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禁じられた破壊魔法使いの私は、呪われた辺境公爵へ嫁がされましたが、私には何が呪いなのかよくわかりません。  作者: 秋名はる
第一章:呪い解除編

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果樹園の果物

この日、フェンネルとユリウスは、二人で近隣の街へ出かけていった。


先日訪れた果樹園に、果物がたくさん実っていたことを思い出し、あのあと使用人たちと共にそれをいくつか収穫していた。今日はその果物を、町の人々に配りに来たのだった。


果物でいっぱいになったかごを何台もの馬車に積み、再び町へ繰り出すと、街の人々は笑顔で出迎えてくれた。


「旦那様、こんなにたくさんの立派な果物をありがとうございます!」


「いつも民のことを気にかけてくださり、感謝いたします。」


温かい言葉をかけられるユリウスを見て、彼がこの地でいかに信頼され、慕われているかを改めて知る。

彼に倣いながら、私も人々に果物を配っていると、見覚えのある男性たちが声をかけてきた。


「フェンネル様、先日は倒木の片付けをしてくださってありがとうございました。

 おかげで道がすっかり元通り使えるようになりました。」


「貴重な魔力を民のために使ってくださるなんて……なんてお優しい方だ。」


「偉大なお方にこの地を治めていただけて、私たちは幸せ者です。」


村の人々は、私のこの間の働きを覚えてくれていたようだった。

自分の行いが人の役に立てたのだと実感し、私も胸の奥が温かくなった。


果物を受け取った人々の中には、お礼の品を持ってきてくれる者もいた。


「旦那様、これは近くの山で狩った大鹿の角です。

 この角には魔力が秘められていて、魔除けに使われます。ぜひお屋敷に飾ってください。」


猟師らしき男が、両手いっぱいの大きな角を掲げて見せた。

象牙のように白く光るその表面は、まるで神聖な力を宿しているかのようだった。


「旦那様、こちらは近くの山で採れた薬草ときのこです。

 この地に来られたばかりのお嬢様には、珍しいものかと……。」


年配の婦人が、かごいっぱいの香り高い薬草を差し出した。


「ありがとうございます。」


私はかごを受け取り、微笑んだ。


* * *


しばらく穏やかな時間が過ぎた。

人々と談笑するユリウスの姿は、とても自然で、どこにでもいる優しい領主のようだった。


――とても、呪いに苛まれている公爵だとは思えない。


町の人々は、そもそも彼が呪われているなど知らないのかもしれない。だが、それを抜きにしても、彼には人を惹きつける何かがある。その穏やかな笑みを見ているだけで、皆の心が和らいでいくようだった。


やがて、果物の配布が終わり、私は一人、前回も訪れた街角のカフェでお茶をしていた。ユリウスは正面の広場で、村人たちと何やら楽しそうに話している。


……だが、そのときだった。


不意に、彼がこめかみを押さえて苦しそうに顔を歪めた。

そして、そのまま体をよろめかせて膝をつく。


「だ、旦那様……!? 一体どうされたのです!」


「近寄るな!」


談笑していた街人が慌てて手を伸ばすが、ユリウスは苦しげに顔を上げて――鋭く叫んだ。

彼はそのまま町人が呼び止めるのを無視して広場を後にし、人気のない小屋の中へ逃げるように去っていってしまった。


嫌な予感がした私は彼の後を追って中に入っていくと、ユリウスは一人部屋の隅にうずくまって。表情は伺いしれなかったが、なにかひどく激痛に耐えるような様子で、小さくうめき声を漏らしている。


(……また、呪いが……!)


私は直感的にそう感じて、この前のように彼の肩に手をおいて支えた。案の定私の腕から「ビリリッ」としびれのような感覚が走って、彼の呪いを破壊しているような感覚がある。彼を支える手に力を込めているとき、不意にユリウスが起き上がって、私に覆いかぶさるようにして首に両手を回してもたれかかってきた。


「わわっ……!」


突然のことに、思わず気が動転してしまいそうになるが、彼はそのまま私の首のあたりに顔を埋めて浅い息をしている。よく見れば彼はいまだ痛みに耐えているようで、彼の吐息が耳元に当たるのを感じた。


私は気を引き締めて、なんとか彼の胸に手を回してそれを支える。そうして呪いが止むまで魔力を発していると、次第に彼は落ち着きを取り戻しているように見えた。


(_こんなところを、他の人に見られたら大変だわ…。)


そんなことを思いながらヒヤヒヤ彼を支えているうちに、彼は再び身じろぎをして起き上がった。


「……すまない。

 またいつもの発作が出たようだ。君が助けてくれたのか。」


「と、とんでもありません。気がついて良かったです。

 もうお加減はよろしいのですか_。」


「ああ、_助かったよ。」


ユリウスは静かに息を吐いてそういった。発作に苦しんでいたときのことをよく覚えていないのだろうか。彼はまだ少し目が虚ろで、顔にはまだ少し疲れが滲んでいる。


彼が覚えていないのなら、さっきの出来事はそのまま私の胸にしまっておこう。私はそう心に決めた。


気丈に振る舞っていても――彼の身を蝕む呪いは、まだ消えていない。

その呪いが、彼を完全に飲み込んでしまう前に……なんとかしなければ。私は、強くそう心に誓った。

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