第65話 『上等だ、クソ共』
リリスを打倒した翌日のことだ。
あの戦いで左腕を失い、意識不明に陥ったカイルは、イザナたちによって治療院へと運び込まれた。
幸いにも腕の傷口は綺麗だった為、腕は接合され、重傷ではあるものの命に別状はない。
そして……カイルの意識が、ゆっくりと浮上する。
重い瞼を押し上げると、見慣れない白い天井が視界に入った。
……ここは、治療院か……? リリスは……どうなった……? いや、倒したかどうかは分からねえが……この様子だ、なんとかはなったんだろう。
体は鉛みてえに重いが、痛みはない……それに、左腕がある……? 確か、あの時……リリスとの戦いで、俺の左腕は吹き飛んだはずだが今は、何事もなかったかのように繋がっていやがる……。
……イザナ、か?
まあ、この回復力だもんな、あいつ以外に思い当たる奴もいねえしな。
そう結論づけた。その時、病室の入口から気配を感じた。
……重傷だろうが、人の気配くらいは分かるぜ、これでも現役だ。
カイルはベッドに横たわったまま、首だけを入口へ向けると……
そこに立っていたのは……テオドールだった。
「……あ?」
とりあえず声は出た。
……ってか、なんだこいつ、いつもの軽口が出てこねぇーじゃねえか、なんかやましいことでもしたのか?
テオドールはそのまま俯き……
「……俺は、何もできなかった」
……ああ、なんだ。そういうことか。てか、そういう顔するかよ。
「……まあ、気にすんな」
あのダンジョンで、最後まで立っていられた人間がどれだけいたか分かってる。
そして、プライドの高いテオドールでも、自分の立ち位置は理解したらしい。
まあいいや、こいつなりに色々悔やんでることもあるんだろう。
……わざわざ、俺が言うことでもねえ。
あとは、こいつの問題だしな。
そんな、しんみりした空気をぶち壊すように、壁面に設置された通信魔具が発光し、無機質な声が病室に響き渡る。
「ギルド本部より通達。カイル・ハーランドの戦闘功績を評価し、冒険者ランクをC級からA級へと昇格する」
「……はぁ?」
意味が分からねえ。戦いはしたがそこまで決定打を与えた覚えはない。
「なお、当該戦闘における功績は規定基準を著しく逸脱しているため、通常の昇格過程を全て省略し、B級を経由しない特例昇格を適用する。カイル・ハーランドを正式にA級冒険者として認定する」
……おかしい。
憶測だが……リリスを仕留めたのがイザナなら……ヒーラーってだけで評価を渋って、功績を俺に回したか?
……それとも、メイカの推薦か?
まあ、どっちにしろ。
「断る」
カイルは即答する、間は置かない。
「……何度も言わせるな。貴族に媚びる気はねえ」
「例外は――」
「知るか! それと今回の功績は俺だけじゃない! イザナや他の連中の報告はどうなってる!」
「該当する報告は確認されていません」
その一言を聞きカイルはゆっくりと息を吐き……冷笑した。
「……そうか」
なるほどな、どういう仕組みでこうなったのか、誰が、何を、どう扱ったのか……全部、見えちまった。
これは天命因子を使わずとも大体予想つく。
「じゃあ、言っておくが、俺はな、評価が欲しくて戦ってるわけじゃねえ。それに、死にかけたのは俺だけじゃねえ。あの場にいた連中は、全員そうだ。実際死んだやつもいた」
……脳裏に、あの戦いがよぎる。
「それを、都合よく切り取って、都合よく俺に押し付けて……か? いいか……よく上に伝えとけ――お前らはクソだってなぁッ!!! 舐めてんじゃねえぞッ!!」
そして、カイルの怒声と共に通信は切断された。
イザナ「少し更新が止まっていたな。部署異動やらでバタついてたが、それでも読んでくれて本当にありがとう。
春は何かと忙しい時期だし、みんなも大変だと思うが無理はするなよ!! GWあたりから、また少しずつ書き溜めていくからこれからも応援、よろしく頼むぜ!!」
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