表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オルサポルタから始まった  作者: 泰藤
寄宿学校生活の始まり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/46

魔法を使う

授業が始まって間もない、秋の深まりを感じる朝。

寄宿舎の扉を開けると、そこには白い静寂が広がっていた。


太陽はすでに地平線の上にあるはずなのに、その柔らかで明るい光は海霧(うみぎり)(さえぎ)られ、乳白色のヴェールを通したかのようにぼんやりと世界を白ませている。



つまり、霧が濃いのだ。



アナスタシアとピピロッテは寮を出て、校舎へと続く短い道を歩き出す。

肌を刺すほど寒い訳ではないが、身が引き締まるような秋の冷気。薄手のコートを羽織る者たちがいるかと思えば、隣で寒さを感じさせない制服姿で駆けていく男子生徒が向こうに見える。


オルサポルタの港から少しだけ離れたこの場所では、海原(うなばら)の気配は、ときおり地響きのように届く重厚な霧笛(むてき)の音にのみ残されている。周囲にはただ、霧を含んで重く沈んだ赤や黄色の落ち葉と、濡れた土の静かな香りが漂っていた。


視界の先では、大樹の枝や校舎から伸びる尖った塔の先にたなびく深緑色の旗の輪郭が、霧のあわいから幻のように現れては、またゆっくりと白に溶けていく。


始業を告げる鐘の音が遠くで響く頃、ようやく霧の隙間から明るい光がこぼれ落ちた。

足元の石畳が露にしっとりと濡れ、オルサポルタの朝が、ゆっくりといつもの色彩を取り戻そうとしていた。




今日も集められた大講義室では、生徒達が今か、今かと授業の開始を待ちわびていた。

なぜなら、遂に魔力を解放して魔法を使えるようにする儀式が行われるからだ。


この儀式は10歳になれば身分関係なく、この地に住むものは皆等しく経験する行事である。




先生達が準備した道具を取り出し魔力解禁の儀式の説明が行われる。


先生が抱えるキラキラ光る大きな瓶に入った飴玉を金色に輝く豪華な透かし模様の入ったシュガートングで摘まんでそれぞれに配っていく。

掌に乗せられたのは、ふっくらとした厚みに透明感のある透き通った手毬飴のような丸っこい形に車輪のスポークのように鮮やかな極彩色が放射状に並んだ、小さな工芸品のような飴玉だった。赤、ピンク、オレンジ、黄、黄緑、水色、紫、白……。合計8色のそれぞれの色が隣り合う色と喧嘩することなく、中心の一点から外側へ向かって、鮮やかな虹色が放射状に、規則正しく並んでいる。






先生の穏やかな声が響く。




「これから解放の儀式を行います。まずは黒板に書いた呪文を言う練習を行います。問題無く言えるようになれば、飴を口に含み呪文を唱えなさい。大丈夫失敗を恐れる必要はありません。飴が口に残る間は何度でも唱えられます」





私たちは教わった通り、掌の上の小さな虹をじっと見つめ、解禁の呪文を練習する。

問題なく言える自信がついた所で飴を口に入れ、呪文を唱える。




「――Elaqalatl(エラガラドゥル)




呪文が口の中で響いた瞬間、飴玉が内側から淡く発光した。

隣で同じように呪文を唱えていた赤毛のピピロッテの頬も淡く光っている。



「おぉー!ピッピのほっぺ光ってる!」


「アナスタシア様の頬も光ってます」



そのような会話をしているうちに飴玉は急に冷たくなり、まるでミントのような清涼感を感じる。

そのまま、口の中で転がすうちにその温度は劇的に変化していく。


清涼感の部分が溶け出すと、喉の奥がカッと強いお酒を飲んだ時のように熱くなった。ドロドロと流れるような熱い塊が胸のあたりに流れて溜まっていくような感覚。

口の中では甘みだけでなく、ハーブのような爽やかさ、熟した果実の芳醇さ、そしてリキュールの入ったカカオキャンディのような濃厚さを感じた。



とても不思議でゴージャスなお菓子を食べた感覚に圧倒されているうちに胸のあたりに溜まった熱い物が手足の指先まで伸びていくような感覚に浸る。





今までもちゃんと目は見えていたのに、視界が急激に鮮明になったような感覚。そして、鼓動に合わせて指先から、つま先から、今まで感じたことのない軽やかな「熱」が溢れ出したように感じる。



飴が口の中で解けてなくなる。先生が言うにはこれで、魔法を使える準備が整ったらしい。あとは、魔法を学習すると使えるようになる。

使える魔法は魔力量や知識によって変わってくるので、アナスタシアは憧れの魔法を使いこなせるようになる為の努力は惜しまない。


そう! 私は魔法の世界にいるのだから魔法を使うのをとても楽しみにしていたのだ。


そんな情熱が実ったのか、基本の生活魔法は問題なく使えるようになった。

種火、コップ一杯の水、少しの間だけ使える風、暗い場所を少しの間だけ明るく照らす光。

そんなささやかな魔法であるが、アナスタシアは大喜びだった。


いや、周りの皆も同じようなもので一緒に何かが出来る度に一緒にはしゃいでいた。


それ以降はオルサポルタの中央学院に通う子供達が学ぶ高度な魔法に関しても着実に使い方を学び、簡単な攻撃魔法なども使えるようになったのでアナスタシアは感激していた。

楽しみにしていた魔法も思ったよりも簡単に使いこなせるようになった。



「や、やったよ!私、本当の魔法少女になったよ!空を飛べる日も近いかもしれない!」



アナスタシアは空を飛んでいる大人を一度も見たことは無いが絶対に飛べると信じている。

魔法使いと言ったら空を飛ぶのは定番中の定番でしょ!!!





霧笛……霧の深い時、航海の安全のために、船や灯台が鳴らして注意を促す汽笛。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ