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もふもふとむくむくと異世界漂流生活  作者: しまねこ


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賑やかな夕食

「ええと、じゃあまずはこの辺りかな」

 リリアちゃんにキラッキラの目で見つめられて苦笑いしつつ、子供でも食べられそうなものを必死になって考える。

「エビフライやツナマヨにレタスを入れて海苔で巻いたサラダ巻きや、大トロやサーモン、茹でた雑魚海老の握り寿司辺りは、子供でも食べられそうだな。あとは……鉄火巻きとだし巻き卵の握りあたりかな?」

 小さくそう呟きながら、なんとなく子供でも食べられそうなお寿司を選んで幾つか取り分けてあげる。

「これでどうでしょうか? こっちの岩豚トンカツ辺りはおすすめなんですけど、こういう塊のお肉は大丈夫ですか?」

 一応、取り分けたお皿を、リリアちゃんに渡す前に母親のマーサさんに見せる。

「ああ、大丈夫だと思いますが……えっ? い、岩豚ですか?」

 後半の俺の言葉を聞いたマーサさんが思いっきり固まったよ。

「はい、冬の岩豚です。ああ、これは俺の従魔達が狩ってきてくれたものなので、俺はギルドに依頼した解体費用くらいしか払っていないんです。ですので遠慮なく食べてくださいね。こっちが衣を付けて油で揚げた岩豚のカツで、こっちは、シンプルに塩胡椒で焼いてあります」

 にっこり笑って説明したけど、マーサさんは目を見開いたままさらに固まったよ。

 まあ、元冒険者なら岩豚自体は食べた事があるかはさておき、名前くらいは知っているのだろう。

「あの、本当によろしいんですか? 冬の岩豚なんて……一切れでも幾らになるか……」

 大皿に積み上がっている岩豚トンカツを見て、そう言ったきり言葉が続かないマーサさん。

 まあ、市場価格で言えば、岩豚のお皿だけ価格がバグっているだろう。

「だから遠慮なく食べてくださって大丈夫ですよ。じゃあ、トンカツは小さめのを一切れと塩焼きはふた切れくらいかな。はいどうぞ。足りなかったらまた取ってあげるから言ってね。気に入ったのがあれば、もちろん追加するよ」

 俺の知る限りにおいて、この世界の人達は俺の常識では考えられないくらいに男女共に大食いだ。なので、この世界の子供の基本的な食事量がどれくらいなのかなんて、想像もつかない。

 それどころか、そもそも子育て経験どころか子供と接する事なんて、散歩に行った時の公園で出会う幼稚園児達とのマックス達を通じての交流くらいしかなかった俺には、全てが冗談抜きで未知の分野だよ。



「ありがとうごじゃいましゅ」

 だけど、満面の笑みでお皿を受け取ったリリアちゃんの言葉に、もう一回胸を撃ち抜かれた俺だったよ。

 なにこの可愛い生き物は!



「ああ、これにはこのお醤油をちょっとだけつけて食べるといいぞ。ほら、こんな感じにな」

 受け取りはしたものの、初めて見る料理の数々にどうやって食べればいいのか分からず戸惑っているリリアちゃんを見て、俺は手早く幾つかのお寿司をお皿に取り、小皿に出した醤油を軽く付けてから生海老の握りを口に入れて見せた。

「こっちのエビフライが入っているのは、味がついているからそのまま食べて大丈夫だよ」

 サラダ巻きを指差しながらそう言ってやると、にっこり笑ったリリアちゃんはきちんと側にあった丸椅子に座ってから、手にしたフォークにサラダ巻きをブッ刺して大きく開けた口に持っていった。だけど、さすがに一口では食べられなかったみたいで半分ほど食べてお皿に戻す。

 無言でもぐもぐと咀嚼するリリアちゃんを、俺も若干緊張しつつ無言で見つめる。

 こういう料理がそもそも子供の口に合わない可能性もあるからね。

 しかし、ゴクリと口の中のものを飲み込んだリリアちゃんは満面の笑みで俺を見た。

「ケンさん。これ美味しいでしゅ!」

 そう言って、ちょっとほぐれた残りのサラダ巻きもあっという間に完食し、茹でた雑魚海老の握りに醤油を少しかけてから一口でいった。

 でもあの小さな口にはちょっと大きかったみたいで、シャムエル様みたいに頬が膨れてパンパンになっていたけど、それでも満面の笑みでしっかり飲み込んでくれた。

 次に食べたのは大トロの握り。

 当然これも一口でいき、もうこれ以上ないくらいの笑顔で飲み込んだよ。

 そして、ここで立ち上がったリリアちゃんが俺に抱きついてきた。

「どれもすっごくお美味しいでしゅ! ありがとうごじゃいましゅ!」

 どうやらちょっと舌足らずがデフォみたいなリリアちゃんの美味しい宣言を聞いて、ここまで呆然と見ていた双子のディアナちゃんとエリマーちゃんが、慌てたように俺が取ったのと同じのを一通りお皿に取った。

 そして無言で頷き合って、まずはエビフライ入りサラダ巻きを口にした。

「何これ。美味しい!」

「ねえ、こっちも美味しい!」

 次に大トロの握りを一口でいったエリマーちゃんの叫びに、ディアナちゃんも慌てたようにサーモンの握りを口にした。

 満面の笑みで頷き合った双子の姉妹は、もうそのあとは夢中になって次々に取ったお寿司を平らげ、岩豚トンカツに突撃していったのだった。



「気に入ってくれたみたいだね。じゃあ俺達もいただこうか」

 笑って彼女達の様子を見ていたハスフェルの言葉に、ヴォイスさん達も笑顔で頷き合い、ここからはそれぞれ好きに取って食べ始めたのだった。

 ちなみに、リリアちゃんは大トロと雑魚海老の握りと岩豚の塩焼きがお気に召したらしく、おかわりを希望されてもちろん喜んで取ってあげたよ。

 それを見て恐縮するマーサさんのお皿にも、岩豚トンカツと塩焼きだけでなく、ハイランドチキンとグラスランドチキンのカツなど各種ジビエをガッツリ盛り付けてあげたよ。

 いつも家族の料理をしているのはマーサさんらしいから、他の人が作った料理を食べる機会なんて滅多にないだろうから、ここは遠慮なくしっかり食べていただかないとね。

 さらに恐縮して何度もお礼を言うマーサさんには、後で各種ジビエのお肉を入れた収納袋ごと差し入れしておこうと思った俺だったよ。



挿絵(By みてみん)

2026年3月12日、アース・スターコミックス様より発売となりました。

「もふもふとむくむくと異世界漂流生活〜おいしいごはん、かみさま、かぞく付き〜」第六巻です。

いよいよ、早駆け祭りが始まります!

そして、お祭りの後のあれやこれやからクーヘンのお店が開店まで。

怒涛の展開な第六巻を、どうぞよろしくお願いします!



挿絵(By みてみん)

2026年2月13日、アース・スターノベル様より発売となりました「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」十三巻の表紙です。


もちろん今回も、れんた様が最高に可愛いくて素敵な表紙と挿絵を描いてくださいました!

冬のバイゼンでの冬祭り、スライムトランポリンでまたしても大騒ぎです!

どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
そして、食事量で負ける っとwww
これは紫の上ルート…Σ( ゜д゜)ハッ!
どんどん高級肉を押し付けるスタイルのケンさん (*ФωФ)フフフ……
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