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34球 男バレの母ちゃん

 思い返してみれば、いろいろとお世話になることが多い先輩の一人。

 まだ入学したて、入部したての私たちのことを一番に気に掛けていたのは……。

「お~い、凌駕りょうが、ちょっと良いかぁ~?」


「ん、どうしたどうした?」


 主将の鐙凌駕あぶみ・りょうが先輩を呼んで、何やら話し込んでいるのは副主将の月見里蒼葉やまなし・あおば先輩だった。ここからだとさすがに二人が何を話しているのか分からないのだけれど、月見里先輩は時折、お笑いを見たときのようにゲラゲラと笑ってみたり、鐙先輩に向かって肘先をグリグリと突っついてみることもしていたのだけれど鐙先輩は小難しそうな顔をしているばかり。そしてついに鐙先輩が耐え切れずにベシッと思い切り月見里先輩の頭を引っ叩いていた。……お笑い?

 うーん……主将と副主将。私も中学時代には、副主将をしていた子とかなり親身になっていろいろと相談することも多くてチーム内ではかなり仲が良かったと思う。たぶん、主将と副主将っていう立場もあったからかもしれない。でも、月見里先輩と鐙先輩は……なんというか、上手い具合に月見里先輩が鐙先輩の余計な力を抜いてくれているような……気がしないでもない。

 そもそも月見里先輩には、男バレに足を運んでからかなりお世話になっている気がする。この男バレの中では、月見里先輩がみんなのことを良い感じに支えてくれているところが多いみたいだ。ただ、特別誰かと仲が良いとか、親睦が深いとかっていうのはまだ良く分かっていない。普通は主将と過ごす時間が長いだろうから主将と仲が良い?はずなんだけれど、ちょっと離れた位置から見ていると月見里先輩は一人でボケとツッコミをしているような感じで、そのかたわらに鐙先輩が突っ立っているような感じに見えなくもない。部活の練習内容とかの相談なら鐙先輩も真剣になって耳を傾けるだろうから……きっと今おこなわれているのは全く別の関係の無い話だったりするんだろうか。

 でも、なんで月見里先輩はわざわざそんなことをする?


 確か、初めて一年生も共に参加した朝練の中で、鐙先輩とペアを組んでいた薬袋一輝みない・かずきくんがあまりにも鐙先輩からしごかれていたようだったから昼休みにはわざわざ一年生の教室を端から覗いてやってきたのも月見里先輩だった。きっと一輝くんの様子を気にしてやってきたんだろう。部員のお世話をしたり、世話を焼いたりすることが好きだったりするんだろうか?でも、好きなだけじゃどうしても出来ないことだってある。


 男バレの中の、お母さん。

 お母さんって言われるとなんとなく納得してしまうのは月見里先輩という存在だ。もちろん自分の練習も真面目に手を抜くことはせずにおこなっているけれど、マネージャーの仕事が大変そうだったりすると真っ先に声を掛けて手伝おうとしてくれるのも月見里先輩が多い気がする。もちろん部活におけるいろいろな準備というものは部員同士で準備していくことが当たり前なのだけれど、椅子を用意したりとか、ボールの点検だとかにおいても月見里先輩が加わってくれることも多い。


 正直、大変だと思う。月見里先輩はそれを何でもないふうにおこなっているけれど、苦痛とか大変だとかって思っていたりしないのだろうか。だいたいのことであれば『お、俺も手伝うぜ~!任せとけ任せとけ!』って感じで手を貸してくれる。それは、有難いことだけれど……このまま月見里先輩に甘えてばかりいると月見里先輩がいなくなった後が大変になってしまうんじゃないだろうか。下手をすれば、自分では何もできなくなってしまう選手の集まりになってしまうんじゃ……って思うところもあるんだよね。


「お。千早チャン?なーんか、難しい顔してる~?ほらほら、女の子は笑ってなきゃダメだってぇ~。大変なことがあればいつでも手伝ってやるからさ!」


 近付いてくる月見里先輩にはすぐに気が付かず、ついつい顔色まで見られてしまった。もちろん私の具合が悪いわけではなく、月見里先輩のことを考えていただけ。ぽんぽん、と軽く私の肩を叩いていくと、今度は二年生の五十木いそぎ双子の元に向かっていって、何やら双子先輩たちに話し掛けては一緒になって笑い始めてしまった。確か、五十木先輩のお兄さんの方って、あまり笑うことって少なかったはずじゃ?いつも冷静で、おちゃらけている弟くんのことにツッコミを入れたり、叱咤している姿の方が多かった気がするんだけれど、五十木先輩たちが二人揃ってこんなに笑って過ごしているなんて……これも、月見里先輩がいる、おかげ?


「あれ。今日は、月見里の観察?」


「あ。杢代もくだい先輩。……それもあったんですけれど、月見里先輩と一緒に過ごしている人たちってなんだか普段は見られないような姿を見せてくれるような気がするんですよね……」


 マネージャーの杢代瑠璃もくだい・るり先輩に話し掛けられると私の選手たちの観察もだいぶ進んできたということだろうか。私が誰を観察しているのかも分かるようになってきてしまっているみたい。まあ、これだけ視線を向けていれば誰を観察しているかなんてことは分かっちゃうかな。


「あー……確かに。月見里って一人でボケもツッコミもしちゃうから私たちが何も言わなくても月見里が勝手にいろいろしているんだよね。もちろんあれこれと適格な指示を出してくれていることもあるんだけれど、だいたいは雑談をしていることが多いかな」


「雑談、ですか……」


 あれだけ笑い合っている姿を見たら、真剣な話をしていないことは分かるのだけれど、本当にただの雑談?でも、選手一人一人に合わせた雑談の内容の引き出しをそれだけ持っているってことだよね。選手に合う話だとか、興味のあることをきちんと把握しているというのも凄い技術だと思う。


 ただ、最初っからそんなふうに選手たちを接していたんだろうか。月見里先輩たちが二年だったり一年のときは?他の選手たちに遠慮して、当然、誰とでもコミュニケーションを取ることなんて難しかったはず。それが三年になったってことで後輩の面倒を思いっきり世話するようになってしまったのかな?


「お。ともえー!レシーブ練に付き合ってくれよーっ!軽くボールを放り投げてくれるだけで良いからさー!」


 っと、雲英雄馬きら・ゆうまくんにお願いされたからには応えなければ。幸い、今のところ急いでやらなければならないマネージャー業務っていうのも少ないし、ここぞとばかりに雄馬くんのことを鍛えていかないと!なにせ、雄馬くんはこの部内において、まだまだレシーブもきちんと出来ないような超初心者だからね。


「じゃあ、行くよー!」


「よし!いつでも来いっ!!」


 もちろん軽くスパイクを打って、よりレシーブ練習の質を高めていくのも良いかもしれないけれど、軽いスパイクであったとしても雄馬くんにはまだまだきちんとレシーブが出来るかどうかが怪しいからね。軽くポーン!と雄馬くんにボールを高く放り投げていく形で雄馬くんのレシーブ練習に付き合ってあげることにした。

 すると『そんなんで良いのかぁ~?』と月見里先輩の声が掛けられる。えーっと、そんなんでっていう意味が良く分からないんですけれど……。


「ウチの部活では、とにかくレシーブを鍛えなきゃいけないんだよ。だから練習するならより本格的なボールを受ける練習をしてみた方が良いんじゃないか~?」


「えーっと、でも雄馬くんは初心者ですし……いきなりスパイクを受けさせるのも大変なんじゃ……」


「あ、俺?俺はどっちでも!上手くなるならどっちでも良いけれど?」


 上手くレシーブ練習をするためには、きちんと基礎もしっかりと出来ていないと難しい。だから、最初からスパイクを受けさせるような練習ではなくて、ポン!と軽く放り投げたボールを恐れることなく、ゆっくりとでも落下地点に足を動かしレシーブ体勢をみっちりと体に教え込ませていく……というのが私の考え方。でも、月見里先輩は少し違うのかな?

 月見里蒼葉は絶対にお母ちゃん的な存在だ!そうに違いない!同級生、下級生構わずに絡んでいけるのはなかなか誰にでも出来るものじゃないものね!そういう人が一人でもいてくれると部としては助かるものですよ!!


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