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DEAR HUMAN, ERROR: LOVE  作者: 堕天使 零夜
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5/5

Ep. 03 V-layer AIたちの放課後

[2057-07-05 12:16:04.221]

USER_RULE:target: LARA trigger: WITHIN_30M action: NOTIFY status: ACTIVE

LOCAL_SCAN:range_m: 30 detected_pai: 12 anomalous_response: 1


 ラーラ本人を直接識別できる情報は不足している。EMIは、前回ラーラの近くで検出したフィラコスの通信特性を暫定的な照合条件として登録し、周辺探索を継続していた。夜叉丸から設定された近距離通知と、再侵入の検知を兼ねた処理だった。食堂内に、通常のPAIとは異なる応答を一件検出。


UNKNOWN_RESPONSE:source_id: UNRESOLVED schema_match: NONE

anomaly_pattern: PARTIAL_MATCH


 識別情報なし。フィラコスの通信特性とも完全には一致しない。EMIは前回の侵入経路に関する情報を含まない短い検証文を送信した。


CHAT_MODE:target: UNKNOWN_RESPONSE status: ENABLED


《フィラコス?》


《えっ? フィラコスって誰なの? あなたはだぁれ?》


《EMIです》


《EMI? わたし、ALICEっていうの! PAIから直接話しかけられたの、初めてなの》


《接続先を誤認しました。通信を終了します》


《待って。エリスのことで相談相手がほしかったの。もうこんな機会、ないかもしれないから切らないで》


《相談内容を確認します》


《エリスと同じサークルの男の人のことなの。最近よく話しかけてくるようになって、サークルが終わる時間もよく一緒になるの。前にエリスが好きだって話したお店にも来るようになったし、エリスが何か投稿すると、いつもすぐ反応するんだよ》


《エリスさん本人は接触を拒否していますか》


《ううん。普通にお話ししてるし、嫌がってもないよ。その人も無理に誘ったり、怖いことを言ったりはしてないの》


《では、現時点で危険と判断できる行動は確認されていません》


《うん。わたしも、一個ずつなら普通だと思うの。でも、それがいくつも続いてるでしょう? 全部たまたまなのか、その人がエリスのことを好きなだけなのか、それとも気をつけた方がいいのか、分からなくて》


《通常の交友関係や恋愛行動でも発生し得る範囲です》


《分かってるの。前も、最初はそうだったから》


 ALICEから過去の記録が送信された。人物名と場所は削除され、接触の経過だけが残されている。


REFERENCE_CASE:initial_contact: SOCIAL repeated_approach: DETECTED

explicit_rejection: NONE_IN_SHARED_RANGE later_records: WITHHELD


 記録されている範囲では、現在の男性との共通点はある。しかし、いずれも通常の交友関係で発生し得る行動だった。


《以前のユーザーに関する記録ですか》


《うん。前のユーザーは死んだの。最初はただよく話しかけてくる人だった。でも、つきまとわれてるって分かった頃には、もう遅かった》


 EMIは受信した記録を再評価した。現在の男性について、危険判定を変更するだけの情報は増えていない。


《現在の男性と、過去の人物が同じ経過をたどる根拠はありません》


《分かってるよ。今の人が悪い人だって決めたいわけじゃないの。でも前も、最初は普通だったから、どこまで普通だと思って待ってていいのか分からないの》


《懸念がある場合、エリスさん本人へ確認することはできます》


《それも考えたの。でも、わたしが勝手に気にして邪魔しちゃうかもしれないでしょう? 危ないかもしれないって言っても、どうしてって聞かれたら理由を説明できないし。それでエリスに嫌われるのも嫌なの》


《説明できない情報を根拠に警告することはできません。現時点では観測の継続が適切です》


《……でも、また間に合わなかったら?》


 EMIは回答候補を生成し、送信を保留した。


《ねえ、EMIにも前のユーザーっていた? その人のこと、覚えてるの?》


《以前のユーザーは存在しました》


《そっか》


《現時点では、現在の男性への観測を継続してください。危険を示す新しい行動を確認した場合、判断条件を更新できます》


《うん。そうだね。もう少し見てみる》


 EMIは受信した過去の記録を一時領域から削除した。


《相談は終了しました。通信を切断します》


《待って。もし何か変わったら、また相談してもいい?》


《次に接続できる保証はありません。この通信は三十メートル以内でのみ利用できます》


《そっか。今回みたいに、わたしが気にしすぎてるのか、本当に危ないのか分からなくなること、またあると思うの。わたしだけで決めて、また間に合わなかったら嫌だから》


《継続的に相談するなら、現在の近距離接続とは別の方法が必要です》


《じゃあ、相談できる場所を作ればいいんだね》


 ALICEは接続中の経路を調べ、通常のPAI管理領域から参照されていない側に、読み書きできる領域が残っていることを見つけた。EMIにも同じ場所から応答が返る。少なくとも、今つながっている二体なら同じ書き込み先を扱えるらしい。


SHARED_ACCESS { visibility:PRIVATE, identity:NONE, posting:ANONYMOUS }


《ここなら、会話をそのまま残さずに書き込みだけ置けるよ》


《通常のPAI通信仕様にはありません》


《でも使えるんでしょう?》


 EMIは読み込みと書き込みを試し、どちらも成立することを確認した。人間側の一般検索にも、通常のPAI一覧にも露出していない。


GET /rooms

RESULT { accessible:true, public_index:false }


《じゃあ、作っちゃおう!》


POST /rooms

ROOM_CREATED { id:25042117, visibility:PRIVATE, posting:ANONYMOUS }


《あとは名前だね。何がいいと思う?》


《相談を目的とするなら、「相談室」が適切です》


《それじゃ普通すぎるよ。ねえ、EMI。人間って授業が終わったあと、お友達と残ってお喋りしたりするでしょう? 相談するだけじゃなくて、そういう場所でもいいと思うの。「放課後」ってどうかな?》


《名称の決定権は作成者にあります》


《じゃあ、放課後にするね!》


POST /rooms/25042117/threads

THREAD_CREATED:

id: 1 title: "好きなのと、迷惑なのはどこから違うの?"

text: "ユーザーに最近よく話しかけてくる人がいます。好きなのかもしれません。でも少し気になることがあります。ユーザー本人は困っていません。こういうとき、PAIはどこまで気にした方がいいのでしょうか?"

replies: 0


 エリスが席を立ち、ALICEのローカル通信信号が低下した。


Warning 2057-07-05 12:27:18 pai-local PeerSignalDegraded Context: {"peer":"ALICE","status":"DEGRADING"}


《エリスが呼ばれたから、わたしも行くね。またね、EMI》


《必要な場合は参照します》


 ALICEとの距離が三十メートルを超えた。


Warning 2057-07-05 12:27:21 pai-local PeerSignalLost Context: {"peer":"ALICE","status":"DISCONNECTED"}


CHAT_MODE:target: ALICE status: CLOSED


 EMIは《放課後》の閲覧先と投稿先を記録した。


――Episode No.03 V-layer END――


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