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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第十二章 定期公演 ~ Monthly Party 2024-25 ~ #9編

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第36話 定期公演#9(≪BiAG≫コラボレーションライブ) その5~あなたは間違わないで

「……だからね、ユーリくんはすっごくかっこかわいいの! はぁ~、一生眺めていられるわ~♡」


 完全に恋する乙女……ではなくて、早口で語るオタク……。

 伝説のアイドル・秋月美月さんはただのアニメオタクだったのだ。


 ちょっとショック……。

 って、あれー? なんでか、コメント欄の反応が温かいぞ?

「親しみを覚えてファンになりました」的なコメントが多く……わからない。そういうものなのか。男の話をしたりしたら、普通は幻滅したりするものじゃないの? ガチ恋勢は死んだのか?


「お母さんの好みはだいたいわかりましたよ~。私の身近にそっくりな人がいますよ~」


「3次元の男をユーリくんと一緒にしないでちょうだい! ユーリくんは完璧なんだからね!」


「でもそっくりですよ~。見た目もちょっと似ている気がしますし、もしかしたら好きになっちゃうかもですよ~?」


 そんな男が⁉

 ていうか、メイメイ男性の知り合いなんて……もしかして学校関係? 先生にそんな人いたかな……。男の先生ってだいたいおじいさんだし。


「もしかしてサツキは……その男の子が好きなの?」


 待って待って!

 秋月美月さんの前に、メイメイに大スキャンダルが!


「違いますよ~。カエくんはユーリくんに似ていますけど、女の子ですし」


 ……ボク?


「カエくん? もしかして、あのマネージャーの子?」


「そうですよ~。顔もかわいい系でちょっと似ているし、正義感で暴走するところなんかはそっくりですね~」


 いやいやいや。


「顔……なるほど」


 なるほどじゃないですよ。

 アニメキャラクターと比べるのはやめてください……。


「ちょっとじっくり見てくるね」


 そう言い残し、秋月美月さんが舞台袖へと消えていく。


「ちょっと美月! どこ行くのよ~⁉ ライブ中よ!……まったく仕方ない子ね」


 益田友恵さんが苦笑する。


 えー、仕方ないで済まされちゃうの?

 観客のみなさんも、コメント欄のみなさんもざわざわしちゃっているじゃない。

 一部爆笑しているやつらの名前は把握したからな。といっても、ゲリラ雷雨にいるいつものやつらなんだけどさ!


「ミツキさん、いなくなっちゃっ……いましたね……」


 ハルルもどう進めて良いのか困っている様子。

 さすがにこれをアドリブでまとめるのは難易度高いね。


「お母さ~ん。ダメですよ~。それは私のカエくんですからね~」


 メイメイが、すでに舞台を去った秋月美月さんに向かって呼びかける。


 私のカエくんって。

 うれしいけど、さすがにそれはこそばゆいって。

 ま、まあ、ボクはメイメイのために生きているから間違ってはいませんけどね?


 と、舞台袖にある控室の扉が開け放たれる。


「キミがカエくんよね?」


 透き通るような声が、ボクの後頭部から前頭葉に向かって通り抜けていった。


「あ、はい」


 秋月美月さんの登場……。

 ホントにボクの顔を見にきたのか……。


「カエくん……。カエくんよね?」


「えっ、あ、はい……。どうも初めまして……」


 初めましてではないんだけど、ちゃんとアイサツはしていなかったかもしれない。


 本物の秋月美月さん。

 こんな至近距離で見たのは初めてだ。

 やっぱりメイメイに似ている……。目元とか、立ち振る舞いとか、纏っている空気とか。


 いつの間にかレイが近寄ってきていた。無言のまま警戒態勢を取っているのがわかる。


「カエくんはサツキのマネージャーさん、だよね?」


 まるで値踏みをするかのようにジロジロと見てくる。


「あ、はい、そうです。粉骨砕身マネージャーをやらせてもらってます」


 この審査される感じ、ひさびさだわ……。

 緊張する……。


「ふ~ん? そっか。あなたがカエくんか……なるほど、はいはい……」


 難しい顔をしたまま何度も頷く。


 ボクは今、何を審査されているんだろう。

 

「サツキのこと好き?」


「はい! 大好きです! 1番のファンでいたいと思っています!」


 ボクの目標は――ボクの存在意義は、常にメイメイのそばにいて、メイメイの魅力を1番に引き出すこと。そして最終的には、メイメイが完璧なアイドルとして覚醒する。それを後押しし、見守るために存在しています。


「カエくん、聞いてよ~。夏目早月ね、どうやら私の子らしいのよね……。産んだ記憶がなくて申し訳ないんだけど。……でも、あなたを見て、私の子なんだなってわかっちゃったわ……」


 そう言って秋月美月さんはボクの両手を掴んだ。


「そう……あの子はあなたのことを選んだのね」


 ボクを選んだ?

 ボクは選ばれたのか?


「あの子のことお願いね」


「はい」


 いまさらお願いされなくても、メイメイはボクのすべてだ。


「あなたは間違わないで」


 間違う?


「大切なのはずっとそばにいてくれることだから」


 何を言って――。


 あ……あの時の目だ。


「あなたは間違わないで」


 紅い……月。


「あの人は……ううん、私もよね。……たぶんどこかで間違えてしまったのね」


 悔しそうに口元を歪め、首を振る。

 目は見開かれたまま。力強く手を握られたまま。


「サツキをお願いね。サツキが間違えそうになっても、あなたは間違わないでほしい」


 秋月美月さんが伝えようとしていることは何だ?

 ボクに何か重要なことを託しているのか。


「あなたはいなくならないで」


 ゆっくりとボクの手を離す。

 どちらの汗だろう。まるで水をこぼしたように手がびっしょりと濡れていた。


「戻るわ。またね、七瀬楓さん」


 瞳から紅の輝きが消える。


 七瀬楓。

 かつて、秋月美月さんのマネージャーをしていた男性の名前。


 今はそばにいない彼の名を口にした。


 どんな想いで――。


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