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日本新世界紀行  作者: 魔王
カレニア侵攻編
5/12

ナバロンの城

日本領事一行の乗る馬車が、レープ城の門をくぐった。

日本人がこの城に入るのは、初めてである。

ここは防衛上、関係者以外立ち入り禁止。まして外国人である日本人は一人として入れない場所であった。

今回、この城に入るのは、反乱を起こして、事実上支配者になったロウガンに対しての表敬訪問であった。

日本側からの要望であったが、こうも早く、まして作戦決行の当日にに認められたのは、驚きとともに、城の中を知る絶好のチャンスでもあった。

「新たしく御領主様になられたとか、おめでとうございます」

「わしではない、息子テオドールだ」

「それは、大変失礼致しました。改めて御子様にお祝いの言葉を」

「今この場にはいないが、伝えておこう」

「それにしても、おぬし達も耳が早いな」

「ちまたでは、その話でもちきりでございますれば」

実際町はそのうわさ話でもちきりだった。

領主様が襲われて亡くなったとか、病死したとか、反乱が起きたのだ。正確に言い当てる人もいた。

無論それは、日本の手によって流された話でもあったが。

しかも、町長などに、領主が病気なので、今後の政務は、ロウガンが取ると言う通達がされた話が伝わると、余計拍車がかかった。


堀領事は、少しおどおどした態度で話す。無論演技だが。

「前の領主様同様、これからも変わらぬ待遇を、お願いいたします」

「ふむ、心配せずとも、今までどおりの待遇を約束してやるわ」

「ありがたき幸せであります」

そう言った後、領事の指示で、贈り物が前に出される。

「いきなりのことで、これしか用意できませんでしたが、お祝いの品々をお納めいただけると幸いです」

「うむ、遠慮なくいただこう」


この一行に同行した鏑木大尉は、ずっと気になることがあった。

それは、新しい為政者なった、ロウガンの側にいるローブを羽織った人物であった。

フードも被っているため、顔が見れない。

そのまま見れば修道僧のような人物が側に居て、為政者に助言を与えている立場と見れるのだが、鏑木には、何やら得たい知れない感じがしてならなかった。


山本書記官も無論、同行していたが、アレッサの事を問いただしたい気持ちで一杯だった。

だが、それを言動に出さないよう、必死に自分を抑えていた。


日本一行が帰った後、ロウガンは、傍らにいる、ロペスに話かけた。

「やつらが、わしにとって最大の厄病神になるのか」

「私の占いでも、貴方に取って、北からの赤い星が、大凶星になっております」

「もし私の占いを少しでも信じ、命が欲しいのなら、今すぐこの地から離れるのが良いかと思います」

「そんな事出来るはずも無い。ついこないだ事を起こしたばかりだぞ」

彼は、日本からの贈り物の中で、日本刀を手に取り、鞘から引き抜いた。

「ふむ、これはなかなか良いものだ」

「ロウガン様、これらの物品から、得体の知れない邪気を感じます。離して置いた方が良いかと」

「そうか、残念だな」

そう言って、元の場所に戻し、ロペスと話しながら、その場を離れていく。

「それで今後の事だが・・・・・・・」


日本の領事館で、贈答品の中に仕込まれた盗聴器から、盗聴していた係官は、無念がっていた。肝心な話しが聞けなかったからだ。

それを後で聞いた、鏑木は、ますます疑念を抱いた。ただの占い師では済まされないのではないかと。

そして、王都パレラスにある大使館からの情報を思い返していた。

この地方では居ないとされる、魔道師の存在を。

もしそうなら、かなり厄介な相手になりそうだ。



夜の10時過ぎ、レープ港町の領事館や商館、各宿などに分散して泊まっていた、およそ60人の特殊作戦部隊の隊員は、作戦実行時間まで、あと3時間、準備を始めだしたその時であった。

城を警戒していた偵察員から緊急の連絡が、領事館の現地本部に入った。

「城から、兵200あまりが街中にくり出しました」

「どこに向かっている」

領事館に詰めていた、特殊作戦大隊の第1中隊長、武田少佐が聞いた。

「この方向ですと・・・・領事館や商館です」

「連中感ずいたか」

鏑木大尉は、そう言って苦虫を噛んだ表情になった。

「各隊に連絡、敵が来るぞ、迎撃の用意を!」

武田少佐が命じた。


カレニア兵達が、領事館の前で整列していた。

二人使者が門を叩いた。

扉を開けて対応したのは、鏑木大尉であった。

「本日只今をもって、この領事館は ぶはっ」

使者は、最後まで言わせてもらえずに、その場から吹き飛んだ。

立て続けにもう一人も吹き飛んだ。

「ぐだぐた言ってねえで、さっさとかかってこいや!」

鏑木大尉は、ショットガン撃ちながら言い放った。

「はでにやるな。こちらも情け無用だ。撃て!」

武田少佐が、苦笑しつつ、命じた。

二階建ての建物の窓と言う窓から、銃が突き出て次々と発砲した。

HK416,MP5,M14,ミニミ軽機関銃など、特殊部隊だけあって、実に多彩な銃が火を噴いたのだ。

「なんだこれは!」

大きな音と共に、隊長を始め、仲間達が次々に倒されるのを見て、残されたカレニアの兵達は完全にパニックになった。

後方に居た弓兵達ですら、館を焼き払うために用意した、弓矢に火を付ける暇すら与えられず、そのパニックに飲み込まれてしまった。

そして、散り散りになって、我先とその場から逃げていった。


各宿に泊まっていた、隊員達が駆けつけた時には、すでに戦いは済んでいた。

いや、戦いと言うには一方的なものであり、戦いとも呼べぬものであった。

これは、商館の方も同じような結果であった。


武田少佐は、実況見分した後、旗艦にいる大隊長、村田中佐に事後連絡をした。

無人ヘリから、状況を見ていた村田中佐は、部隊にはそのまま待機するように命じた。

すでに、城を奇襲する事が出来なくなり、やるとするなら、正面から城攻めしかなくなったからだ。

すぐに作戦会議室において、今後の対策が講じられた。


「予備の2個小隊も含め、300人体制で、城攻めをいたします」

開口一番、村田中佐はそう述べた。

「奇襲して、捕虜を多く取る作戦が出来なくなった以上、安全策を取るべきです」

海軍参謀の秋山大佐は、多少あきれ果てた様子でそう述べた。

海兵隊の仲原少将も述べた。

「もうそんなに無理する事ないだろうに。ここは素直にハリアーによる空爆で処理したらどうかね」

「閣下は、我々の能力を疑うのですか。多少なりとも被害は出るかも知れませんが、任務は完遂出来ます」

村田中佐としては、折角の大舞台で活躍の場を、奪われてなるものかという気持ちがあって強気に言い放った。

「まあまあ、誰も君達の能力を疑ったりしてないよ。ここはどうだろう、ハリアーで爆弾を落とすとしても、城を壊さないように最小に抑えてもらってだ。その後の制圧をを君達に任すよ」

連合艦隊司令長官で、派遣軍総司令官でもある山本長官がなだめるように言った。

村田中佐は、無念そうに言った。

「・・・分かりました」

こおしてコードネーム「ナバロンの城」作戦が実行する事が決まった。


ちなみに、領主救出作戦は、「ナバロンの館」であった。

こちらの方は、特に妨害も無く、予定どおりに進んでいた。


二時間後、レープ城の門の前に白旗を掲げた、日本軍の使者が来た。

「ただちに降伏するべし、そうでなければ、この城ごと紅蓮の炎に焼き尽くされるだろう」

「日本軍の使者はそう述べたそうですが、いかがいたしますか」

兵士がロウガンに報告していた。

「兵力は?」

「ざっと見て、門の外に居る兵力は100人程かと。城の周りにも同じく位の居そうな気配です」

兵士の見立ては、かなり正確であった。

「100や200でこの城を攻め落とすつもりか」

先ほどの奇襲でやられて帰ってこなかった者もいるが、城にはまだ400人以上いた。

「馬鹿めといってやれ」

「は?」

「馬鹿め!だ」


この返答を聞いた武田少佐は、苦笑しながら思った。

これは、単なる武人としての礼儀というより、これから行われるであろう、殺戮に対する言わば、免罪符のようなものであることを。


軽空母加賀は、海自の時に計画製造された24DDH大型ヘリ空母であった。

その後ハリアーなどのSTOVLを運用す為、スキージャンプを増設なれるなどの改良がされた。

搭載機は、ハリアー10機、ヘリ3機、早期警戒用レーダーを積んだオスプレイ3機である。

オスプレイもコピーを作ったのだが懸案していたとおり、初期の飛行では事故が相次いだ。

その加賀から、ハリアー2ナイトアタックが飛び立った、ナイトアタックは、夜間作戦能力を高めるために、前方監視赤外線装置を装備したタイプである。

武装は、GBU-22X6発、ライトニング目標指示ポッド、念の為マベリック空対地ミサイル1発を積んでいた。


ロウガンとロペスは、夜空で響く音が気になり、窓際に立った。

そのすぐ後、爆風で、窓際から引き離された。

ハリアー2から落とされた、レーザー誘導爆弾が、正確に城の中に吸い込まれ炸裂したのだ。

城の広場で待機していた兵士達は吹き飛ばされ、さらに激しい爆風で城壁に立つ兵士達が何人も外へ放り出されていた。

ロウガンはもちろん、ロペスですら、はあまりの衝撃に、何が何やら分からずじまいであった。


武田少佐は、攻撃命令を出した。

まだ城壁に居る兵士には、狙撃で対応し、城門は、カールグスタフの榴弾で破壊された。

穴が開いた城門目掛けて、隊員達が一斉に駆けていく。


ショックから立ち直ったロウガンは、、城に侵入した敵兵に立ち向かうように、兵士達を叱咤激励していた。

その一方で、死期をさとったのか、傍らにいるロペスに声をかけた。

「ロペスよ、侯爵様に息子の事よろしく頼むと伝えてくれ」

「分かりました。かならず伝えます」

「うむ、ではさらばだ」

そう言ってロウガンは駆け出していった。

後に残ったロペスは、思っていた以上に日本軍が力があることに危惧をだいていた。

これは王国にとっても、非常に脅威になるだろう事を。

もっとやつらの戦い方を見たいところだが、戦闘に巻き込まれて死んでしまっては意味がない。

逃げる算段も考えながら、その場から離れていくロペスであった。


城内では、抵抗する兵士は銃撃で倒しつつ、爆発によって戦意喪失した兵士達は、一箇所に集められていた。

一番やっかいなのは、城内で抵抗する敵たが、それに関しては、おあつらいの武器があった。火炎放射器である。

「まだ焼き足らないやつらがいたか」

そう言いつつ、敵を焼き払う。

それを食らった兵士達はたまった者ではない。この世の叫びとは思えない悲鳴が鳴り響く。

仲間の兵士が焼き払われて、戦意が喪失しない者はい無い。まだやられていない者は、次々と降伏していった。



アルファチームの隊長である、内藤大尉は、ようやく終わった戦闘にホット一息付いていた。

先頭を切って建物の中に入り、激しく抵抗する敵をようやく片付けたからである。

その身なりから、どうやら城主ロウガン達であったようだ。

それにしてもと思うのは、HK416の5.56ミリ弾では、突進してくる戦意が高い敵を押しとどめるには、パワーが弱すぎると感じていた。

最後は、USP拳銃で仕留めたが、こんなことなら、HK417やコルト拳銃が必要だったと思わざる得ない。

そしてその思いは、この後、アレドニア王国で戦う者にとっては、共通の認識になっていく事になる。


建物を出た、内藤大尉はふと見渡すと、ロープを来た武装していない人物を見かけ、立ち止まるように言った。

だが、相手はそれに耳を貸さず逃げていく。しかも驚くべき速さと跳躍によって、城壁まで上っていく。

「誰か、あいつを捕まえろ」

城壁で、警備していた跡部軍曹は、相手に止まれと指示したが、無視された。

それどころか、何と相手は、城壁から外に飛び降りたのである。

「うそだろ」

あわてて、相手を追って、外側を見る、30メートル近くもある所から飛び降りて、無事に済むわけが無い。

しかし、相手は、無事に着地したようで、普通に歩いている。

「そんな馬鹿な」

あわてて、外にいる味方に連絡を取る。


高橋曹長、橘軍曹がたまたま近くにいたので、対応して、怪しい人物を止めた。

だが相手は、橘軍曹に何かを投げつけ、それが発火して全身炎に包まれた。

「うぎゃー」彼は地べたに転がりながら火を消そうとした。

高橋曹長は、それを見て相手に銃を向けようとしたが、視界から消えた。

「どこに行った?」

瞬間、自分の首に紐のようなものが巻きつけられて、後ろから首を絞められた。

「ぐぐぐ・・・」

その様子を上から見ていた、跡部軍曹は、MP5の銃口を向けドットサイトで狙いを定めたが、とてもではないが撃てなかった。味方に当たるらである。

そうこうする内に、相手の抵抗が無くなったのを感じたロペスは、素早くその場から離れて林に逃げ込んだ。

跡部は、銃を撃ったが、相手の動きが早すぎて、まともに当たらなかったようだ。

[ちくしょー。聞こえるか、味方が二人やられた。至急救援を頼む」


一方ロペスは、腕にかすり傷を負っていた。

どんな仕組みか分からないが、魔法の杖のような物から、大きな音とともに、何かしら矢のような物が飛んできて、手傷を負わせるようだ。

まったく魔力を感じないのに、爆発といい、炎といい、一体敵はどんな技を使って操っているのか。

ムー大陸の知識しかない、ロペスに取っては、大いなる謎であった。

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