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覚悟

「…」


この話…聞いちゃって良かったのかな。


「よいしょっと…」


俺は家の屋根に突き刺さりながらも、スキルの力で五感、つまり聴覚も強化されているから、ガルロさんの話が聞こえてしまっていた。


「もしも俺がイマジーネに行ったとして、マーシャさんに会えたとしたら、救えればいいけど…」


天才なら、立場の弱い人たちに寄り添わなきゃだもんな。


「さて、家に帰るか」






――――――――――――――――――――――――






「おい!ガルロが脱走したとはどういう事だ!?」


ああ、とうとうバレてしまった…朝まで時間は稼げたけれど、ガルロは逃げられたかしら…?


「ええ…いつの間にか鍵を盗まれたみたいで…」


「この役立たずが!!見回りはしなかったのか!?」


「夜に見回りは致しましたが…牢の中に人影がいましたし、なにぶん暗かったので…」


「あいつめ…!!」


横暴を音に表したかのような、いつも耳にしている足音が近付いてくる。


「マーシャ…!!!!」


「ご主人様…」


その手には鞭が握られていた。


「なぁ…?どうして奴を庇う?このままこの屋敷で飼い慣らしておけば良かったものを…!!」


「嘘よ!!」


パシィン!!


「あぅっ…」


ガルロは鬱憤の捌け口にされていたし、いつ殺されてもおかしくなかった。私の怪我の責任を押し付ける為に、今日こそ…


「主にこうも逆らうとは…貴様にも厳罰を…いや」


ニタリと醜悪という二文字が似合う表情を浮かべるこの男に、私はもう諦めていた。


「いいことを考えた…!!!!」


自由になることを、諦めてしまった。






――――――――――――――――――――――――






「ハァ!!オッラ!!!!」


ヒュッ!!シュッ!!


「ふっ!!っあぁ!!」


父さんの仕事を手伝った後、裏山で昨日やった修行をベラキサムと再度行っていた。


「昨日より…速くなってねえか…?ッダァ!!」


「そう…かな…!」


確かに、昨日よりは石の速度が遅く感じるし、体も軽くなっている気がする。やっぱり俺は成長速度も天才ということだな!


「あぁ〜!やめだやめだ!!」


ドサッ


ベラキサムが愚痴を零しながら地面に転がる。これぞまさに不貞寝である。


「全然当たんねえよ…疲れた〜」


「おいおい…修行に手伝ってくれるんじゃ…!?」


いきなり至近距離から殺意を感じ、バッ!!と振り向く。


「やっと気付いたか。やってるね、君たち」


「ガルロさん…いつの間に…」


こんなに近くまで来てるなんて…気配も感じなかったぞ?


「ふむ、プレッシャーに関しては勘が鋭いようだな」


「え?」


「いやなに、小さい頃から奴隷にさせられていた身だが、主に隠れて俺も鍛錬をしていたんだよ」


なんだ…?ガルロさんはスキルを封じられているのに、この人に敵うのは今は無理な気がする。里にいた時には抑えていたと思うけど、威圧感がまるで違う。


「どれ、俺が修行に付き合ってやろうか」


「あ〜!助かるぜ!!そろそろ親父の畑の手伝いをしなきゃいけない時間だったんだ!!」


ベラキサムが大声で捲し立てる。


「ベラキサム、朝一から畑仕事やってなかったか?」


隣の家だからわかるっての。工房に入る前にちゃんと俺は見たぞ?なあ???


「え!?そ、そんな事ないぞ!!じゃ、俺忙しいから!!!!」


「あ、おい!!」


行ってしまった…


「無理もないさ。スキルがまだ備わっていない彼からしたら、君のスキルは手に余る」


「そうか…」


ベラキサムには無理をさせてしまったかな。


「気にする事はないよ。なあジーニス君、そのスキルは己の能力を向上させるんだろ?」


「はい」


「…なら昨日の俺とスーマさんの話も聞こえていただろう?」


「…」


やっぱり、この人は平和ボケした里の人間とは何かが違う。誰よりも厳しい環境で生まれ育ってきたからか…?いや、それだけじゃこうは…


「すみません、その通りです。マーシャさんのことを…」


「いいんだ。元よりそのつもりでスーマさんと話をしたからな」


「えっ…?」


ガルロさんは俺に陽気に笑いかける。


「君はイマジーネに行くんだろ?若い君に頼むのは情けないが、背に腹は変えられない」


「何の話ですか?」


一応聞いてみるけれど、ガルロさんが何を言いたいのかはわかっている。


「マーシャをあの屋敷から救い出して欲しい」


「…」


「こんな事を君に頼むのはどうにかしていると俺でも思う。だが、俺が行っても返り討ちに遭ってしまうだけだ」


ガルロさんの言う通り、いくら体を鍛えていたとしても、スキルが封じられているなら無力だ。イマジーネに乗り込んだところで捕まって終わってしまうだろう。


「なるほど、ノイタークには他に頼める人間もいないし、俺とベラキサムだけがイマジーネに行く覚悟を持っている。そして…」


交換条件として、ガルロさんはこう言いたいわけだ。


「ベラキサムにはまだスキルが目覚めていない。つまり俺しかいない。俺にマーシャさんを頼む代わりに、あなたは俺を強くしてくれる。そういう事ですね?」


「…!話が早くて助かるよ」


「ですが、そうなると…」


これは…難しい問題になってくるな。


「マーシャを助ける為には、君は短期間で強くなる必要がある。それに加えてベラキサム君とは…」


「最短でマーシャさんを助けるためには、俺はベラキサムと一緒にイマジーネに行く事は叶わなくなる」


「…ああ」


ベラキサムの誕生日は二ヶ月後。どう考えてもマーシャさんを早く救うにはあまりにも遅すぎる。


「マーシャが俺を逃したと知った主が、彼女に何もしないと考えるのはあり得ない。きっと辛い目に遭ってしまっているだろうから、欲を言えば早く助け出したい」


「…」


ガルロさんの気持ちもわかる。だけど短期間で強くなり、その上でマーシャさんを一人で助け出すなんて俺に可能なのか…?


「話はわかりました。ですが今日昨日と修行をした内容よりも、さらに早く強くなれるんですか?」


「ああ、俺にとっておきの修行方法がある」


「ふむ…」


俺が動かなければ、誰が動く?ノイターク、ましてやこの世界、イマジンに生まれた弱い立場の人達を守るために俺は修行をし始めたんだろ…?


「どうか、頼まれてはくれないだろうか…?」


手始めに知らない人を救うよりも、目の前で困っている人を助けるのが先決なんじゃないか?


「…」


なあ、俺は天才だろ?マーシャさんを救いたいと思わないか…?


「どうか…頼む…!!マーシャを…!」


心は、決まった。


「俺が…マーシャさんを救います…!」


「おお…ジーニス君…!!ありがとう…!」


「…!」


そうか、ガルロさんが強いと感じた理由がわかった。ノイタークのみんなと違って、イマジーネに真っ向から対抗しようとする心があるから、強いんだ。


「よろしくお願いします、ガルロさん」

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