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拾話 ランクアップ

半分エタってた……

これからはちょくちょく改変&投稿していきますー

 転移陣の前で腰を下ろしていたオレ達は帰るための準備を始めていた。

 迷宮のダンジョンボスを倒せば実質的な迷宮踏破だ、地上への転移陣は現れる。しかしダンジョンボスを倒す事だけが冒険者の目的ではない。

 ダンジョンのお約束と言えば未だ見ぬ未知への挑戦、そしてもう一つ。


 そう、迷宮踏破の褒美とも言える財宝(・・)である。


 むしろ冒険者にとってはこちらの方がメインとなるだろう。

 一攫千金、一夜体尽、場合によっては遊んで暮らせるほどの財宝が手に入る。加えて言うのならば、ダンジョンにおける財宝は特別だ。

 


 違いを表すのならば古代遺跡が良いだろう。

 『人魔対戦時代』、人々は魔王や人類を脅かすモンスターを倒すため、様々な兵器を生み出した。

 

 一国を一撃で沈められるほどの超魔砲。

 【神話級】モンスターである古龍と契約し、力を借りることが出来るイヤリング。

 魔法そのものを無効化する結界石。


 人類における平均的な冠位が高かったので優秀な魔道具も数多い。

 古代遺跡ではたびたび『忘却の遺産(アーティファクト)』と名前を変えた魔道具や兵器、金銀財宝が手に入る。

 しかし古代遺跡は無尽蔵に存在するわけでは無い、有限であるうえに当たりはずれも存在する。


 しかし迷宮踏破で得られる財宝は尽きることが無い。

 時間が立てば迷宮が貯め込んだ魔力によって何度でも財宝は生成される、何より忘却の遺産以上の魔道具が手に入ることがあるのだ。


 それ故に、冒険者たちは迷宮に己の夢を見る。

 ——見たこともないような凄まじい魔道具を。

 ——溺れるほどの金銀財宝を。

 自身の命をチップに変えて、モンスタの巣窟へと突き進むのだ。




◆◆◆◆◆◆





 「な、何でなんだぁぁぁ‼」


 「煩いわよ、リドー‼ ゼオンの言ってたこと聞いてなかったの⁈」


 

 嘆くような大声がダンジョン内を木霊する。

 そんな大声の発生源……リドーは、冬華に頭を叩かれ撃沈する。

 しかしリドーが叫びたくなるのも共感できるというものだ、なんと言ったって迷宮踏破の醍醐味である財宝。

 本来ならば黄金に輝いているべき宝箱の中身が……底が見えるほどすっからかんだったのだから。



 「だってよ、中身が空っぽなんだぜ? 流石にこれはねぇよ!」


 「何言ってるの、多少は財宝があったでしょ」



 宝箱の前で訴えるように地団太を踏むリドーに冬華がシリアの方へ指をむける。

 そこにはにっこりと微笑みながら銅貨を見せびらかすように持つシリア。今日の迷宮踏破の報酬、銅貨三枚だ。

 その光景に再びリドーが絶叫する。

 そんな彼らの様子をオレは苦笑いしながら眺める。

 どうやらオレは一応、依頼主扱いなので手伝わなくていいらしい。あいつの監視もあるのでありがたい申し出だ。

 


 「とりあえず早めにハイアーク・バジリスクの解体を進めた方が良いんじゃないか?

  速めに回収しないとダンジョンに魔力として吸収されるぞ」



 ダンジョンはモンスターや人の骸を吸収し魔力へと変換する。

 吸収されるのを防ぐのは解体して、マジックバックなんかに回収するのが一番だ。

 オレは視界の端でゴーちゃんを操りハイアーク・バジリスクを移動させるクィーンを顎で指す。

 しかしゴーちゃんではうまく解体はできないだろう、早く手伝った方が使える部位も多くなる。オレの言葉に急かされるように残りの三人も動き出した。


 (それにしても……今回の迷宮探索は失敗だなぁ)


 開いた時間を使い思考に耽る。

 今回の目的は異変の調査、および原因の手がかりを掴むことだ。

 結局のところは、間接的に『神魔の巣窟』が関係していること以外は何も分からない。


 わかったことと言えば迷宮の魔力がどこかに流れ込んでいる事。

 ダンジョンボスが不自然にランクの高いモンスターだったのも、一種の防衛本能が働いたからだろう。

 その結果、財宝も生成されずダンジョンコアも限りなく小さくなっていた。

 何より気がかりであるあいつの思惑が読み取れなかった。


 (本当に何も知らなかったのか? いや、それは無い。

  なんたってあいつは……)



 「って、うおぉぉぉぉぉぉぉおお‼」



 深く潜り始めた思考は突然の大声に呼び戻された。

 もう、今日何度目か分からないほど聞き飽きた絶叫だ。すでに誰の声かも分かっている。



 「どうしたんだよリドー……って、え?」



 そこに居たのは土魔法を行使した姿で固まるリドー。

 しかしそれだけではない。リドーの体中を魔力が駆け巡り、痣のような形となって体中で真っ赤に発光していた。

 時間と共に発光の光が強まり、痣が体中を覆うように広がっていく。

 魔力暴走……ではない、これは誰にでも起こりうり、誰でも一度は体験する現象。



 「まさか……ランクアップか?」


 「すごいです~。私~、人のランクアップを見るのは初めてかも~」



 シリアは感動したように言うが、当たり前のことである。

 人に寿命は約80年。そのなかでランクアップするのは多い人でも5回か6回、それこそ八割の人は一般レベルで終える事を考えれば20年に一回起こるかどうかの現象だ。

 人のランクアップなどそうそう見ることは無い。


 加えて、ランクアップは才能によるところが大きい。

 残りは努力と経験だ。

 リドーの場合は【風水師】だったので魔法を使い、地形を変えまくる事と格上のモンスターを倒したことが経験となったのかもしれない。


 そんな皆が見守る中、長い時間と共に痣のような魔力光がリドーの心臓へと収束していく。


 

 「おめでとう、リドー。ランクアップしたての気分はどうだ?」


 「あ、ああ。これには慣れる気がしないけど……悪くない気分だぜ‼」


 

 先ほどの苦しそうな表情とはうって変わってはしゃぎだし、……慣れないステータスに頭から地面に突っ込んだ。

 

 

 「……なんのジョブになった?」



 珍しくクィーンも声をかける。

 やはり気になるところだろう。



 「ああ! 【風水師】から【巌壤師】になったぜ‼」


 「知らないわね……名前からして土魔法に特化した形になったのかしら?」



 オレも知らない。

 と言うよりも【風水師】自体が珍しいからだろう。

 【巌壤師】になったのもリドーが初めてかもしれない。



 「まぁそんな事よりさっさと解体終わらせて、俺のランクアップ祝いをしようぜ‼

  今日は明日まで飲み明かすぞ‼」


 

 (明日も仕事だけどな……)


 そんな言葉は誰にも届かないまま、無事迷宮探索は終わりを迎えたのだった。


 

 

腕鳴らし&ランクアップの事を入れときたかったので

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