閑話 雪姫(上)
※「772話 エピローグ13」の続きです。
カクヨムのサポーター様限定近況ノートの「閑話 雪姫1~6」を修正したモノになります。
「雪姫………」
俺の口から彼女の名前が零れる。
宝貝『霊珠』を埋め込んだことにより復活した雪姫。
それは俺の記憶に残るそのままの姿。
腰まである長い銀髪。
柳のように細い腰つき。
年の頃は15歳くらい。
雪のように冷たい雰囲気を纏う美少女。
しかし、普段は滅多に感情を表さないその顔には、
俺がアップルブロックを用意できなかったことに対する不満が浮かんでいる。
『アップルブロック』はIFの未来視にて俺と雪姫が交わした約束事。
雪姫が覚めない眠りに付いた時、童話『白雪姫』のごとく、俺がリンゴならぬ『アップルブロック』で雪姫を起こしてあげるというもの。
もちろん、俺の記憶の中にしか存在しない。
白兎ですらその内容を把握しておらず、俺が一生抱えたままでいるだろうと思っていた。
だが、俺だけが知る『約束』を覚えている雪姫。
それは彼女がIFの未来視で俺と1年間を過ごした雪姫であるという証。
「むぅ………」
頬をプクゥと膨らませ、子供のように拗ねた態度を見せる雪姫。
クールな美少女の外見とは裏腹に、中身は幼女であるかのような振る舞い。
奇しくも白露とは真逆の仕様。
白露が雪姫の面倒を見ていたという話も頷ける。
きっと、白露も雪姫の子供っぽい我儘に振り回されていたことだろう。
雪姫と過ごしたあの1年は、楽しくも騒がしい日々であったことを思い出す。
雪姫の我儘に付き合わされ、
雪姫へと舞い込んできた依頼に巻き込まれて頭を悩ませ、
雪姫が引き起こしたトラブルを解決するため街中を奔走して……
それでも俺にとっては充実した時間だった。
大好きな人と一緒にずっと過ごせたのだから。
夢なら覚めないでと願った。
でも、現実は残酷で、俺が目を覚ました時、
目の前にいたのは、俺が殺したばかりの雪姫の遺体。
縋り付き、泣き叫び、絶望と後悔を繰り返した。
仙術にすら死者を復活させるような術は皆無で、
俺は二度と雪姫に出会うことはできないのだと思っていた。
しかし、運命は俺を見捨ててはいなかった。
トールから貰った聖印を宝貝に変換することによって誕生した『霊珠』。
それは死者を宝貝人間として蘇らせることができる能力を持つ。
即ち、俺はもう一度雪姫と同じ時を過ごすことができるのだと……
ポロッ………
俺の目から涙が零れた。
もう二度と会えないと思っていた人に会えた。
しかも、なぜか、この世界線では存在しないはずの雪姫に。
遺体であった雪姫を蘇らせたのなら、それは現実世界での雪姫だったはず。
俺にミラやルフ、パサーを破壊され、俺への復讐に燃える雪姫が蘇り……
俺へと憎悪を叩きつけたであろう。
しかし、雪姫が口にした『アップルブロック』云々の話は、
俺を除けばIFの未来視内の雪姫しか知らない話。
それを知っているということは、
今、俺の目の前にいるのは、
俺が恋焦がれ、1年間を共に過ごし、
絆を深め合った雪姫なのだ。
不満げな態度を取りつつ、俺に甘えたような反応を見せるのは、
俺が良く知っている雪姫の行動そのもの。
理由は不明。
だけど、そんなことはどうでもよい。
ただ雪姫に会えたことが嬉しくて………
頬を伝う涙を止められないまま、
ただ棒立ちに、雪姫を見つめることだけしかできなくて………
「ヒロ? どうしたの?」
ずっと拗ねた様子を見せていた雪姫だが、俺が身動きせず涙をこぼし始めたのを見て、こちらへと心配そうな声をかけてくる。
表情は変わらないも、その瞳には俺を気遣うような光を湛えて。
「きつく言い過ぎた? ………御免なさい」
「いや………、違う………、ズルッ! その………、あの………、グスンッ!」
俺を泣かせたと思い、声のトーンを落としてシュンと落ち込んだような様子を見せる雪姫。
俺は慌てて彼女の誤解を解こうとするも、
涙で鼻が詰まって、言葉が上手く返せない。
ズルズルと鼻を啜り、何とか言葉を続けようとしていると、
雪姫が俺に近づいてきて、そっと右手を俺の頬に当ててくる。
そして、左手でハンカチを握りしめ、覚束ない手付で俺の涙を拭ってくる。
雪のように冷たい手と指。
でも、細やかな気遣いが頬から伝わる。
「ゆ、ゆき……、ひめ?」
「ヒロ。泣き止む。貴方を泣かせる人はここにはいない」
「ああ………」
相変わらずどこかズレた慰め方。
けれども、優しくも不器用な雪姫の心遣いが伝わってくる。
表面上は冷血にも見えるクールっぷりだが、
内面は誰に対しても優しい子なのだ。
「あんまり泣き続けていると折角の男前が………、面白い顔がもっと面白いことになる」
「…………そこを言い直すなよ」
加えて正直な子なのだ。
社交辞令の嘘もつけないくらいに。
フルフル
『マスター、そろそろ説明してほしいんだけど?』
ようやく俺が冷静さを取り戻すと、白兎がメンバーを代表して要望を伝えてくる。
後ろに並ぶ、森羅、秘彗、廻斗も不安そうに見つめてくる。
当たり前だ。
俺が雪姫の遺体を七宝袋から取り出したと思ったら、いきなりその遺体が蘇ったのだ。
死人が蘇るという摩訶不思議な現象にパニックを起こさず、ただ俺が落ち着くのを待っていてくれたのは、白兎が空気を読んで皆を抑えていてくれたから。
でなければ、真面目な森羅や秘彗辺りは、突然蘇った雪姫を取り押さえに動いたかもしれない。
パタパタ
『察するに、さっきの宝貝の効果で、その………鐘守を生き返らせたんだよね?』
「ああ、そうだ。雪姫と言う。宝貝『霊珠』とは一体化したから、宝貝人間とも言うべき存在だな」
ピコピコ
『なるほど……、封神演義の哪吒と一緒だね』
「キィ!」
「おお、あの蓮華の化身の………」
「ええ? え? え? 皆さん、それで納得されるのですか?」
現代知識を持つ白兎は即座にピンときた様子。
また、廻斗や森羅も同様。
しかし、封神演義を知らないらしい秘彗だけは、腑に落ちない表情のまま、驚きを隠せないでいる。
一応、書庫に『封神演義』の漫画と小説が置いてあるのだけれど……
秘彗は読んでいないみたいだな。
後でお勧めしておくことにしよう。
その後、なぜか白兎が雪姫へと近づいてきて絡み始めた。
どうやら白兎は雪姫を宝貝の後輩と見做しているようで、先輩風を吹かせてきたのだ。
いきなり雪姫に『おい、雪後輩。売店でアンパン買ってこい』と一方的な命令。
これには雪姫もムッとした表情で、抵抗する構えを見せる。
互いに剣呑な雰囲気となりかける2人であったが、最終的に雪姫が、
『兎先輩が理不尽なことを押し付けてくるつもりなら、こちらにも考えがある』
『兎先輩に横暴されたと、七宝袋に泣きつく』とカウンターパンチを決めた。
たったこの一発で白兎はノックダウン。
フリフリッ!
『やめろ! やめて! これ以上僕の宝貝でのヒエラルキーを落とさないで!』
『宝貝』内では立場が低く、
『七宝袋』には頭が上がらない白兎。
床に這いつくばり許しを乞うことになった。
しかし、雪姫はそんな白兎にも優しく手を差し伸べる。
『兎先輩とは仲良くしていきたい』と雪姫の方から和解を申し出。
両者固い握手を交わし、『これから仲良くやっていこう』と意気投合。
まあ、俺にとって白兎と雪姫が仲良くしてくれるのは願ってもないことではあるが………
「えっと……、雪姫。なんで『七宝袋』のことを知っているんだ?」
腰を落とし、白兎と目線を合わせながら握手を交わす雪姫へと問いかける。
現実でも未来視の中でも雪姫に『七宝袋』の話をしたことは無い。
本来知っているはずのない知識。
しかも宝貝内の力関係まで把握しているなんて、普通に考えればあり得ない。
だが、雪姫の返事はあっさりとしたもので、
「私は『宝貝雪姫』。知ってて当たり前」
「へ? 当たり前って……、どういうことだよ? ………俺に分かるように話せ」
相変わらず雪姫の言葉は端的過ぎて分かりづらい。
元々言葉足らずな上、本人も物臭。
説明させるには最も不向きなタイプだとも言える。
雪姫との言葉のキャッチボールにはそれなりに根気が必要。
適切に質問をぶつけて言葉を引き出さないと、話がそれ以上進まなくなる。
だが、雪姫は俺の質問に形の良い眉毛を顰めて、少しばかり不機嫌な様子で口を開く。
「むぅ………、ヒロは察しが悪い」
「お前が説明を省きすぎなんだよ」
「女の子の心情を汲み取るのが男の子の役目。それができないヒロが悪い。だから女の子にモテない」
「女の子にモテないのは関係ねえ! さっさと理由をきちんと話せ」
「おまけにせっかち。気の早い男は女性に嫌われる。そんなに早いとヒロは女を満足させられない」
「意味も分かってない癖に下ネタ言うな!」
雪姫の性知識は小学生以下。
無垢と言うより無知。
なのに、知ったかぶりする上、サラヤやナルから仕入れたらしい際どいセリフを面白がって口にする。
そういった時のツッコミは俺の役目。
雪姫への教育も兼ねてお仕置きを行う。
「女の子が言って良いセリフじゃないぞ! 教育的指導!」
「むぎゅっ!」
雪姫のツンとした小さな鼻を指で抓んでやる。
「ぼ、暴力反対!」
「これは指導……躾だ。暴力じゃない」
俺に鼻を抓まれ、顔を真っ赤にして両手を振り回し抵抗する雪姫。
だが、そんなことで俺の『教育的指導』から逃れるわけもない。
しかし、それでも雪姫は抵抗を諦めず、声を大にして俺を非難。
「い、今時体罰は流行らない。PTAから苦情が来るばかりか、ネットでも炎上、SNSで散々叩かれて、きっとヒロは後悔することになる!」
「PTAもネットもSNSもこの世界には無い! ………って、お前……」
思わず指を離して、マジマジと雪姫を見つめる。
雪姫から飛びだしてきた言葉は明らかにこの世界からは異質なモノ。
『PTA』『ネット』『SNS』。
元の世界に在した用語だ。
もしかしたらそれに近いものが中央にはあるのかもしれないが、全く同じということは考えられない。
しかし、この異世界には元の世界の用語が混じることもある。
けれども、流石に『PTA』や『SNS』は無いと思うのだが………
「…………おい、雪姫。好きな漫画は何だ?」
「……………『夏〇友人帳』と『東京喰〇』」
「渋いところ突くなあ~」
これで決定。
当然ながら『夏目友〇帳』『東〇喰種』がこの世界にあるはずがなく、
雪姫には、白兎や廻斗と同様、現代日本の知識があるのは間違いないようだ。
知るはずのないことを知っている。
まるで知らないはずの知識を植え付けられたように。
その現象は我がチームでは珍しいモノではなく、すでに何人もの犠牲者を出すに至った。
白兎、廻斗、そして最近加わったらしき森羅。
この3機は俺が過ごしてきた現代日本の知識を備えているのだ。
天琉や秘彗、虎芽やタキヤシャと違い、図書室に置いてある本の知識ではない、まるで実際に日本で過ごしたことがあるかのような知識を有する。
その知識の源泉は定かでは無いが、たった一つ確かなことがある。
そういった影響をメンバーに広めているのは、間違いなく、小さくて丸くて面白い……
「……………つまり、これは、白兎の仕業か!」
パタパタ
『マスター、何でもかんでも僕のせいにするの、やめてよね』
白兎がうんざりした様子で耳をパタパタ。
俺と雪姫の間に入ってきて口を挟む。
フルフル
『……多分、雪後輩が言いたいのは宝貝に備わった基礎知識のことじゃないかな? 宝貝は主人の為に役に立つ道具だから、生まれた瞬間に己の能力とそれに関連する知識が備わるんだ。道具の業って奴だね』
「へえ? じゃあ、雪姫が『七宝袋』や『元の世界』の漫画について知っているのは、それが原因か?」
ピコピコ
『【七宝袋】のことはそうだと思うけど、【元の世界】の方は分からない。そもそも【元の世界】に関連した宝貝の能力って何?』
「それは…………、雪姫に聞いてみるしかないだろ」
雪姫は『霊珠』と融合して宝貝人間になった。
つまり、人間でありながら雪姫は俺の宝貝なのだ。
機械種と宝貝を兼ねる白兎と似たようなモノ。
雪姫からは『七宝袋』や『獏邪宝剣』と同じように、宝貝として俺とのつながりが感じられるのだから間違いない。
ということは、雪姫は人間としては『感応士』の力を持ちながら、何かしら『宝貝』としての力を持つということ。
個人的には、雪姫が傍にいてくれるだけで十分だが、『感応士』や『宝貝』の能力で俺を支えてくれるなら、これ以上心強いことはない。
「雪姫、教えてくれ。君の『宝貝雪姫』としての能力は何なんだ?」
未だムッとした顔で俺を睨んでくる雪姫へと向き直り、『宝貝』としての能力を尋ねてみると、
「私………『宝貝雪姫』の力は『機』と『仙』を繋ぐ………」
己の力についての質問に少しだけ機嫌を直したらしい雪姫。
真っ赤になった鼻を手で摩りつつ、青い瞳に自信ありげな光を宿して、『宝貝雪姫』の能力を公開。
「具体的には、宝貝をヒロの従属機械種にも使えるようにする」
「ええ! マジか!」
「マジマジ。エッヘン!」
「そ、それは、すごい………」
俺が保有する数々の宝貝。
絶大な力、万能なる効果を生み出すマジックアイテム。
この世界のルールには囚われない常識外れの仕様。
特級の発掘品すら上回る破格の性能。
しかし、俺にしかその性能を引き出すことができず、辛うじて白兎と廻斗だけが僅かながら使用することができる程度。
もし、20を超える数の宝貝をメンバー達が使いこなせるようになるのなら、正しく世界最強のチームが出来上がる………
だが、より詳しく雪姫にその『力』について尋ねてみると、
そこまで上手い話ではなかったようで、
「なんだ。使えるようにするだけで、ほんのちょびっとしか力を引き出せないのか…………」
「むっ! 機械種が宝貝を使えるようにするのは凄いこと。それをヒロは分かっていない」
「いや、まあ、そうなんだろうけど………」
俺の感想にプンスカ怒る雪姫だが、些か拍子抜けしてしまったことは否めない。
引き出せる力が激減……本来の1/10とか1/20程度では、そこまで劇的なパワーアップが見込めないだろうから。
少なくとも攻撃系の宝貝は役に立つまい。
おそらく威力が10分の1になったら、今の仲間達の実力ならマテリアル術を行使する方が強い。
『杏黄戊己旗』や『墨子』『掌中目』などの補助・特殊系なら状況によっては役立てそうではあるが。
しかしながら、その『力』は、今の所、1つの宝貝、1機の従属機械種の間でしか構築できないという。
さらに『力』は平行して行使することができず、複数展開が不可能。
つまり、ヨシツネに『獏邪宝剣』を貸し出せば、その間、他の宝貝と他の仲間を結びつけることはできないということ。
20個以上ある宝貝を全員に装備させるという夢は脆くも崩れ去ってしまった。
はっきり言って、制限が強すぎて、正直、使いどころが難しいと言わざるを得ない。
「まあ、そのうち便利な使い方を思いつくかもしれないけど……」
「私は宝貝。ヒロの道具なのだから、使い方を考えるのはヒロの仕事。頑張って思いつく。そして、私を役立たせる」
「ハハハハ。そう言われてもなあ~……、他にできることは無いのか?」
雪姫の無茶ぶりに思わず苦笑い。
『そう簡単に思いつくなら苦労しない』と心の中で呟きながら、その場を誤魔化すように雪姫へと質問を飛ばすと、
「ん? …………ヒロの従属容量を増やす」
「何!? ………本当か?」
雪姫から飛びだした驚くべき仕様。
慌てて確認すると、雪姫は何でもないかのように平然と答える。
「本当。多分、ヒロの従属容量を10%くらい広げる。感じない?」
「…………た、確かに。今までのギリギリ感が薄まったような気が……」
少し前まで俺の従属容量は、あと中量級2,3機が限界と感じていたが、今は超重量級1、2機程度の余裕ができたような感覚。
数値にするのは難しい曖昧な尺度。
あくまで俺主観の感じ方でしかない。
だが、雪姫の言うように、従属容量が増えたのは間違いなさそうだ。
「これは…………凄い」
「むふぅ! そう! 『宝貝雪姫』は凄い!」
薄い胸を張って偉そうなポーズを取る雪姫。
表情はあまり変わらないが、目に喜色が浮かび、声も半オクターブほど高く弾む。
「ヒロはもっと褒め称える! 『お前がいないと僕は駄目なんだ!』と大声で叫ぶ」
「誰のセリフだよ、ソレ……、調子に乗り過ぎだぞ」
と言いながらも、嬉しさで笑顔が零れる。
これ以上戦力……仲間を増やすことが難しいと思っていた。
しかし、雪姫のおかげで仲間を増やす余地ができた。
今よりもさらに厳しさが増すであろう中央の戦場。
闇に包まれ、一寸先も見通せない未知の世界。
そんな中、俺達の行き先を照らす明るい光が差し込んできたような気がした。
その後、雪姫へと気になった点を質問。
感応士の力と身体能力。
宝貝人間になったことでの影響。
できることとできないこと、やりたいこととやりたくないこと等、その他諸々。
相変わらず要領を得ない答えが多いが、そこは雪姫取扱資格1級の俺だ。
宥め賺し、時には現代物資召喚で取り寄せた甘味を餌に機嫌を取り、1時間近くかけて雪姫から情報を引き出すことができた。
結果、宝貝雪姫としての仕様は以下の通り。
●感応士の力は、人間だった頃よりも低下。
体が宝貝に作り替えられたことで感応士としての経験がリセットされたことが原因。
しかし、これは成長の余地があることから経験を積んでいけば挽回可能。
●身体能力は向上。
雪姫の身体を構成する素材は過分に幻想を含むため、素の状態でも鍛えられた兵士以上の体力・頑丈さはあるらしい。
また、雪姫が着込む、白の教会製『白式鐘守礼装』通称『白服』も、体と同様、幻想を含み、元の性能も相まって高位フォートレススーツ以上の防御性を誇るそうだ。
ただし、雪姫自体の運動神経は最底辺。
走れば何もない所で躓き転び、剣を振れば一振り目ですっぽ抜ける程度の性能なので、決して近接戦闘をやらせてはいけない。
●俺と同じく飲食・排泄も不要の身体となっている様子。
これについては予想済み。そもそも人間ではなく宝貝なのだから当たり前。
だが、嗜好品として摂取は可能………というか、現に、今、俺の目の前でクッキーをパクついている。
雪姫は甘いモノが大好きだから、三食に加えて3時のおやつは欠かせないモノとなるだろう。
あと、なぜか睡眠だけは必要らしい。
雪姫は昼寝が好きだったからその影響だろうか?
●戦闘も交渉も任せてほしい、とのこと。
レッドオーダーとの戦闘では感応術で後方支援。
街での交渉の際は鐘守としての立場が役に立つ。
しかし、雪姫は口下手なので、あくまで後ろに控えてもらうだけがベスト。
本人はやる気満々だが、黙って置物になってもらうしかない。
それだけでも、大抵の相手は鐘守の威光に怯み、滅多なことを言い出せなくなるであろう。
だが、俺の予定では、雪姫を鐘守として表に出さないつもり。
当面の間、変装させて俺の同行者扱いしようと思っている。
雪姫を鐘守として前に出せば、俺が『打ち手』だと思われるのは確実。
また、雪姫が鐘守として行動すれば、白の教会の目に留まる可能性だってある。
しばらくの間は、謎の美少女でいてもらうしかない。
髪の色と衣装を変えれば、知り合いにでも合わなければ鐘守とは分かるまい。
●記憶がかなり曖昧となってしまっている。
雪姫が鮮明に覚えているのは、行き止まりの街で俺と過ごした1年間のみ。
それ以前の記憶は酷く不鮮明であり、中央にいた頃の記憶はぼやけたように曖昧。
さらに白の教会に秘儀や白鐘、鐘守の秘密と言った事項は、まるで切り取られた消失。
もしかしたら、鐘守に仕掛けられたギミックかもしれないと思うほど。
ESP能力者が多数存在する白の教会のことだ。あり得ないことではない。
まあ、この辺りは残念だが、打神鞭の占いで占えば済む話。
雪姫もほとんど気にしていない様子であり、大した影響はあるまい。
●雪姫が望むのは俺と共にあること。
元々雪姫は俺を『打ち手』として中央に連れていくつもりであった。
辺境で『打ち手』に相応しい人物を見つけ、その功績を以って中央に復帰するのが目的であったはず。
雪姫が望むなら、気は進まないものの『打ち手』になるという選択も視野に入れるつもりであった。
しかし、雪姫は俺の申し出に首を横に振り、『ヒロはヒロが思うままに生きて』と言ってくれた。
すでに白の教会に対する忠誠心は無く、何よりも俺のことを第一に置いてくれている様子。
「本当にいいのか? 雪姫。俺が『打ち手』になったら、色々すっ飛ばして中央に行けるぞ」
「いい。もう中央に私の居場所は無い。今はヒロの傍が私の居場所」
そう言って、ちょこんと手を伸ばし、俺の袖を指で抓んでくる雪姫。
けぶるような睫毛の奥の氷蒼色に輝く瞳。
俺への全幅の信頼を秘めた光を湛え、ただ真っすぐに俺の目を見据えてくる。
外見は美しく高貴なお姫様なのに、小さな子供がするような幼い仕草。
普段の素っ気ない言動と合わせて、そのギャップが俺のハートを直撃。
今にも抱きしめたくなるくらいに、愛おしく感じてしまう。
中央に居場所が無いというのは本当だろう。
自身が引き起こしたヤラカシの結果、白の教会では針の筵であったに違いない。
雪姫を庇うのは、仲の良かった『白露』『白百合』、そして、後見人でもある『白月さん』くらい。
知り合いはいるも、決して人付き合いが良いとは言えない雪姫だ。
結局、まともな友人関係をほとんど作れないまま、辺境に追放となったのだ。
「ああ、もちろん………、雪姫、ずっと俺の傍にいてくれ」
雪姫の信頼に応えるように、
俺は真正面から雪姫の目を見つめ、
万感の思いを込めて………告白。
すると、雪姫はほんのり頬を赤く染めて、小さくコクンと頷く。
それは2人の間で取り交わされた新たな約束。
永遠に切り離されることのない絆。
もし、この場で彼女を抱きしめ、口づけを交わすことができたのなら、
俺が今まで望んでいたモノを得られたのかもしれない。
けれども、この場には白兎や森羅、秘彗、廻斗がいる。
流石に仲間達の目がある所でイチャラブシーンを演じる勇気はない。
だから軽く手を握り返すだけ。
今はそれで十分。
薄く微笑む雪姫。
照れくさそうに笑う俺。
一度は失われたと思った、この甘酸っぱい関係。
あの幸せだった未来視の続きだとも言える。
未来視の中で俺は、何度も夢なら覚めないでと強く願った。
永遠に夢の中で囚われても良いと思った。
しかしながら運命は残酷で、
目が覚めたら、俺が殺したばかりに雪姫がいて、
泣き叫び、半狂乱になりながら運命を呪い続けた。
でも、残酷だと思っていた運命は、
再び俺を雪姫に巡り合わせてくれた。
もう二度と離さない。
もう二度と君を失うなんてしたくない。
鐘守なのに鐘守でなくなった雪姫の立場は酷く不安定だ。
雪姫が鐘守でなくなったことを白の教会に知られてはならない。
万が一知られてしまった時は、白の教会が激しい追及をしてくるのは間違いない。
世界最大の組織が敵に回るかもしれない。
それに対抗する為には、こちらも対抗できるだけの力をつけるべきだろう。
今の戦力ではまだ足りない。
人間社会から遠ざかり、ずっと空中庭園で隠れ住むことはできるだろうが、そんな隠棲生活は真っ平御免。
白の教会と敵対しても跳ね除けられる………、若しくは、向こうが敵対するのを避けるほどの戦力が必要。
その為にはやはり中央へと向かう必要がある。
辺境よりも遥かに文明が進んだ地へと………
何者にも負けない力を手に入れるために。
『雪姫のステータス』
器用 :6
敏捷 :7
知力 :17
筋力 :22
生命力:68
精神力:26
『雪姫の感応士スキル』
機操術 レベル3
知繰術 レベル2
物繰術 レベル0
命繰術 レベル0
転操術 レベル0
『雪姫の習得感応術(機操術)』
ブルーピュリファイ【青浄】
レッドエクソシズム【赤祓】
マテリアルアップ【術力向上】
レジスト・レッド【赤威抵抗】
レジスト・ブルー【青波抵抗】
レジスト・インスピレーション【感応抵抗】
デストラクション【動揺】
スリープ【誘眠】
『雪姫の習得感応術(知操術)』
印象操作(弱)
感情感知(弱)
『固有技』
?????
※ステータスの数値は某TRPGを参考にしております
(最低値4~最高値24 常人の平均が12~14)。
※画面は開発中のものにつき、実際の仕様とは異なる場合があります。




