ソフトクリームで一番美味しいのはコーン
「「ありがとうございましたー!!!」」
鬼麺堂を出ると店員総出で挨拶をしてくれた。
「美味しかったぜ!」
「ご馳走さまでした。このチャーシューと肉味噌、美味しくいただきますね」
「食った食ったっす」
「ここまでの満足感は久しぶりです。ご馳走さまでした」
「またエグいメニューを考えておくわ。気持ちがいいくらいの完敗よ。是非今後も鬼麺堂をご贔屓に」
店員総出で頭を下げられると恥ずかしいけど悪い気はしないな……
まぁ俺はチャレンジしてないんだけど……
「次はどうするよ?」
「そうだなぁ……腹ごなしに少し歩くか?近くに商店街があるから買い物もできるし色々見て回っても良いんじゃないか?」
「商店街とは先ほどのショッピングセンターとは違うのですか?」
「んー、ショッピングセンターと同じで色々な店があるんだけど、個人経営の店が多いんですよ。専門店とかもあって面白いですよ」
「おっ!楽しそうだな!早く行こうぜ!」
「私もそこで調味料とかを見てみたいわ」
鬼麺堂から100メートル程歩くと街の商店街が見えてきた。
平日の昼過ぎだからか主婦の買い物客が多い。
良くテレビなどで大型ショッピングセンターができて昔からの商店街が存続の危機だとかをよく見るが、ここの商店街はそんなこともなくむしろ大型ショッピングセンターと対等に渡り歩いている。
街からの立地もあるが駐車場もしっかりしていて、昔からのスーパーもあり大型ショッピングセンターでは真似のできないような大安売りのタイムセールを実施し主婦の心を鷲掴みしている。
専門店も多く、学生服や学校用の必需品は全てここで揃う。
服屋は少しの婦人服店などはあるが多くなく、服を買いたい、家族で買い物がしたいならショッピングセンターへとその時の需要で使い分けができているので上手く機能しているのだと思う。
俺も服はショッピングセンターで買うが雑貨や夕食の買い物だけなら商店街で充分だ。むしろこっちのほうが安い。
それに……
「おう!康成!今日は早くから買い物か?丁度ピークが終わった所だから少し見ていかないか?安くするぜ?」
「康成ちゃん!うちは今日鰆が安いよ。どうだい?」
昔から使ってるから馴染みの顔も多い。
知り合い価格に値下げしてくれたりとこれも昔からある商店街ならではだな。
「さっきのショッピングセンターも凄かったっすけどこっちも凄そうっすね。むしろこっちのほうが安心感があるっす……」
「甚平さん、色々な店があって見ごたえはあると思いますよ。好きなように回ってみますか?」
「そうですね。それも楽しそうですね」
「康成君、調味料はどこで買えるのかしら?」
「えーとですね……入ってすぐのスーパーには一般的なのが売ってて、それ以外はこことそこに……」
入口にある案内図を見て説明すると華夜さんと甚平さんは眺めながら各々が行きたい店を探す。
「あなたこの調味料が売ってる店の隣には古本屋っていうのがあるみたいよ」
「康成君、古本屋とは?」
「中古の本を売ってる店ですね。中古だからそれなりの品質ですけど安いですよ。シリーズ物が揃ってなかったりしますけど中には掘り出し物もあって楽しいですよ」
「行きましょう。華夜さんお供します」
「ふふふ、わかったわ。康成君、私とこの人は一緒に見て回ることにするわ。手探りで見て回るのも面白そうですもの」
「じゃあ俺の時計を貸すんで時間になったらここに合流しましょう」
時間を決めると甚平さんと華夜さんは二人で商店街を歩いていく。
本当に仲良しラブラブ夫婦だな。
おっ、手を繋いだ。
「なんか……親のは見てて恥ずかしくなるな……」
「仲が良いんだから良いじゃないっすか」
「俺らはこれからどうするよ?」
「アニキ、私はあれが食べてみたいっす!」
羽歌が指差した先にはソフトクリームとクレープを食べる親子連れが歩いている。
「凄いな羽歌は……まだ食えるのか?」
「甘味は別っすよ」
「だな!」
華凛も食えるのか……
無限食べた後で良く入るな……腹も出てないしその体のどこに入ってるんだ?
「羽歌はどれを食べる?」
「んーどれが美味しいかわかんないっすから最初は普通のやつにするっす」
「俺はこれが良いな」
羽歌には普通のソフトクリームを、華凛はチョコバナナクレープを買う。
「アネキ!交換しながら食べるっす!」
「おう良いぞ!」
俺は無難にチョコのソフトクリームを購入する。
クリームも好きだけど俺は味が染みたコーンが好きなんだよな。
昔コーンの下を少し食べて吸って食べたら母ちゃんに怒られたな……
商店街に設置してあるベンチに座りながら食べていると華凛が一点を見つめていた。
「どうしたんだ?」
「いやっ、馴染みすぎて気づかなかったけどな。あれは人じゃねーな」
華凛が指を指す先には良く見ると1人の男性が立っていた。
ん?っと思ったが良く見ると確かに違和感を感じる。
若い男性なのだが服装が流行からかけ離れていて戦時のような軍服で今の時代に見るとコスプレに見えるが本人に合っているというか、違和感がない。
しかし通行人は彼のことは見えていないようにぶつかりはしないがすぐ側を通り過ぎていく。
男性が立っている場所は商店街の中央にある大型の時計の前だ。
まるで誰かを待っているような……
「どうする?」
「どうするってどうにかできるのか?」
「多分何かしらの未練があって成仏できてないんだろうけどな」
「私が話しかけてみるっす!」
「お、おい!」
羽歌が声を掛けに時計へと向かうが兵隊へ声を掛けるとすぐに戻ってきた。
「アニキ何かよくわかんなかったっす……専門用語がいっぱいで……」
「結局俺が行くのかよ……しかたねーなぁ」
羽歌に促されて今度は俺が兵隊へと声を掛ける。
「あのー」
「はい!何でありましょうか!」
あれ?会話できるの?
「ずっとここ立ってますけど、どうかしたんですか?」
「はい!待ち人を待ってたのであります!」
「単刀直入に聞きますけど……今が何年かわかりますか?」
「今でありますか?話し声が聞こえて来たのを聞くと平成が終わり令和に入ったと把握しております!」
お?お?お?
「えーと……こんなことを聴くと失礼かもしれませんが……今の自分の立場はわかりますか?」
「だいたい把握しております!自分が戦死してから75年になりました!」
「だったらここで待ってても……」
「それが……わかってはいるのですが……成仏の仕方がわからないのであります……」
「待ち人が来ないからですか?」
「いえ!待ち人は三十年ほど前に逢いに来てくれたであります!」
待っているではなく待っていた。と彼は言ったのを思い出す。
「死んでから長くなりすぎてしまって……彼女とあって満足したら成仏できるものだと思ったでありますが……なかなか成仏もできず……」
「ずっとここにいたのですか?」
「いいえ、待ち人が来るまでは約束の時計の前で待っていたのですがあってからは時計から少しは離れられるようになりました!」
「会ってから?」
「はい!それまではずっと彼女を待つだけでしたが待ちながら街の変わりようを見てきました!毎日少しづつ変わる街並みを見ていたらこの街のこれからが気になってしまい……気づいたら成仏できずにずるずると……」
あーあれか……彼女には会えたけど会うまでの長い時間街を見てきて今後の街が気になってしまい未練が増えたのか……
「今は彼女を待っているのではなく?」
「はい!ここはただの定位置であります!」
「あっそうっすか……」
「今まで私に話しかけてくれたのはさっきの娘と君が初めてでした。私が見える人はなかなかいないようで」
確か多少霊力があってもぼんやり見えるくらいなんだっけ?
「ここで会ったのも何かの縁、1つお願いをしても良いですか?」
「何でしょうか?」
「どうにか私を成仏させることはできませんかね?」
商店街で不思議な兵隊さんに出会った。
未練があるのだろうがそれが何かもわからない。
だが彼は成仏したいらしい。
そういえば俺、今まで物理でしか成仏させたことねーな……
よし、まずは報告、連絡、相談、ホウレンソウだ。
華凛ー!!羽歌ー!!




