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問答

「早速、修行内容だが…」


「はい」


投げられた石を避けるのも、動体視力を鍛えられるから悪くはないと思うけど…


「君には選択をしてもらうよ」


「選択…ですか?」


「まず最初に釘を刺しておくが、誤解しないで欲しい」


何を言うつもりなんだろう?


「これは例えばの話だが、イマジーネに行く代わりに、君はある犠牲を伴う事になるとする」


人差し指を立てるガルロさん。


「まず、両親」


「は!?」


この人は何を言ってるんだ…!?父さん達が犠牲になるだなんて!!


「なんなんですか!?親が死ぬだなんて冗談でも言っちゃいけな…!」


「まあまあ、これは例え話でしかないから。気長に聞いてくれよ」


気長になんか聞いてられるわけないでしょ…!


「続けるよ。次にベラキサム君」


もうやってられるか!!!!


「帰ります!!」


「…そして、自分」


俺が…犠牲に…?


「さあ、君は何を選ぶ?」


「…」


もしもイマジーネに行く際に、何かが犠牲になるとしたら…


「どうした?」


「…」


帰るつもりだったけど、俺の頭は考えるのを止めてくれない。


「言っておくが、これは君自身が答えを見つけて、選ぶのが重要だ」


「俺が…答えを見つける…?」


「そうだ、よく考えろ。君はイマジーネに行けるのなら何を犠牲にする?」


「俺は…」






――――――――――――――――――――――――






「ふぅ、畑仕事よりもあいつに付き合ってた方が疲れるぜ…」


ベラキサムはジーニスから逃げるように自分の家に戻り、休息を取っていた。


「…俺にもスキルが目覚めれば、あいつに渡り合えるんかね」


自分の手を見つめて一つの願望を溢す。


「スキルなんて今までどうでもいいと思ってたけど、あいつの必死な顔を見てたらそうも言ってられなくなってきちまったな」


ドンドン


家の戸を叩く音がする。


「ん?誰だ、こんな真っ昼間から…ジーニスか?」


「ベラキサム〜、暇だろ?俺は料理を作ってて手が離せないから出てくれ〜」


「あー、わかったよ。親父」


ベラキサムは家の戸に手を掛け、勢いよく開ける。


「ジーニス!!お前に付き合ってるほど俺は暇じゃ…」


「ジーニスじゃなくて悪いな、ベラキサム」


ベラキサムの思い描いていた視点より、低い位置から声がする。


「あれ?スーマさんか、どうしたんだ?」


「ふむ。ガルロがどこに行ったか、わかるか?」


「ん?なんで俺に聞くんだ???」


ベラキサムはなぜ自分にガルロの所在を聞くのか、理解出来ないと思った。


「ガルロは朝食を取って私の手伝いをした後、用事があると言っていなくなった。そしてお前が入れ替わりでジーニスの修行に疲れ果てて逃げてきた様子だったからな、何か知ってるかと思って」


「み、見てたのかよ…」


ふふんと背を張り、仁王立ちで威張り散らすスーマ。だがその背格好からして、ただ可愛らしいだけに留まってしまっている。


「私は里の中ならどこにでも目を張り巡らせているからな。どうせガルロがお前に代わってジーニスの修行に付き合っているのだろう?」


「ギクッ…」


「お前達、どこで修行してるんだ?ここらじゃ場所は限られてるが、私の結界から出てたりしてないよな?」


スーマはマーシャの話を聞き、いつガルロが結界の外に出てイマジーネに助けに戻ろうとするかわからず、気にかけていた。


「あ、あぁ…それは大丈夫だ。結界内にある裏山で修行してるから、そこは心配しないでくれ」


「そうか、裏山か。わかった」


結界の外を警戒しているイマジーネ兵にガルロが見つかってしまえば、里の存在も明らかになる場合があると危惧している面もある。


「ありがとう、ではまたな」


「あいよ」


「フッ…!!」


ヒュゥゥン…


魔法で体を宙に浮かせ、スーマは裏山の方面へと飛び去っていった。


「…俺にもスキルがあれば、あんな事が出来るようになるんかねぇ」


ベラキサムは小さくなっていくスーマを見て、羨ましいと思っていた。






――――――――――――――――――――――――






「さて、君ならどう選択する?」


「…」


父さん達、ベラキサム、俺…何を犠牲にするかなんて、最初から決まっていた。


「俺は…」


だって…


「何も選びません」


誰かを犠牲にしてまで、そんな事をするくらいなら最初からしない方がマシだ。


「ほう?ならばその答えを出した理由を聞かせてくれ」


「…いいでしょう。まず父さん達が犠牲になるのなら、俺がイマジーネに行く根本の理由がなくなります」


だって、第一に父さん達の汚名を払拭する事が俺の目的だから。


「つまりイマジーネに行く事は両親のためであると、そう言いたいのだな?」


「…はい」


ガルロさんの口角が微妙に上がった気がした。


「ではベラキサム君を犠牲にしない理由は?」


「もしもベラキサムが犠牲になるなら、俺は冷静さを失って自暴自棄になってしまうでしょう」


目的のために友達を失うくらいなら、俺は友達を選ぶ。


「それほどまでに友達が大事か?」


「ベラキサムは俺のかけがえのない存在です。あいつを失ってまでイマジーネに行くと強行するのは、天才のやる事じゃない」


「ふむ…では君自身を犠牲にするのは?」


これこそ、最初からおかしい選択肢だ。


「俺が犠牲になるのなら、誰がイマジーネに行って、マーシャさんを救い出せるんですか?ベラキサム?あなたは時間が無いと言っていたし、あいつの誕生日を待つつもりは無いはずだ。この中で一番に答えとして正しくないものです」


俺がイマジーネに行くために、俺が犠牲になるなんてそれこそ矛盾している。


「…」


「だから俺は何も選ばない。君自身が答えを見つけるというさっきのガルロさんの言葉は、与えられた選択肢に甘んじる程に決意が弱いという表れでしかない」


イマジーネに行く事も大事だけど…失ってはいけない大事なものが、俺にはある。


「…君の答えはわかった。では答え合わせといこうか」


「はい…!」


これが俺自身の導き出した答えだ…!!


「ジーニスくん」


一瞬、俺はガルロさんが次に放った言葉が理解出来なかった。


「不正解だ」

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