# 02 最悪の確信
意識が戻って来た時、最初に感じたのは——猛烈な痛みだった。
頭が割れる。
冗談抜きで、何をどうなればこうなるのか分からないレベルだ。
それと同時に、流れ込んでくる“何か”。
まるで誰かの記憶を切り取ったかのような、断片的な記憶。
だが——
痛みが酷過ぎて、内容を処理する余裕がない。
歯を食いしばって耐え続け、やがて頭痛が引いた頃。
ようやく、身体を起こせる程度には回復した。
しかしそこで、新たな問題に出会う。
「……は?」
目に入った光景に、思わず呆けた声が漏れた。
見知らぬ部屋。
現実感のない内装。
自分の知る世界とは明らかに違う空間。
「どこだよ……って、は?」
違和感は、それだけじゃない。
「なんだ、この声……」
風邪……なわけない。
まるで声変わりする前に戻ったかのような、異常に高い声だ。
明らかに、自分のものじゃない。
本当に何がどうなってる……?
急いで記憶を遡る。
確か、学校に不審者が現れて——俺は、落ちた。
そこまで思い出して、思考が止まる。
この意味の分からない状況は、夢……?
試しに頬をつねる。
「いひゃい……」
普通に痛い。
……いやいや、夢であっても痛みを感じることはある。
あの高さから落ちたんだ。
酷い怪我で、痛みを錯覚しているだけかもしれない。
……だが。
どうにも否定しきれない現実感。
そして、この異様な空間が訴えてくる。
ここは本当に夢なのか、と。
実際、俺の記憶にある限り、こんな無駄に凝った部屋は見たことがない。
あるとしても、それはゲームの世界くらいで——。
その時だ。
頭の中で、何かが嵌った。
そして、脳裏をよぎる“ある考え”。
考えるのも悍ましい、最悪の展開——あり得ないはずの、仮説だった。
だが。
それを裏付けるように、視界の中に”あるもの”が映り込む。
それは紛れもなく、最後の決定打。
「……最悪だ」
思わず本心が漏れ出た。
あれが存在するなら、今の俺の状況は——
その時、奥からノックの音が響いた。
「レピオス様、お召し物の替えに参りました」
扉の奥より聞こえた声。
内容から考えて、侍女かメイドの誰かだろう。
——だが、重要なのはそこじゃない。
「失礼します……って、レピオス様!?目が覚め……え!?気絶してる!?」
『レピオス』
彼女が呼んだその名前で、俺の全てが確定した。
「お気を確かに!!レピオス様!レピオス様ぁあ!!」
過剰なストレスに耐え切れず、脳が思考を放棄する。
やめてくれ。
その名前で呼ぶな。
もう、理解した——してしまったから……
夢だと思っていたこの光景。
薄々感じてはいたが、認めたくなかった。
だが今、お姉さんに揺さぶられたことで、推測は確信に変わる。
ここは現実。
そして——
俺は、不憫キャラになってしまったらしい。




