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禁じられた破壊魔法使いの私は、呪われた辺境公爵へ嫁がされましたが、私には何が呪いなのかよくわかりません。  作者: 秋名はる
第一章:呪い解除編

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東部の落盤事故

ある日のこと、この日はユリウス様のもとに、所領内の運営を任せている役人が定例報告に訪れていた。


「所領内の運営はつつがなく進んでおります。

今年は天災も少なく、農作物の生育も順調に進んでおります。秋には昨年以上の収穫が見込まれることでしょう」


「それは良かった。

昨年は、夏の日照不足の影響で作物の収穫量が例年より少なかった。

このあたりは冬に備えての作物の備蓄が肝心だ。引き続き、管理を頼みたい」


ユリウスさまが役人の肩を叩いて労うと、役人は恭しく頭を下げた。


「ところで、東の山岳部の方で、数日前に落石があったと伺いました。

人的被害は今のところ報告されておりませんが、何でも落石の影響で、山頂までの道が塞がれ、山岳部に住む住民たちが孤立しているとか」


「それは本当か」


ユリウスさまは、腕を組んで眉を潜める。


「一刻も早く、支援物資を届けるなどの対応をお願いしたい。

私も、事態が長期化する前に、一度視察に赴くことにしよう」


そう言うと、ユリウスさまは立ち上がって役人を送り出していった。


** *


再びユリウスさまが部屋へと戻ってくると、すかさず私は声を上げた。


「あの、峠の落石の件ですが」


「ああ、住民が孤立して被害を受けているらしい。

なんとかしなければ」


「大変そうですね」

「おそらく、近いうちに私も現地へ視察に赴かなければならないだろう。

 また暫く屋敷を開けることになるかと思うが、辛抱して……」


「その、落石なのですが、もしできれば。私も現地でお手伝い出来ないかなと思いまして」


「…?どういうことだ」


ユリウスさまが怪訝そうに私のことを眺める横で、私は目を輝かせてこう提案した。


「要するにその落石の岩が、片付けばよいわけですよね

どかすか、はたまたその岩を壊してどければよいわけです」


「……それは、そうなのだが。

フェンネル、君は一体なにを考えているんだ?」


「ほら私、ついこの間、町までの道を塞いでしまっていた倒木を破壊することに成功しました。同じやり方で、落石も破壊できるのでは?」


要するに、私にその岩を破壊しに向かわせてほしいと、私は期待を込めてユリウスさまに提案した。しかし、ユリウスさまは私の予想に反して眉を顰める。


「フェンネル、君の提案には賛同できない。

さすがの君でもそれは危険すぎるだろう」


「そ、そんなことはありません」


「第一、この前破壊に成功したのは倒木だ。

単なる樹木なら君の力でもなんとかなったかも知れないが、大岩を破壊するとなると、それとは比べ物にならないくらいの魔力を消費するのだぞ」


魔法に精通しているユリウスさまが解説してくれた。

魔力は、同然ながら発動する対象となるものの素材や、本来の強さによって、消耗具合が異なる。木々や植物のような脆い素材のものであれば簡単に魔法が発動するけれど、反対に岩石等といった頑丈な素材のものは、魔法を発動させるのには、相応の魔力を消耗する。


「この間は偶然成功したかも知れないが、そう簡単にはいかないだろう。

第一、君はまだ自分の魔力を訓練し始めたばかりだ。

今回のようなおお仕事は、まだ君の手には余る」


「そ、そうですか……」


私は肩を落とした。

図書館で自分の攻撃士としての力のことを知ってからというもの、私はそれをなにかに役立てたいと思っていた。

けれど、確かに今はまだ屋敷の周辺の小物を壊したり刈り取ったりできる程度だ。

なりふり構わず発動させては危険が伴うと本にも書いてあった。


「確かにそのとおりですね。

私は未だこの力を使いこなせていないところもあります。今は無理せずに少しずつ慣れていこうと思います」


そう言って、私は大人しく引き下がろうとしたが、

それを背後からユリウスさまが呼び止めた。


「もしよければ、君も一緒に視察に同行してみないか?」


「えっ?」


「落石を破壊するのを手伝うのは難しいかも知れないが、私とともに現場に赴いて見ることはできる。何か解決方法を見つける手助けになるかも知れない」


「よ、よろしいのですか?」


「それに君はこの地に来てから、屋敷にこもりきりだろう。そろそろ退屈してきているのではないか。とはいっても、行き先は辺鄙な山岳部の村ではあるが」


ユリウスさまは控えめにそう言ったが、私にとってはそれは思っても見ない提案だった。

私は前のめりになって、目を輝かせる。


「是非、ご一緒させてください」


即答して、私とユリウスさまは数日後に山岳部の村へ向けて出発した。


** *


所領内の東地方には、霊峰が連なる山岳部が続いている。

小高い山々の頂きには、年虫を通して白い雪が覆っている。このあたりの地域では、山岳部にしか生息しない高山ヤギがいた。

このヤギから取れる“カシミヤ”と呼ばれる毛皮は、希少な高級品として、国内外の富裕層や、貴族たちがこぞって身につける人気の品だった。


「ここから見える景色は素晴らしいですね。

所領内が一望できます」


私が目を輝かせてそう言うと、ユリウスさまも頷いた。

馬車に乗って山岳部の村までやってきた私達、小高い丘の上に位置するその村からは、眼下に所領内が一望できた。


視線の両脇には、真っ白い雪化粧をした山の峰が連なっている。

そこから山の裾野の方に目を向ければ、青々とした草木を茂らせた森や、平原が地平線まで続いていた。


「私の所領である北部地方は、高原地帯なんだ。

東北部の高い山々に囲まれるようにして、高原や森が広がっている」


ユリウスさまの説明を受けながら、私は広大な所領内を見渡して、思わず感嘆のため息を漏らす。ハイデルベルク公爵家が、北部の大領主と呼ばれる所以だ。この北部地方は、国王陛下の治める中央地方の次に広い所領面積を誇っている。諸侯達の中では最大だ。

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