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日本新世界紀行  作者: 魔王
カレニア侵攻編
6/12

ナバロンの館

コードネーム「ナバロンの館」の任務を遂行するのは、特殊作戦大隊の第2中隊。

中隊長である多田少佐は、旗艦陸奥の戦闘指令所にいて、無人機からの映像などを見ながら指揮を執っていた。

作戦開始時間なると、無線でGOサイン指示を出す。

ボートで上陸し、すでに館の近く待機していた、小幡大尉が指揮するオメガ小隊(50名)が動き出す。

合図と共に、先陣を切って、アルファチームが用意していた脚立なので館の壁を乗越えて行く。

そして、密かに門番達の背後に忍び込み、ナイフで音も立てずに始末していく。

それが出来なければ、サイレンサー付きのSD5や、USP拳銃などで始末した。


門の場所をクリアー。確保して後、門を開けて、本隊を引き入れる。

すでに、館を巡回している敵兵は、狙撃なので排除していた。


館に突入にしたベータチームリーダー安堂中尉は、変わり者で知られていた。

何せ戦闘訓練でも鼻歌やリズムを取りながら行動するからである。

無論注意される事なのだが、抜群の俊敏力と鋭い感で、成績だけは良かったので、教官も強く言えなかった。

ショットガンのソードオフ使用(銃身を短くして、至近距離での破壊力を増した物、多くの国で所持も改造も禁じられている)を持ちながら今回も御他聞にもれず、鼻歌を歌いながら、室内を探索していく。

そして扉を蹴破り、敵と出会えば、派手にぶっ放すのである。

出会いがしらの敵に対して、ソードオフのショットガンの効果は絶大であった。皆吹き飛んでいく。

周りにいた部下達から見れば、楽しんでやっているしか見えない。

事実、安堂中尉のボルテージは上がる一方だ。


アレッサは、自室のベットから飛び起きた。激しい音が立て続けに起きたからだ。

傍らには、妹のエレンが寝ていた。

彼女達は、自室で監禁状態に置かれていたからだ。

この音は何、この館に何が起きているのだろう。アレッサは不安にかられていた。

しばらくして、ドアが蹴破られて、何者かが侵入してきた。

しかも、眩しい光を放ちながら。それに照らされて、アレッサは直視出来なかった。

夜なのに何て眩しい光なの、昼間より明るいなんて。

「無礼な、何者」

内心の恐怖を押し隠しても、聞かずにはいられない。

「日本軍です。あなた方を助けに来ました」

え!何、本当なの。すでに起きていたエレンを抱きながら驚いた。

彼女とて、まともに日本軍兵士を見るのは、鏑木の礼装姿を除けば、初めてである。

それにしても、何やら変わった服装と装備をしている。

黒ずくめで、大きな眼鏡なども付けていた。

その異様な姿で、日本軍と言われると、何となくだが納得した感じがした。

「じき事が済みますので、今しばらく、ここにいて下さい。我々が居れば安全です」

「本部へ、こちらベータ5、マルタイ2.3を確保した」

「お父様は」

一番気になっていることを聞いた。

「それもじき確保されますので、御心配されぬよう、安心してください」

それを聞き、少しは安心した。

少なくとも、襲われて、殺されるとか、夜這いをかけられた様子では無いようだ。

それに、お父様も助けてくれるようだ。

そして、日本軍と聞き、新たなる希望も沸いて来た。

又彼に会える。もう二度と会えないかと絶望していたからだ。


この場に居た、兵士達は、我々が真っ先にこの部屋に入ってきて良かったと思っていた。

あの安堂中尉だったら、調子に乗って、彼女ごとミンチにしかねないからだ。


しばらくして、館も制圧され、地下牢からマルタイ1である、領主ドラガンも発見された。

ただ、連日の拷問により、かなり弱っており、人の手を借りないと、動けない状況との報告を聞き、小幡大尉も衛生兵を伴って館に入った。

すでにドラガンの部屋のベッドに寝かして付けたので、その場で応急措置を取る。

「おぬしが、この日本軍の隊長か」

まだ何とか意識があるドラガンが言った。

最初、牢屋を入ってきた異様な黒服集団を、自分を処刑するために来た、処刑人かと思っていたが、日本兵だと聞いて仰天した。

まさか日本人達が、軍を引き連れ、自分達を救うとは思っても見なかったのだ。

「そうです。閣下」

小幡大尉はそう言い。治療の為、細い針を打つが、何があっても動かないように言った。

これは注射をしている途中で、動かれられると、針を折ってしまうからである。

最初いぶかしんだが、一切を彼らにまかせるつもりでいた。

何せ自分自身立てないほど、体が弱りきっているからである。

「娘達は」

「大丈夫無事です。じきこちらに来ます」

しばらくして彼女達が入ってきた。

「お父様!」

「おお!アレッサにエレン。無事だったか」

アレッサとエレンは涙を浮かべてベッドに横たわる父の側に駆け寄った。

「お父様、大丈夫なの」

「何のこれしき、少し休めば元気になるわ」

「ホントなの」

傍らに居た日本人に、不安そうに聞いた。

「しばらくは安静にして置いてください」

と、衛生兵が返す。そして、小幡大尉には、専門の医務官を遣す様に言った。

「特に足などがひどくやられていますので」

「分かったすぐ連絡しよう」

ちょうどその時、外で大きな爆発音がした。

「何があった?」

「黒ひげ隊より、爆撃要請がありました」

傍らに居た通信兵が言った。


少し前、前回同様、館を監視し、味方が突入した後は、周囲を警戒していた黒ひげ隊は、持っていた赤外線暗視装置(温度差を視覚化)によって茂みの中に多数の兵士が隠れているのを発見した。

佐藤中尉は、すぐこの場から離れると共に、上空で待機している、ハリアー2ナイトアタックに指示する。

こちらのハリアーの武装は、待機している都合上、300ガロンの外部燃料と、ライトニング目標指示ポッド、GBU-22X2発であった。

「黒ひげ隊より、ナイト3へ。館南東800メートルに敵兵発見。排除願う」

前回は、航空支援が無かったが今回は違う。地上からのレーザー誘導で、爆弾が目標地点に落ちる。

激しい音と共に、爆風がこちらにも来ていた。

「さすがに距離が短いと危険だな」

さらに近い距離だと、こちらも巻きこまれかねない。

中隊長である多田少佐も、映像で見ていて、内心ホットした。

爆弾を落とすとしても、今のは近すぎだろうと思っていたからだ。

しかし、次に入ってきた連絡により、一安心していた気持ちが吹き飛んだ。

「100名以上の敵が、門に殺到してきている。距離は100メートルも無い」

正面の門を守っていた、アルファチームから、緊急の連絡が入った。

一体どこから出てきたのだ?何故見つからなかった。穴の中にでも隠れていたのか?


アルファチームで門を守っていたのは、6名たらず。一人がミニミ軽機関銃で、残りの5名の武器はMP5系であった。

元々MP5の使う9ミリ弾は、拳銃弾であり、ピストルより銃身がが長いから射程も少しは長くなっている言っても、有効射程は50メートル。

まして、敵兵は鎧や盾まで持っているので、さらに距離が近くないと有効なダメージが与えられなかった。

必然、ミニミで対応する。

「来た!来た!きた~」

そう叫びながら、打ちまくるガンナーであったが、少ししたら、途端に音が止まった。

「ジャムりやがった!こんちくしょう!こんな時に!」

「いかん、館まで撤退だ。走れ!走れ!」

リーダーが叫ぶ。敵がすぐ近くまで来ていたのだ。5名の射撃だけで、敵の勢いが止まるとは思っていなかった。


これを映像で見ていた多田少佐は、咄嗟に叫んだ。

「まだハリアーは上空に待機しているか!」

「こちらナイト4、待機しています」

「地上の状況が分かるか?STOL機の特徴を活かし、何とか支援を頼む」

「了解、何とかしてみます」

今野大尉が操縦する、ナイト4は、一気に低空まで高度を下げつつ、地上スレスレで空中停止した。

そして、多目的カラー表示から、逃げる味方と追いかける敵を確認した後、照準をあわせ、操縦かんのトリガーを引く。

その瞬間、秒間60発の25ミリのガトリングガンが火を吹いた。

300発しかないので、ものの5秒間しか撃てないのたがが、効果は抜群であった。

敵は横殴りに撃たれ、体中が吹き飛んだ。

館まで逃げていた、アルファチームも、そこに居たベータチームと一緒になって、先頭切って走っていた敵兵をなぎ倒した。

残りの敵兵は、あまりのショックで、降伏するか、逃げ帰っていった。


「ナイト4、さすがだ。良くやってくれた。後でビールをおごるよ」

上機嫌に多田少佐が言う。見ていて実にスカッとした。

「どういたしまして」

「それにしても、やはりガンシップは必要ですね」

傍らで状況を見ていた、特殊作戦大隊長である、村田中佐に多田少佐は言った。

「ああ、何としても作ってもらわなければな」

上空からの、直接支援の必要性を、今回の事で、改めて認識しざる得なかった。


「来たか」

ロペス魔道士は、待ち合わせ場所で仲間が来るのを待っていたのだ。

「どうであった。そちらの首尾は」

「申し訳ありません。失敗しました。やつらの力は計り知れません」

「導師の予感は当たっていたと言うことか」

腕にある、傷口をさすりながら、ロペスは言った。

「帰ってすぐ報告するぞ」

「ナフ城の事はどうなさいますか」

「もう良い、ほっとけ。こちらとしても何も出来ん」

「分かりました」

「夜が明ける前に行こう、シガロ魔道士」

「は」

二人の姿は、人知れず闇に消えていった。

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