アイスクリームパーラー完成まであと少し
「……ふふ、ふふふふ。これこそがオルサポルタを震源地としたアイスクリームトレンドだわ」
深夜の寄宿舎、ひときわ豪華な自室でアナスタシアの机の上には、可愛らしい花のシールが貼られた手紙ではなく、びっしりと書き込まれた「価格表」と制服とアイスクリームの盛り付けの「ラフスケッチ」が広がっていた。
今考えているのは、ただのアイスクリームショップではなく、アイスクリームパーラー。それをこの世界で、この世界の公爵令嬢としての権力をフル活用した、究極のデザートサロン設計図だった。
オルサポルタは冬が厳しい地域に属する。
そんな冬の日にアナスタシア達はアイスクリーム作りに励んでいた。
お父様や第三秘書官のコンラッドのおかげでアイスクリームの製品化は進み、冷凍保存の魔道具はドナ達お城の職員が専用の物を製作してくれた。お店の内装、カトラリー等必要な物も揃い、求人、制服の採寸ととても順調に進んだ。
制服はとてもお洒落で男女共に評判が良いものが仕上がりアナスタシアはふふん!と鼻が高い。今後は制服目当てに働きたいと言われる人気店になると皆で予測を立てるほどである。
そして、お店はほぼ完成し、内装の準備に取り掛かっている最中とピピロッテから報告を受けている。
この前、完成したお店を大通りから見上げた先には、空を突くような八角形の塔がそびえ立っていて、重厚なスレートの屋根が日光を浴びて銀色に輝き、その頂上にある繊細な鉄の飾りは、まるでお姫様の冠のよう。三階の屋根裏窓からは、今にもお洒落なドレスを着た貴婦人が顔を出しそうな豪華さにわくわくした。
そして、建物の二階部分を取り囲むように、淡いパステルイエローの手摺りの付いた広いテラスが張り出している。そこはまるで空中庭園のようで、街行く人々を見下ろしながらお茶を楽しむ優雅な空間。二階は事務所と豪華な特別室と応接室を準備してもらった。オーナーの特権である。
一階へと視線を落とすと、そこには繊細な彫刻が施された真っ白な柱が等間隔に並び、深い軒が柔らかな影を落とす美しい回廊が広がっている。深めの軒は、雨や雪の日には人々を優しく迎え入れ、晴れた日には心地よい木陰となって、テラス席でくつろぐ客たちを強い日差しから守ってくれるのだ。
一階の内装は足元に広がる鏡のように磨かれた白と黒のタイル。そこには、背もたれが愛らしいハートの形に曲げられた、白くて細いワイヤーのガーデンチェアのような椅子と白いテーブルが並ぶ予定。1階は豪華さの中にもカジュアルさを加えたテイストで身分を問わず、入店出来る雰囲気作りにもこだわった。
看板は、優しげな瞳をした可愛い牛の肖像を描いて貰っている最中だ。入口を飾る磨き上げられた真鍮の取っ手に重い木製でガラスが嵌め込まれた扉は皆が入りやすいように空いている。バニラと砂糖が混じり合った、幸福そのもののような香りが鼻をくすぐり、期待で胸が弾けるようなお店が近い将来完成するのだ。
アイスクリームパーラーのオープンにあたって、子供だけでなく大人も楽しんでもらえるお店にしたいという希望で少し大人っぽいイメージに仕上げてもらっている。
それに合わせてメニューも普通のアイスクリームコーン以外にもサンデーやクリームソーダなどのメニュー作りに余念がない。
「メニュー作り楽しいよう!」
完成イメージのイラストを描きながら揃えられた銀食器や可愛い形のグラスを眺める。
楽しすぎで目がランランとしている。いや、ギラギラかもしれない。全然寝る気になれずにサンデーのメニュー作りという名の妄想にとらわれている。
プリンアラモード用の横長の銀食器を眺めながらアイスのみにするか、アイスクリームパーラーなのにプリンを主役に加えるか、アナスタシアはウンウン唸りながら夜更かしが止まらない。
大人達を含めた試食会を行い、アドバイスも貰い改良を重ねる。
そうして出来上がったメニューは素敵なイラストと共に印刷され、初めてアイスクリームを食べる人達にも想像が出来る仕上がりになった。
アイスクリームやコーンの生産、オペレーションも順調に進み、そうして完成したメニューを城のシェフへ説明し、試食会へ皆を招待することになった。
今回の活動に協力してくれたピピロッテやチャールズ、ランスロット、ジョージアナ、グレチェンの両親もアイスクリームパーラーのプレオープンには招待をしている。
皆も両親や家族にこの素敵な食べ物を知ってもらう為に一生懸命協力してくれて、とても楽しみにしてくれている。
なので、この城での試食会が最後の調整となるのである。
こうして、アナスタシアが夜更かしをして作成したメニューを元に今回はシェフが作ってくれるのでお城での試食会に皆の反応は様々だった。
ずらりと並んだ試作品を前に、集まった大人や仲間たちの反応は様々で——。




