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すずまち製作所  作者: 鶏皮:塩
第一章
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第1話「仕事をやめた」

-7月25日俺は仕事をやめた。-



何もない、期待もない人生だった。


……この会社に出会うまでは。






———




俺の名前は「枕井(まくらい) 纏(まとい)」至って普通のアラサーだ。


田舎の高校を出て東京の大学に進学し


都内のブラック企業に就職しこの街「鈴豊町(すずとちょう)」で暮らしている。


そんな4年勤めていたブラック企業を昨日やめ、晴れてアラサーニートになった。


「早起きしなくていいって最高だなぁ」


独り言を言ってしまうくらいごきげんだ


解放されたばかりなのだからとにかく見たかったアニメを見まくって、昼からビール飲んで…


とやりたい放題の想像に胸を弾ませていたのだが。


冷静に考えると俺は貯金があまりない。


とはいえ今日だけは自由でいいだろう


「コンビニ行くか」


アパートの前の信号を渡ってすぐにコンビニがあるのだが


俺は決まってもう一つ奥の路地にあるコンビニに行くのだ。


このコンビニには俺の人生の癒しがある


ウィーン


「いらっしゃいませぇ」


少しやりすぎなくらいあざとい声…


この声は「”おつか”さん」だ


そう俺の癒しとはこのコンビニのかわいい店員さん”おつかさん”だ


おつかさんはこちらに向かってニコッと笑顔をみせたその顔のまま正面に振り返った


ヤバい可愛すぎる


スマイルがサービスの一環であることはわかっている


わかっているがこのご時世わざわざコンビニの店員が店に入った人間に笑顔を向けるのはある意味異常だ


絶対俺のことが好きだなこれは…


そんなことを考えながらドリンクのコーナーに行きビールを選んでいた


「これ結構値段するな…」「何だこのオリジナルブランド…」


なんて考えていたら隣から男の声が聞こえた


「それ、結構いけますよ」


ビールから目線を上に向けると名札が見えた


「やなぎ」と書いてある


何だ店員か…


なんなんだこの店はフレンドリーすぎるぞ、逆にそこまでは求めてないぞ


なんて考えながら名札を眺めて固まっている俺に


「あ、すみません急に。でも一番安いのに美味しいので結構おすすめです」


と重ねて話しかけてきた


「あ、ありがとうございます。それなら今日はこれにしようかな」


社交辞令的に返した


この店結構通ってるけど見たことないやつだな…


ただ結構イケメンだなやなぎ


犬系の育ちがいいって感じの好青年のイメージだ


「いらっしゃいませー」


他のお客さんが並び始めたらしくやなぎはレジの方へと戻っていった。


ビールを急いで選びスナック菓子をカゴに入れてレジに向かった


さすが俺だなレジに並んだ客を二人がさばき落ち着くタイミングを待っていたのだ


もちろん、おつかさんの方に向かった


ゆっくりレジに向かいかごを置いた瞬間に思った


こんな平日の真っ昼間にビール飲んでるニートだと思われないか…?




「今日はお仕事お休みですか?」


おつかさんが声をかけてきた!?


実はいままで一方的に俺がおつかさんを認知していたわけで特別交流などなかったのだ


なぜこんな日に限って話しかけられた…


こんな日だからこそか、そりゃど平日の昼間にビール買ってたら気にもなるよな


「あ、えっと、、有給の消化中でして…」


嘘ではない、今までためていた有給を消化してやめるのだ


ただ俺の返答がキョドりすぎて気持ち悪かったことは認めよう


「そうなんですねぇ」


それ以上は俺も声が出ず会話が終わった


信じていないのか?それともそんなに気にしていないのか?


まあ後者だろうが…俺はそこから半分意識を失い下を向きながら店を出ようとした時


「有給楽しんでくださいね」


ハッとして彼女の顔を見るために上を向いた


おつかさんは笑顔で手を小さく振っていた


「あっはい…」


なんでこんな返ししかできんのだ俺は…


それにしても久しぶりに誰かとあんなふうに世間話をした気がする


ブラック企業だったけど基本やり取りはメールだし上司との交流も必要最低限だったしな…


もうお察しの通り俺は生粋の根暗なのだ


学生時代も友人は2人しかいなかったし


今は交流もない


もちろんアラサーにも関わらず彼女もいたことはない


学生時代、好きな女の子が一人だけいた。


中学から高校までの6年間、ずっと好きだった。


……結局、何もできなかったけど。


そのせいなのか、俺には彼女ができたことがない。


そのせいで今も女性関係が皆無なのだきっとそうだ


なんて無理のある言い訳をしていたら家についてしまった


ミーンミーンミーン


何年も一人で住んでいた部屋なのにいつも以上に異様に広く感じる


「彼女できねぇかなぁ」


なんだかおつかさんと言葉を交わしてから少し変だ…


いやいや俺は仕事をやめたのだ、この夏は本気で楽しむんだ!


カシュッ


やなぎ店員おすすめオリジナルブランドの198円のビールを開けPCを開いた


「うわ、結構メール溜まってんな」


プライベートのメールアドレスはしばらく開いていなかったからかなりの件数が溜まっていた


ビールを飲みながらメールの整理をするのもなんだか新鮮な気分だ


気になりだすと止まらない性格の俺はしばらくメールを整理していた


「ん、なんだコレ」


学生時代に登録していた求人サイトからの紹介メールだった


5年たっても懲りずにメールをこんなに大量に送ってくれちゃって、整理が面倒なんだよなぁ


「コンビニコスモス鈴豊店…時給1300円…」


おつかさんのバイト先だ


そういえば転職先も探さないといけないことを思い出した


「面白い求人でも探そうかな」


そんな風になんとなく求人を見ていた





【すずまち製作所】

時給:1500円

業務内容:機械製造


※一部、時間移動装置の製造補助あり





時間移動装置の製造?


何だこのふざけた求人は…















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