33. ご褒美の行方は
「なぜ!なぜのんびり城で過ごしていたというイヴァンに僕が負けるんだ!」
「腕を上げたというのは本当のようですね。昔はただ我武者羅に木刀を振り回すだけでしたのに。坊っちゃま、お強くなられました。」
「くそ!イヴァン、お前ちょっとは忖度しろよ!」
「いえいえ、そのようなことをすることは坊っちゃまに対して失礼ですから。」
一度ならず三度もイヴァンに叩きのめされたマテューは悔しそうに地団駄を踏んだ。
マテューは顔を真っ赤にして息切れを起こしているにも関わらず、イヴァンは涼しい顔で微笑みさえ浮かべているのだ。
「イヴァン、マテューをあまりいじめないで。マテュー、イヴァンはこの辺境の地に来てからというものお父様をはじめ騎士たちと毎日訓練をしていたのよ。今でもコッソリ皇太子殿下の護衛騎士たちと手合わせしているみたいだし、まだ幼い貴方では勝てないわ。」
「姉上!僕だってもう十三なのです。イヴァンは十四の時にこの辺境の地に来たと聞いています。僕の方が幼い頃から剣を習っているのに負けるのは納得がいきません!」
マテューはシャルロットとよく似た複数色が混じり合った瞳に涙を溜めて、拳でそれを乱暴に拭い取っている。
「坊っちゃま、悔しいのであればもっと努力なさってください。いつか守りたい方ができた時に悔しい思いをしなくても良いように。いいですか?」
「……分かったよ。もっと稽古をしていつかイヴァンをぶっ倒してやるからな!」
いつの間にか身長がシャルロットを越してしまったマテューは、その大きな体躯で華奢な姉に抱きついてイヴァンの方を睨んでいる。
「坊っちゃま、そんなに抱きしめたらお嬢様が潰れてしまいますよ。」
「うるさい。お前は姉上に口づけをもらうんだから、僕は大好きな姉上を抱きしめたっていいだろ。」
「ああ、そうでした。お嬢様、お願いいたします。」
呆れた顔で二人を静観していたシャルロットは、わざとらしく今思い出したかのように言うイヴァンが自分の頬に指をさして目をつぶって待っているのを見て、まとわりつくマテューを引き剥がしてフッと笑って近づいた。
「イヴァン、大好きよ。」
そう言ってイヴァンの頬に口付けたシャルロットは、涙目のマテューの頬にも口付けを落とした。
「マテューも、これからもっと強くなるわ。」
イヴァンもマテューも満足気に微笑んでいたが、そのうちイヴァンは相変わらずの毒を吐いた。
「坊っちゃま、負けたくせにご褒美を貰うとは狡いですね。それではもう少し私と稽古いたしましょう。」




