もう一度、一緒に舞台に立とう!
ハルミは、思わず声をあげた。
お店の前にあらわれた、丸ぶちメガネをかけたおかっぱ頭の少女。
その手に、自分と同じ招待状がにぎられていたからだった。
「ハルミ……」
一か月ぶりにハルミと顔を合わせた栗原さとみが消え入りそうな声でつぶやいた。
「あ、あたし……」
次の瞬間、
「さとみ!」
その前に駆けよったハルミは、興奮した表情でその手を取った。
「お願い、さとみ。あたしともう一度、舞台に立ってほしいの!」
「ええっ?」
思いがけないハルミのことばに、丸ぶちメガネの奥で目をパチクリさせるさとみ。
「聞いてよ、さとみ、あたし思ったんだ。
あたしたちは、もう一度、漫才をやるべきだって。
そりゃあ確かにこの前のコンテストでは、イヤな思いをさせられたよ。 けれども、あんな思いをする人間を、もうこれいじょう増やしたくないのよ」
ようやく再会した相方に、ハルミは一気にまくしたてた。
「それとね、さいきん新しい漫才のネタを思いついちゃって。
それをどうしても、さとみと演じたくなっちゃったんだ」
「新しいネタ?」
「そう、このあいだやった旅行のネタなんだけどさ。
行き先を異世界にしてみるってのはどうかなって」
「異世界?異世界ってゴブリンやオークが住んでいるファンタジーの世界の?」
「その通り!じつはここだけの話しだけど、あたし本物の……」
そこに、
「失礼ですが、そのあたりで」
コホンとせき払いをしてハルミのことばを押しとどめた少年が、
「ようこそ、栗原さとみさま。そして瀬戸内ハルミさま。店主をつとめるウォルフガングと申します」
と、腰を折ってあいさつをした。
そのすがたを見て、
「えっ?あえっ?ひええっ!」
と、丸ぶりメガネをずり落としそうになりながら、おかしな声を上げるさとみ。
「は、ハルミ、みっ、みっ、みっ」
「はい、水ね」
と、ミネラルウォーターのボトルを差し出すはるみ。
「さて、このたびは記念すべき開店第一号のお客さまということで、お二人にプレゼントさせて頂きたい服がございます」
「服を、わたしたちに?」
と丸メガネの奥の目を見ひらいたさとみに、
「はい。この店はそもそも、ハルミさまのお力ぞえで開店することができたお店です。
お礼のかわりとして受け取って頂ければ、これ以上うれしいことはありません」
と、うやうやしく申し出るウォルフィ。
「ところで聞くところによると、舞台で着る衣装のことでトラブルがあったとか」
「ええ、まあ……」
「話によると、お二人の着ていた服が時代おくれだと指摘されたとか」
「そ、そうなんです!」
「なるほど……ならば、そのとき着ていた服よりもよりも、さらに時代おくれの服を着てみませんか」
「さらに時代おくれの服?」
と顔を見合わせる、さとみとハルミ。
その前で、
「そうですね。ここは思いきって、百年くらいまえの流行はいかがでしょうか?」
どうやら、何かを思いついたらしい。
陶器人形のように整った顔立ちの少年が、いたずらっぽい笑みを口もとに浮かべた。




