外伝II革命のウタ 2話・紙
深夜の酒場にアーカスとカナスは入っていった。
二人は一番奥にある他の席からは隔離されているテーブルに腰掛ける。
そのテーブルには既に違う男が一人座り、酒を飲んでいた。
「今日はやけに早いな。
いつもオレ達より遅いのに。」
「フンッ!ただ酒が飲みたかっただけだ!」
鼻で笑い、酒を飲んだ。
「しゃけー!」
もう舌が回らないくらいに酔っているカナスだが酒という言葉には反応した。
「チッ!酔っ払いが。
仕方ない、マスター酔い覚ましを一つくれ。
かなりキツイやつをだ。」
はいよ。と言って五秒としないうちすごい臭いを放つ液体が出て来た。
「これを酔っ払いの口の中に入れてやると酔いなんかすぐに覚めるよ!」
説明だけするとカナスの口に無理矢理押し込んだ。
「! んッ! ホッボッゲベッ!!
ゲロゲロゲロゲロゲーー!!
ハァハァ………。
なにこれ?」
咳込みその変な液体をマスターが用意してくれていたバケツに吐き出したあと、完璧に素面に戻っていた。
「それで今日は何なんだ?」
「クルディオ、今日のパーティに行ったら使えそうな少女を見かけたんだ。」
「使えそう……か。
そいつについて調べたのか?」
「悪いまだだ。」
「フンッ、ならどうする?
少女つーぐらいなんだから未成年だろ、賛同しようが親が無理と言えば、意味がない。」
「親など関係ない。
やり方次第だがな。」
「やり方ね。
子供相手にあんまり惨い事するなよ。」
「なるべく努力はしてるつもりだ。
で、明日何か任務は入っているか?」
「大有りだ。
これから三日間、二人の部下と 木の国を荒らすバカ共を捕まえに行く。
お前はどうなんだ?」
「俺はもう今は管理職だぞ。
現場に行けるのは緊急事態の時くらいだ。
しかし、クルディオが無理なら誰が………。」
「俺明日はフリーだよ!」
今まで放心状態だったカナスがポツリと呟く。
「本当か?ならあの少女と同じ任務に入ってる奴らとカナスを交代させるか。」
「交代させるのは自分でやっておくよ。」
「もう時間がないからさっさとしてしまえよ。」
「あぁ。で、あの少女の名前何だっけ?」
「“イザラ・アーシェ”だ!」
□ □ □
「ハァー。」
アーカスはため息をつきながら、窓越しに外の様子を見ていた。
「どうされましたか?ため息なんかつかれて。」
心配そうな顔をした部下が話し掛けるがアーカスは何もない。と呟き書類の整理に再び励む振りをしていた。
(カナス一人で大丈夫だろうか。)
頭の中はそのことでいっぱいで書類の中身など入る隙間はなかった。
「アーカス!
ナイト長としての初仕事はデスクワークか?」
ビクッと書類から顔を上げると目の前には砂帝の姿があった。
「何を驚てるんだ?
そんなに俺がここに来るのはおかしいか?」
「砂帝様、ここはナイト以外の者は原則出入り禁止となっていますので、お話なら場所を代えましょう。」
「用件を話したらすぐに出て行く。
今日四組のナイトにさそりの捕獲を命令したんだが、捕まえたさそりは俺に持って来てくれ。
頼んだぞ。」
それだけ言うと本当に出て行ってしまった。
「ふー。
………さそりか。」
険しい顔で今日さそり捕獲をおこなっている四組のナイトを調べる。
それらしい書類を見付けると名前と階級を別の紙二枚に写していく。
(カール・トト、ナイトA。
シーズ・マイト、ナイトA。………)
三組は簡単に見付かったが四組目が中々見付けられなかった。
でも一番下の書類に捜していた者はあった。
(イザラ・アーシェ、ナイトA………。)
もう一人は男の名前があるがカナスが入れ代わっている。
しかしカナスの名前を書き入れずにその書いてあるままの名前を書き込んだ。
「悪いがここに名前があるナイトが来たら、俺のとこに通してくれ。」
紙の一枚をさっき心配してくれた部下に手渡すともう一枚の紙を綺麗に畳み、胸ポケットへとしまった。
そしてそのまま自分の、ナイト長の部屋へ入って行った。