第120話 マキカエレイ特別配信 その20~初のアイテムドロップおめでとうございます
全長20cmくらいの黒っぽいネズミが3体、こっちに向かって走ってきていた。
「なんだこれ……ビッグマウス……?」
めっちゃ小さい……。
いやまあ、ネズミにしては大きいんだけど、立ち上がると3mを超えていたリトルマウスと比べるとかなり差があるね。
「名前のつけ方が逆なのでは?」
あっちがビッグでこっちがリトルだよね。
(かえでくん、ビッグマウスがビッグなのは身長ではありません)
「どういうこと?」
(よく見てください)
んー、まさかと思うけれど――。
「ネズミにしては鼻が低くて口が大きいけれど……大きな口のビッグマウス……?」
まさかね。
(そうです)
「ダジャレか! くだらなっ!」
(ビッグマウスはとても弱い魔物ですが、放置するとその大きな口で大さわぎをして仲間を呼び寄せますので、早めに倒すことをおすすめします)
「声もでかいの……。面倒なヤツだな。チィタマークローースラァッシュ! はい、片づいた、と」
3体なら余裕だね。
一気に倒せる。
(ちなみにビッグマウスの肉は硬くておいしくないそうです)
「絶対ダンジョン飯しないから!」
魔物が食べられるか食べられないかの情報はいりません!
ボクは宝箱から食べ物を出すんだからね!
「んー、しかし1階層の魔物は弱いね。ダンジョンの外にいる魔物のほうがよっぽど強い」
ビッグマウス、ブルーアント、ヘルメットモール、そしてスライムバット。
どれもサイズは小さいし、攻撃力も低い。マップ埋めのために歩き回っているから、会敵したら倒してはいるけれど、わざわざ倒す価値があるのかな。何かアイテムを落とすわけでもないし。
「そうだよ。なんか違和感があると思ったんだ。普通ゲームで魔物を倒したら、アイテムドロップしたりするものなんじゃないの? せめてお金とか」
さっきからずっと何にも落ちない。
しばらく経ったら、光のエフェクトとともに魔物の遺体は消えてなくなるけれどね。
(かえでくん、魔物の姿をちゃんと見ていますか? ポケットもないのに、アイテムやお金を持っているわけないじゃないですか)
「それを言われるとそうなんだけど……。ゲームってそういうものじゃん?」
魔物は裸だけど、剣をドロップしたり薬草をドロップしたりするものでしょ。どこに持っているのか、なんてリアルな検討をしてはいけないものなのでは……。
(アイテムは宝箱から出てきます)
「そうですか……」
じゃあその宝箱には誰かがアイテムを補充……じゃなくて、ランダムで取り出せるんだっけ? 四次元ポケットみたいなものなのかな。どんなテクノロジーなのかは知らないけれど。
「チィタマークローースラァッシュ! あれ? なんか光っている?」
地面から顔を出したヘルメットモールを倒したら、何か光るものが? それを拾い上げてみる。
「これ……銀貨?」
銀色のコインが3枚。
ヘルメットモールの亡骸の下から出てきた。
(初のアイテムドロップおめでとうございます)
「えっ⁉ さっきアイテムは宝箱からしか出ないって言っていたよね?」
あれはウソ?
(はい、宝箱からしかアイテムは出てきません)
「どういうこと……」
(魔物が宝箱を飲み込んで体内に隠し持っている場合があります。その場合、倒したと同時にアイテム抽選が行われることになります)
「なるほど……」
それで銀貨が3枚ドロップしたってことか。
「でもそれって、魔物がアイテムを持っているのと何が違うの?」
魔物を倒したらアイテムがドロップする仕組みと同じなのでは?
(魔物がアイテムを所持しているわけではなくて、魔物が飲み込んだ宝箱からアイテム抽選がされているので、ぜんぜん違いますね)
「そう……」
こっちからすると結果的には魔物を倒したらアイテムが手に入るわけだから、同じことだと思うけれどなあ。システム的な都合はあまり興味がない……。
「チィタマークローースラァッシュ! お? また何か出た!」
これは……草?
(未鑑定の草ですね)
「未鑑定ですか……。識別の巻物とかあるの?」
(あります。宝箱からのランダム抽選で手に入れてください)
「まあそうなるよね。じゃあそれまで大事に持っておきますかね」
インベントリーに収納っと。
って考えるとさ、どんな大きなものでも重量制限内なら収納できてしまうインベントリーはリアルじゃないわけですが、製作者側はこのシステムに違和感はないんですかね? 魔物が裸だからアイテムを持っていない、ってリアルさと相反するような……。
(それはそれ、これはこれです)
なんて便利な言葉!
よし、ゲームなんだし、深く考えるのはやめよう。




