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腕相撲霊界場所



「おや?良いではないですか、村人って感じですよ?」



甚平さん、あんたも俺をモブモブ言うのかよ……



「おぉー!見てみろよ!さすがに今日は大量だぜ!」



華凛が大量の肉が入っているであろう袋を指差す。



「とりあえず4つに分けて見ました。羽歌さんは飛びながらですので少し小さめです」



甚平は少しと言っているがどうみても人1人分はある袋が羽歌の前に置かれた。


「うわぁ、凄いっす……持てるっすかねぇ?」



羽歌は試しに前に抱えるように持ち、宙に浮かぶ。


「あれ?けっこう軽いっすね?これならもう少し持てるっすよ?」



「長距離を飛びますからね少し余裕を持たせた方が良いと思いまして」



羽歌は「なるほど……」と再度抱え、フィットするように紐を締め直す。



「さて……甚平さん?これはどういうことだ?」



羽歌が1人分の重量だとしよう。


康成の前には一頭分丸々のサイズの袋が用意されていた。



「康成君専用です。このサイズはなかったので、華夜さんに新しく袋を縫ってもらったのですよ。もしかして持てませんか?」



康成は袋を掴むと肉入りの袋は片手で軽く持ち上がる。



くそっ……無茶苦茶軽いな……

娘の遠足のリュックより軽いじゃねーかよ……



「やはり大丈夫そうですね。私と華凛の分はこっちです」



甚平は康成の半分、華凛はさらに半分程のサイズだった。



「なぁ父ちゃん?これなら本当に俺と羽歌はもう少し持てるぜ?康成の分も少し手伝うか?」



「だそうですが、康成君どうしますか?」



「大丈夫だよ。大きさの割りに軽すぎて違和感しかねーけどな」



ハイエース程の塊を軽々と持ち上げると康成も紐で固定させる。



「何かこの肉、冷たいな」



「冷凍室から出したばかりですからね。早く着く予定ですので今回は氷は無しにして肉のみを袋に詰めましたので非常に効率が良いですよ」



「なるほどね、それじゃあ急いだ方が良さそうだな」



「はい、そろそろ出発しましょう。羽歌さん、華凛、準備は良いですか?」



「大丈夫っす」「大丈夫だぜ」と二人の準備を確認し四人は村を出発した。



「始めは軽く走りながら行きましょう。康成君がどの程度の速さで走れるのか様子を見て、私達がついて行けるくらいでお願いします」



「了解」



始めは軽いランニング程度で、荷物を持ったままの走り方に慣れるまで少し時間はかかったが次第にスピードを上げ、軽いランニングから本気のランニングに、自転車、原チャリ、40キロ程の車までスピードを上げる。


「そろそろ限界かな?」



後ろを見ると康成以外は何とかついて来れるスピードのようで、康成は30キロ程までスピードを落とす。


30キロまで落とすと三人は問題無くついて来れるようだった。



前もって甚平に言われていた大きな一本松に到着すると一度休憩にする。



時計を見ると出発から30分程しかたっていなかった。



「いやぁ、凄く速いですね。もう半分ですよ」



やっぱり街までは30キロくらいか?



羽歌と華凛を見ると息を切らせてはいたがまだまだ余裕が見える。



「なかなか良い運動っすね。でもアニキについて行くだけでギリギリっすよ」

 


「それでも残り半分だろ?全然楽勝だな!」



「少し飲み物を飲もうぜ。休憩にはこれだろ?」



康成は肩掛けのポーチから青い缶を4つ取り出すとみんなに配る。



「おや、すみません。本当にこれ効くんですよね」



「おっ、ブルブルじゃねーか!康成、気が利くな!」



「みんなこれは何すか?」



「元気が出る飲み物だよ。飲み過ぎると華凛以外は夜寝れなくなるけどな」



「うっせーよ」



羽歌はブルブルを一口飲むと炭酸にビックリしていたがすぐに次第に慣れ、「変な味っすけど悪くないっすね」と飲み干し、「あれ?もうないっすか?」と名残惜しそうに缶を覗いていた。



15分程休憩をすると「そろそろ行きますか」と甚平が立ち上がる。



「そうっすね。早く終わらせて温泉に浸かりたいっす」



「街に温泉があるのか?」



「言ってなかったか?これから行く街は湯ノヶ原って言う温泉が有名な街だぜ?」



「温泉以外にも歓楽街として有名ですね。毎日色々な催し物があるのですよ」



「そいつは良いな。俺も温泉に浸かりたいな」



「予定より早く着きそうですし時間は沢山あるので是非入ってから帰りましょう」



「賛成っす!元気も出たしさっさと行くっす!」



そこからは早かった。ブルブルを飲んだのが理由か温泉が理由かはわからないが全員休憩前よりも早く走り、村から一時間と少しで街に到着した。



……………………


「うわぁ……何か凄いな……」



「そうだろ?俺も最初来たときはそんな感じだったぜ。デカイだろ?」



康成達の前には巨大な温泉地の歓楽街が広がっていた。



マジで広いな、東京ドーム何個分だ?

湯気があちこちから出てるし中央にあるのが温泉か?



「なぁここの飯を食べたら豚になるとか、名前を失うとか無いよな?」



「何いってんだよ?そもそもここの肉は俺達が狩った肉が出るんだぞ?何で豚になるんだよ?」



「現世に来たら見せてやるよ」



あのジ○リ作品をな……




今俺達は甚平さんを待っていた。


「さすがに目立ちますので荷台を2つ程借りて来ます」といつも使うという卸売業者に荷台を借りに向かったいた。



「そのままだとさすがにダメか?」



「ダメっすね。アニキは見た目だけなら人族の村人っすよ?ただの村人があんな荷物持って来たら注目されちゃうっすよ」



「村人の康成が注目される。それはそれで面白そうだけどな」



三人で甚平を待っていると街の入り口では沢山の催し物が開催されていた。



大道芸に大食いチャレンジ。大食いチャレンジには賞金が出るらしい。


「なぁ華凛?あの大食いチャレンジに甚平さんが出たら食べきれるか?」



「あー、あれか……」



歯切れの悪い華凛が店の脇に掲げられている旗の文字を指差す。



鬼人族甚平お断り!!



すでにやらかしてたのかい……



ってか、甚平さん。出禁になるまで何やったんだよ……ん?



甚平お断りの裏にもう一枚隠れていた旗が見えた。



鬼人族華凛お断り!




華凛……お前もか……



華凛の顔を見ると恥ずかしいのか申し訳ないのかよくわからない顔をしている。



「確かに族長もアネキも無茶苦茶食べるっすもんね」



「仕方ないだろ!?だって全部食べるだけで賞金が出るんだぜ!?」



「賞金かぁ……俺も何か勝てるもんはないかな」



康成が周りを見渡していると康成の肩に男がぶつかる。



「邪魔だ!どけ!」



「あぁ、すまんすまん」



「ったく!昼間っから女はべらせやがって、人族のひょろい男が良い身分だな!」



あぁん?


いけない、我慢だ。我慢。



「姉ちゃん達もそんなひょろい男より俺みたいな強い男の方が好みだろ?」



男は筋肉に力を入れ力こぶをアピールする。



確かに男は甚平や華凛と同じ鬼人族のようで立派な角、はち切れそうな筋肉を惜しみ無く出している。


「確かに俺の好みは俺より強い男だな」



「なら話は早いじゃねーか、そんな男より俺と遊ぼうぜ?色々教えてやるよ。色々な……」



男の言葉に「ハンッ!」と華凛は鼻で笑う。



「なんだよ?」



「そうだな……お前が康成に勝てたら考えてやるよ」



「ぷぷぷっ!オッサン?本当にやるんすか?」



華凛と羽歌の挑発に男は顔を真っ赤にプルプル震えている。



「話の流れなら当然力比べだぜ?本当に良いんだな?」



「当然だろ?でも待てよ。こっちが負けたら俺達と遊ぶんだろ?もしも俺達が勝ったらどうしてくれるんだよ?当然何か商品はあるんだろ?」



「そうだな、万が一も無いがな。もしもお前らが勝ったら最近の狩りの報酬を全部やるよ」



男は荷物からじゃらじゃらと金の入った袋を取り出す。



「交渉成立だな。康成たのんだぜ?怪我はさせるなよな」


華凛はニカッと笑いながら康成の肩を叩く。


「ったく……人がせっかく我慢してやったのに……」



「勝ったらアニキに何か買ってもらうっす!」



「良いぞ期待してろよ。これで家にもお土産が買えるな」



「どいつもこいつも馬鹿にしやがって!おいっ!誰か机を持ってこい!」



騒ぎが気になるのか、いつの間にか周りにはギャラリーが出来ていた。



「力比べだとよ」「あの人族が鬼人族とかよ?」「女を賭けたってよ。馬鹿だなぁ」



「力比べならシンプルに腕相撲だ。その腕折れても知らねーぞ?お前も可哀想だな、俺に女も盗られて腕もへし折られるんだからよ!」



康成と男は机を挟み対峙し、腕を絡め腕相撲の体制を造る。



「誰か合図を頼む!」



面白半分に近くの店の店主がレフェリーを買って出てくれた。



店主の合図と共に男は康成の腕を手加減無しにへし折る勢いで力を込める。



だが、男の腕は微動だにしなかった。



周りから見れば男が最初は様子見で手加減をし拮抗しているように見えるはずだ。



「あり得ないと」男は冷や汗をかきながら力加減を変えてみるが押しても引いてもびくともしない、まるで康成の腕が机に張り付いているようだ。



巨大な大樹と腕相撲をとっているような錯覚さえしてくる。



「そろそろ良いか?手加減はするから怪我はするなよな?」



そういうと康成は腕を少しずつ動かし男の腕が徐々に机に近づく。


その辺りから観客も様子がおかしいことに気がつき始めたが、決着はすぐに着いた。



男の腕が机に着くと同時に観客からは溢れんばかりの喝采が送られた。



唖然としている男に康成は、「まぁ、こういうことだ。俺みたいな人族はきっといないはずだからよ。今回は運が無かったなオッサン」と肩を叩く。



康成はお小遣いを手に入れた。


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