お礼の理由?
バラ撒いてしまっていたクーラーボックスは回収済みだ。
車内で改めておやつタイム。
スキルの件さえなければ最初から全員で話せるのに。
そして、やはり平田ふたりは兄妹だった。
ひらタンの名前は『文(ふみ)』だが、言うときにマヌケなので嫌だそう。
よく分からない。
それと……。
ユイさんの事が引っかかっている。
繰り返し礼を言われた後の平田兄妹の反応も。
かわいいし気になる。
時間調整後、基地に戻り帰宅。
今晩は複数回の【加速】ができるか試すつもりだ。
【加速1】と表示されたことで、進化することは確定。
そして【加速】が出たせいなのか妄想内容は変わった。
いや、自分で必死で変えるようにしたんだけど。
オーガを一刀両断する僕、のイメージだ。
やがてオーガの数を増やした。
今日からはそれをオーガキャプテンにするつもりだ。
話を【加速】に戻そう。
僕の睡眠時間は6時間前後。
【加速】後3時間に目覚ましをセットして魔力確認しよう。
寝てる時の回復が速いのは知っているが、きっちり調べないと。
完全回復なら朝までに再度トライできるということ。
出来る限り試行回数を増やす。
練度上げになるか分からないが、やる価値はある。
~~~
目覚ましが鳴って魔力を見ると完全に回復していた。
2回は可能か。
明日は一時間減らして3回可能か調べるか。
魔力100%なので、無理に起きて回数を増やすこともできるが。
できれば睡眠くらいはしっかり取りたい。
ある意味睡眠は、僕の人生での楽しみの一つだから。
大げさだろうか?
あっ、目覚ましをセットし直し忘れないように。
もう一個買うか……。
ダンジョンに来ている。
オークのエリアだ。
「よし、『バカの一つ覚え』完了!」
オークを縦に斬ったヤスが叫ぶ。
「おまじないですか?!」
尋ねるとゴウさん……ゴウから返答が。
「俺たちに言われる前に自分で言ってるんだ。
話し相手ができたからな」
ん?
どういうことだろう、ヤスの口の悪さを言ってたのに。
「それって冗談ですよね、仲の良い証拠っていうか」
「いや、そのまんまだ。
『バカの一つ覚え』だからな」
オークなので余裕がある、ゴウが振り向いて言った。
ニコリともしていなかった。
はっきりとではない。
何となく感じた。
ゆがんだ何か。
僕は人と関わり合うことを避けてきた、前の会社でも。
でも今は。
感じた怒りのようなものを放っておいてはダメだと思った。
放っておけなかった。
だから、つい、言ってしまった。
「じゃあゴウは盾で殴る『バカの一つ覚え』。
ひらタンはホーリーボルトで『バカの一つ覚え』。
ユイ……ユイは……」
ユイさんを呼び捨てにしてしまった。
思考停止した。
あ。
ゴウの表情、怒るというより……。
意外だと思っているのか、呆れているのか。
変な言い方だと『バカみたいな表情』、か?
全員しばらく黙っていた、リーダーも。
思い出したようにリーダーが言う。
「オーク、斬ってみる?」
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