を死のダンスに誘うべく、上下左右に刃を振い、

 抱擁を求めるような動き、纏わりつくような機動で敵を翻弄。


 黒い巨兵が右へ左へと動くたび、

 紅姫の装甲が削られる。


 まるで黒い旋風に巻き込まれたかのように、

 鉄片が、配線が、回路が、火花と共に千切れ飛び、

 辺りにバラ撒かれて、床に並べられていく。



 もちろん紅姫も無抵抗なはずは無く、

 黒の巨兵を叩き落すべく、その拳を振り回す。



 また、蒼粉の効果が切れたことで、

 マテリアル術の行使も可能となる。


 紅姫の拳が唸る度に冷気が迸り、

 氷の嵐が巻き起こる。


 すでに接近を許したことから障壁は張れないが、

 うるさい羽虫を凍りつかせるのは容易いはず……



 しかし、『黒曜(オブシディアン)棺桶(・コフィン)』の動きはそんなモノでは止められない。


 虚数制御を発動させ、敵のマテリアル術の威力を減衰。

 重力制御を使って発生させた重力膜を纏い、超高速で動き回り、

 敵に的を絞らせない機動に終始。


 

 紅姫が振り回す手に当たらないのは当然として、

 超低温の冷気や氷の嵐くらい、ばら撒かれた程度では重力の膜は突破できない。


 巨大な氷の塊でもぶつけられたなら、重力膜も無意味だろうし、装甲の薄い『黒曜(オブシディアン)棺桶(・コフィン)』は一溜りもなかっただろうが、DDDが操縦している限りそれはあり得ない。

 

 DDDの操縦技術は神の領域。

 人型戦車を動かしその指で針の穴に糸を通すことくらい朝飯前。


 未来を読んでいるがごとき、洞察力で敵の動きを完全察知。

 幾百の戦闘を経て、未だまともな被弾はゼロという狂った戦績を誇るのがDDD。

 


「ギャハハッ! 他愛ねえなあ! それでも100年この巣を守ってきた紅姫かよ!」



 止まることの無い『黒曜(オブシディアン)棺桶(・コフィン)』の猛攻。


 DDDの罵倒が響き渡る中、『黒曜(オブシディアン)棺桶(・コフィン)』は、紅姫を切り刻み、やがて、その手足が飛び、そして……




「喰らえ! 『ブラックスローター』!」




 『黒曜(オブシディアン)棺桶(・コフィン)』の爪剣の先から伸びる重力刃。

 『虚数制御』を組み合わせ、敵の防御力を下げた上で、切断する必殺技。


 DDDの雄叫びと共に黒い閃光が煌めき、



 ザンッ!



 直径1.5m以上もの首が両断。

 ものの見事に刎ね飛ばされ宙を舞う。



 ドシンッ!!



 塔が崩れ去るように地に伏す紅姫スカディ。

 辺りに轟音が響き渡り、それが死闘の終焉を告げることとなった。








「ディー! 大丈夫?」



 紅姫との戦闘が終了すると、今まで後ろに控えていた彼のサポーター達が広間へと入ってくる。


 その中の1人、焦げ茶色の髪にDDDとお揃いのヘッドセットをつけ、

 整備士服を着こんだ二十歳前くらいの女性がDDDの名を短く呼ぶ。



「当たり前だろ! ルールゥ。俺様は無敵だ!」



 ぶっきらぼうな声と共に、『黒曜(オブシディアン)棺桶(・コフィン)』のコックピットが開き、中から20歳くらいの青年が姿を現す。


 身長170cmそこそこという戦士にしては少し小柄と言える体格。

 体にぴったりと張り付いたパイロットスーツからは体操選手のように絞られた肉体が見て取れる。


  豹やチーターのような俊敏な肉食獣のしなやかさ。

 パワーよりもスピードを重視した鍛え方であろう。


 頭に装着されたヘルメット型のヘッドセットを脱ぐと、そこに現れるのは、金と黒の斑に染めた髪。

 そして、まだ少年の幼さが残る天使のような美しい相貌。

 

 絶世の美青年と呼んでも差し支えは無い。

 この顔だけで巨万の富を稼ぐことができるであろう。


 しかし、その口元には獰猛とも言える不敵な笑みが浮かび、

 灰青色の瞳には、ともすれば自らを焼き尽くす程の熱量を秘めた輝きが灯る。


 美しい容姿に、溢れんばかりの才能。

 けれども中身はスラムで暴れる一匹狼の不良というアンバランスさ。


 これが、今、中央で世間を賑わせている重二足使いの狩人 DDD。

 全ての狩人の頂点まであと一歩というところまで来たトップ層。




「ディー!」



 床に降り立ったディーの元に駆け寄ってくる少女、ルールゥ。

 

 その容姿は年頃の女性らしい可愛らしさはあるものの、

 DDDの芸術品とも呼べる美貌と比べるとその差は歴然。

 街の中では埋もれる程度でしかない。


 しかし、そんなことなど気にする様子もなく、

 彼女は恋人でもあるDDDに飛びつこうとした瞬間、





「!!! 危ねえ!」


「キャッ! 何?」



 突然、DDDが表情をハッと引き締め、

 駆け寄ってきたルールゥを突き飛ばした。



 突き飛ばされたルールゥが地面へと尻もちを搗くと同時に、




 ビシュウッ!!!




 DDDに向かって、氷で生成された槍が飛ぶ。


 零下200度以下の超低温を纏い、

 鉄より鋭く圧縮された氷の穂先。


 放ったのは、今まで隠れていた紅姫スカディ……の本体。

 超重量級の時と近い外見ながら、その美しい素顔を露わに、

 その手に弓らしき武器を構えた射手の姿。


 それは晶冠独立機構と呼ばれる中量級の機体。

 超重量級の機体が倒れた時に分離される奥の手。


 

 北欧神話でのスカディは女巨人でありながら弓の女神の側面を持つ。

 その二面性を表す為の晶冠独立機構。

 

 刎ね飛ばされた首から這い出て息を潜ませ、

 重二足から降りてきたDDD、及び、ルールゥを狙っての攻撃。



 防ぐ手段などあるはずがない。

 高位機種とて防ぐのが難しい紅姫の決死の一撃。

 『黒曜(オブシディアン)棺桶(・コフィン)』に乗り込んでいたならともかく、今の彼は完全な生身………




 だが、しかし……………





 ガシャンッ!!




 亜音速で飛ぶ氷の槍を、


 DDDは片手で受けとめ、


 それをまるで小枝のように手で握りつぶした。





「てめえ、俺の女に何しやがる!」





 手の中の氷粒を払いながらDDDは怒りの形相。

 金と黒に染められた髪が逆立つと思うくらいの激高。




「死ね」




 そして、短く呟くと、中量級となった紅姫スカディへと駈け出す。




 ビシュッ!

 ビシュッ!

 ビシュッ!




 紅姫スカディから次々と放たれる氷の矢。

 一発一発がストロングタイプすら葬り去る威力を秘める。




 だが、DDDはソレを事も無げに手で払い除ける。

 着弾と同時に振り撒かれる超低温などそよ風のごとく無視。




 そして、常人ではあり得ない速度で紅姫の元に辿り着き、

 その拳を振り上げ………




 バコンッ!!!




 紅姫の機体を殴りつけて粉砕。


 麗しき弓の女神の御姿は、

 頭部分を残して鉄屑となって辺りに散らばることとなった。




「チィッ! この力を使わすんじゃねえよ!」



 苛立ちを遺骸となった紅姫へとぶつけるDDD。

 

 

「大人しく死んどけ!」



 罵りながら、粉砕された紅姫の遺骸を足で転がす。

 

 その中に紅色に光る晶石を見つけ、

 今度こそ確実に破壊したことを確信。




 DDDはフゥ……と息を吐いて、全身の力を抜き、



「おっと、いけねえ」



 一言、呟くと突き飛ばしてしまったルールゥへと振り向き、

 駆け寄って手を差し伸べながら優しく声をかける。



「大丈夫か? ルールゥ」


「う、うん」


「悪いな。突き飛ばしてしまって………」


「ごめん、私が飛びだしてきちゃったから……」

 


 DDDはルールゥを立ち上がらせると、

 ソッと優しく抱き留めて、焦げ茶色の髪を無造作に撫でる。



「気にするな。あれくらいで死ぬ俺じゃない」


「そりゃあ、そうだけど……」




 ルールゥはDDDが強いのは知っている。


 重二足に乗るDDDが強いのではない。

 むしろ重二足に乗らない方がDDDは強いかもしれない。



 DDDは最高レベルの機械種使いであり、

 この若さで『青学』『緑学』『黄学』の3学問を『手』まで修めた3手主。

 おまけに『物繰術』『知繰術』『命繰術』を超高位感応士以上に使いこなす。


 先ほどの紅姫の攻撃を防いだのは『物繰術』の『念動防膜(サイコバリア)』。


 人間とは思えない力の源は『命繰術』の『生体(フィジカル・)賦活(エンハンス)』。


 殴りつけただけで機械種の機体を破壊する『念動(フォース・)加撃(インパクト)』。


 敵の行動を先読みする『機先察知(プリエンプト)』。



 生身の身体でレジェンドタイプ以上の戦闘力を秘める。

 さらに人類最高峰の水準と言うべき明晰な頭脳。

 そして、人々が理想とする英雄を描いたような美しい容姿。


 正しく人知を超えた才能の塊であり、

 神々が作り上げた人間の最高傑作とも言える存在。

 

 欠点を上げるとすれば、

 あまりに唯我独尊であり傍若無人な性格であろう。


 身内以外の者に対するコミュニケーション能力が絶無であり、

 幼馴染であり恋人でもあるルールゥが間に入らないと、

 関係者や支援者と打ち合わせすることすら不可能なレベル。


 その性根はスラムで粋がる不良少年のままであり、

 合理的な判断より自身の感情を優先する子供のような気質。


 その不安定さから、飛びぬけた実力はあれど、

 周囲から認められるのにも時間がかかり、この数年間、苦渋を舐めていたとも言える。



 だが、徐々に積み上げられる成果、飛び抜けた実績に加え、

 『人型戦車乗りの狩人』という大変珍しいスタイルから、

 ようやく世間が注目し始め、狩人ランキングの上位に名を連ねるようになり、



 今回の深紅の巣の踏破を以って………




「ディー、おめでとう。深紅の巣の一踏一破達成だね」



 DDDに寄り添うルールゥが改めて祝意を述べる。



「これで、狩人ナンバー1も確定ね。ようやく夢が叶った……」



 夢を実感するようにDDDへと抱き着き、感極まったように語るルールゥ。

 その目に涙が溜まりつつあり、今にも零れ落ちそう。


 それだけ待ち望んでいた称号なのだ。

 大陸中の狩人が夢見て、ソレを手に入れることができるのはたった1人。


 ルールゥが涙目に語るのも無理はない。



 しかし、DDDはさして感動した様子も見せず、



「ハンッ! ナンバー1なのは当然だ! 俺様なんだからよ!」



 恋人に抱き着かれ、賛美されながらも、

 その傲慢とも言える態度を一ミリも崩さない。


 彼にとってはその程度なのだ。

 世界中の狩人が目指し、たった1人しか到達できないトップの位置も、

 彼にとってはただの通過点でしかない。


 なぜなら、狩人ナンバー1は、過去を振り返れば何人もいるからだ。

 そんな先人の足跡だらけの称号など眼中には無い。


 DDDが目指すのは前人未踏。


・『城』のチーム単独踏破

・ターナート迷宮の地下61階の突破

・超重量級緋王の討伐

・『古竜の巣』を2つ以上踏破

・禁足地『魔境』への侵入・及び帰還

・守護者の撃退、若しくは、部位破壊

・赤の帝都潜入からの『白き鐘』の発見、及び、生還。



 連合を組んでの『城』の踏破はすでに経験済。

 中量級ではあるが、この手で朱妃の脳天を砕いた。


 今は最も近い目標である『城』の単独踏破に向けて調整中。

 狩人ナンバー1などそこまで浮かれるほどのモノではない。



 とはいえ………




「まあ、ナンバー1になったことを、マザーが喜んでくれるなら……」



 そう呟くDDDの顔から険が取れて、僅かばかり柔らかさが戻る。

 母を慈しむ少年のような、そんな優しい表情が見え隠れ。



 そんな姿を見て、ルールゥも優しく微笑み、

 DDDの傍に寄り添いながら同意。



「そうね、きっとマザーも大喜びよ。久しぶりに喜びのダンスが見られるかも」


「おいおい、ルールゥ。そこは止めておけ。最近、マザーの脚部、ガタが来てんだろ。さっさと新品に交換しろって言ってんのに……」


「あんまり交換し過ぎると、良くないらしいからね。機人にはバーンアウトがあるから……」



 DDDにとってのマザーは母親同然。

 そして、彼に生きる意味を教えてくれた人生の先生でもある。


 彼の愛機『黒曜(オブシディアン)棺桶(・コフィン)』はマザーが完成させたモノ。


 マザーは不可能と言われた技術を開発、補助的な扱いでしかなかった人型戦車の未来を切り開いたのだ。


 この人型戦車『黒曜(オブシディアン)棺桶(・コフィン)』を以って、前人未踏の成果を上げるのがDDDの真の目標。


 有り余る才気を『黒曜(オブシディアン)棺桶(・コフィン)』へと注ぎ込み、DDDは誰しもが到達しえない地、白の教会の聖句で言う『誰も届かなかった高み』を目指す。


 それがDDDに出来る最大の親孝行だと信じて………




「あと、パティさんにも知らせたいな……」


「あ、ディー。まだ、パティさんに憧れているの?」


「うるせー、あの人は特別だろ」



 ルールゥのツッコミに、DDDは少しばかりバツの悪そうな顔を見せる。

 そんな反応に、ルールゥは苦笑を浮かべて、



「はいはい。分かってます…………でも、パティさん、辺境だから、こちらからの手紙が届くかどうか怪しいね。届いたとしても、早くて半年以上かかるよ」


「そりゃあ、仕方ない。でも、あの人にもお世話になったんだから………、早く辺境から帰ってきて欲しいぜ。あの人の才能は絶対辺境で収まるものじゃないだろ」



 マザーがDDDの母親だとすれば、パティ………、パルティアは年の離れた姉と言った所。

 

 それはルールゥにとっても同様。

 不幸な事故で夫を亡くしていなければ、娘のパルミルと一緒に、ずっと家族のように暮らしていたのは間違いない。





「ディー、そう言えば、最近、辺境で凄い新人が出てきたって噂、知ってる?」


「ん? なんだソレ?」


「何でも深紅の巣を2つ、一踏一破したんだって。他にも、賞金首『闇剣士』を討伐。鐘割りのテロ鎮圧にも貢献したっていうらしいよ。名前は………、確か、『白ウサギの騎士』だったかな?」



 唐突にもたらされた『白ウサギの騎士』の情報。

 それだけ深紅の巣の一踏一破が高難度であることが分かる。


 今、DDDが成し遂げた所だが、それを成し得る狩人など、この世界に数える程しかいない。



「フンッ! …………なんだよ、そのフザケタ2つ名は?」



 鼻を鳴らし不機嫌な様子となるDDD。

今、成し遂げたばかりの成果が、辺境のポッとでの新人が成したと聞いて。




「所詮、辺境でのことだろ? 深紅の巣ったって大したことないに決まってる。その『白ウサギの騎士』も…………!!!」


「どうしたの? ディー」




 『白ウサギの騎士』について言及していたDDDの表情が突然固まる。

 その目が大きく見開かれ、まるで信じられないことを聞いたかのよう。



 突然の変わりようにルールゥが尋ねても、しばらくだんまりであったが、




「その『白ウサギの騎士』って奴………」


「ディー?」



 DDDの表情があまりに異常。

 こんな顔をするDDDはルールゥも見たことが無く、

 ルールゥは心配して声をかけるが、DDDから返ってきた言葉は、

 


「俺様より強いみたいだ」


「……………え?」



 自信の塊のようなこの男からは初めて聞く、誰かを自分の上と認める宣言………

 いや、マザー以外と付け加えるべきか。



 それでも、その内容は驚天動地と言っても良い程。

 ルールゥは驚きのあまり、しばらく息をするのも忘れ、


 ふと、我に返り呼吸を再開。

 数回、深呼吸で肺に酸素を満たした後、

 再度、念を押すようにDDDへと確認。



「…………嘘? 本当なの? 冗談じゃなく?」


「俺様の勘がそう言っている。間違いねえ」


「いや、でも………、ディーの勘は外れたことがないけど………」



 ルールゥは言葉に詰まりながらも、

 これまでのDDDの勘の精度を思い返す。

 

 DDDの勘は未来予知に近いレベル。

 何せ、巣の道中の罠はほぼDDDの勘によって避けられているのだ。


 今回の一踏一破も、DDDの勘に助けられてのこと。

 一度も道に迷わず、紅姫がいる最奥まで来られたのだから、その精度の信ぴょう性は疑う必要がない。




「俺より強い奴………か」



 DDDはルールゥを横に置きながら、噛み締めるように呟き、

 その視線を上へと移動。


 当然、空は見えず、たった今、踏破されたばかりの巣の天井が見えるだけ。



 だが、彼の目は、確かにこの地、中央に来るであろう『白ウサギの騎士』を捉えていた。




「面白れえ! お前がここまで辿り着くまでに、俺様はお前より強くなって見せる!!」




 天井を通り越して天まで貫けとばかりに大声で宣言。




「どっちが上か、勝負をつけようじゃねえか! 『白ウサギの騎士』さんよおお!!」




 DDDはまだ見ぬ『白ウサギの騎士』へと挑戦状を叩きつけた。


 それは彼がマザー以外の人間を、初めて同格以上と認めた瞬間。



 史上最高の才能を持つ、『死の踊り手』DDD。


 ヒロが狩人ナンバー1の座についた彼と出会う時、

 一体どのような化学反応が引き起こされるのか……



 なお、『白ウサギの騎士』としてヒロがDDDと会うかどうかは不明。

 




 

 


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― 新着の感想 ―
蒼粉で妨害できるマテリアル術は体外のものだけですか? 機体に働かせている重力制御を妨害できるなら強すぎますかね。
単純にロボット動かすのが上手いのではなく、あらゆる分野における天才がロボットを動かしているわけですか。 流石に中央で活躍するキャラはとんでもなく性能が盛られてますね
DDDは超重量級の紅姫まで倒せるってことは理論上、中量級の緋王・朱妃の中位まで倒せるってことですか?
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