さて始まるよ!
「本当に美味しかったです」
「本当ね。父さんの言う通りどれも美味しかったわ。私は、特にこの雑魚海老の握り寿司が気に入ったわ」
「本当に美味しかったよね。私は、このホタテとサーモンの握り寿司が気に入ったわ」
「サラダ巻きも美味しかったわよね!」
「「どれも美味しかったわ!」」
空になったお皿を前にして、嬉しそうなマーサさんの言葉に双子のディアナちゃんとエリマーちゃんも頷いて、どれが美味しかった、どれが気に入ったと感想を言い合って笑っている。
リリアちゃんは、俺が追加で出してあげただし巻き卵が気に入ったみたいで、まだ嬉しそうにそれをスプーンで食べているよ。
多分、見る限りマーサさんは俺より確実にたくさん食べていたし、お嬢さん達も、俺と同じくらいは余裕で食べている。
リリアちゃんだって食べるのはゆっくりだったけど、多分トータルで言えば俺と変わらないくらい食べているよ。
うん、もちろん喜んで食べてくれたからそれは全然構わないんだけど……やっぱりこの世界の人の食事量は、基本設定が間違っている気がするぞ。
まだ寿司をつまみつつ一杯やっているハスフェル達やヴォイスさん達を見て、この後紋章の付与があるのに、あんなに飲んでも大丈夫なのかなあ、なんて緑茶を飲みながらのんびり考えていた俺だったよ。
どうやら、ザックさんは従魔達に紋章を付与してから娘さん達に渡したかったらしく、食事を終えた娘さん達にどんな子をテイムしたのかと聞かれても、それは紋章を授けてもらってからな、なんてドヤ顔で笑っているだけで何も言わない。
ヴォイスさん達も笑っているだけで、何も言わない。
ちなみに彼らのホーンラビットは小さくなって俺達の従魔と一緒にいるので、側にいるのは紋章のないスライム達だけだ。
「なあ、もしかして紋章付与には奥さんと娘さん達も立ち会うんだろうか。だとしたら、父親の尊厳的な事とか、色々と大変な事になる気がするんだけど……止めなくて大丈夫かな?」
そんなザックさんを見ていて若干心配になった俺は、小さな声でハスフェルに相談してみる。
「ああ、確かに……でもまあ、それもいいんじゃあないか」
「まあそうか。そこは父親に頑張ってもらおう」
完全に面白がっている口調のハスフェルの言葉に、苦笑いしつつ俺も頷いたのだった。
「ああ、そろそろ時間かな。じゃあ行きましょうか」
遠くから時を告げる鐘の音が聞こえてきて、ワインを飲み干したヴォイスさんが立ち上がりながらそう言って窓の方を見た。
「そうですね。そろそろ行くべきでしょう。ケンさん、またしても美味しい料理をいただき、本当にありがとうございました。妻と娘達までご一緒させていただき感謝します。そうそう、ケンさんはビールと吟醸酒がお好きと伺いましたので、少しですが、後ほど俺のおすすめのお酒を色々とお届けさせていただきます。まあ、どれだけ届けても岩豚一皿分くらいにもならないでしょうがね」
苦笑いするザックさんに、俺達も後でおすすめのお酒を届けるとヴォイスさん達も笑っている。
「あはは、気にしませんので、お酒は程々でお願いしますね」
ちょっとこのところ飲みすぎな気がするので、一応そう言っておく。
まあ、あれば飲むのはもう仕方がないんだけどねえ。
のんびりとそんな話をしながら、スライム達に手伝ってもらって綺麗に片付ける。
マーサさんとお嬢さん達は、スライム達が汚れた食器を片付けるのを揃ってキラキラな目で見ていたよ。
ちなみにリリアちゃんは、アクアの側へ行ってもう顔がつきそうなくらいに張り付いて見ていた。
「ねえスライムしゃん。あなたは賢いんでしゅねえ」
笑ってそう言い、手を伸ばしてそっとアクアを撫でている。
「えへへ、撫でられちゃった」
嬉しそうにアクアがそう言い、プルプルと震える。
それを見たリリアちゃんが嬉しそうな声を上げ、双子の姉妹も側にいたアルファとベータを順番に撫でてそれはもう良い笑顔になっていたのだった。
よしよし、スライムの可愛さもお嬢さん達にも伝わっているみたいだ。
綺麗に撤収を終えたところで、従魔達を引き連れて全員揃って神殿へ向かう。
お嬢さん達は、ザックさんとマーサさんと手を繋いで何やら楽しそうにどんな従魔がいるのか早く教えて! なんて言って笑いながら歩いていた。
無事に神殿に到着して受付で確認したところ、もう準備は出来ているとの事でそのまま全員揃って別室に通された。
もちろん俺達は立会人で、当然、マーサさんとお嬢さん達も一緒だ。
案内された部屋には全部で四人の神官様がいて、部屋の真ん中に置かれた大きなテーブルの上には、見覚えのあるハンコもどきが並んでいた。
「おお、これがそうですか」
ヴォイスさんの言葉に、アレクさんとザックさんも興味津々でテーブルに置かれたハンコもどきを見ている。
「では、紋章の付与を始めさせていただきます。そちらの皆様は立会人という事でよろしいでしょうか?」
一人だけ、ちょっと着ている服が煌びやかな年配の男性が進み出て俺達にそう尋ねる。
多分、この人が一番偉い人なんだろう。あとの三人は明らかに若い。
「はい、俺達は立ち会いです」
一応神妙な顔をしたハスフェルの言葉に、俺達も笑顔で頷く。
ちなみに、俺達の従魔は全員揃って壁側に移動してそこでもふ塊になっている。
その手前に並んだ椅子に、俺達とマーサさんとお嬢さん達が座っている。
当然、最前列にお嬢さん達とマーサさんが座っているよ。
でもって、新人魔獣使いの三人は、それぞれの従魔達を連れて神官様の前に並んでいる。
お嬢さん達の視線は、ザックさんの足元に並んでいる小型犬サイズのホーンラビット達に釘付けだよ。
「実はこちらの三人は、紋章付与をまだ始めたばかりなのですが、彼らでもよろしいでしょうか?」
どうやらテイマーが増えてきたので、紋章付与の出来る神官達も増えているみたいだ。
偉い神官様の言葉に頷き進み出てきたのは、明らかに新人さんっぽい二十代前半くらいの若い神官様方だった。
「おお、そうなのですね。もちろんです。よろしくお願いします」
笑顔のヴォイスさんの言葉に、アレクさんとザックさんも笑顔で頷く。
「ありがとうございます。では紋章を付与させていただきますね」
三人の神官様達は嬉しそうにそう言うと、テーブルに置かれたハンコもどきを見てからちゃんと名前を確認して、それぞれの人の前に立つ。
「紋章の付与は基本的に右手に致しますが、それでよろしいですか?」
偉い神官様の言葉にヴォイスさん達が驚いたように目を見開き、自分の右手を見る。
「な、成る程。では右手にお願いいたします」
ザックさんの言葉に、ヴォイスさんとアレクさんも頷いて右手を差し出す。
「ああ、すみません。手袋は外していただけますか」
偉い神官様に苦笑いしながらそう言われて、三人が慌てて手袋を外す。
そんな彼らを、俺達はもう必死になって笑いを堪えながら見つめていたのだった。
さて、この三人はどのタイプなんだろうね?
2026年3月12日、アース・スターコミックス様より発売となりました。
「もふもふとむくむくと異世界漂流生活〜おいしいごはん、かみさま、かぞく付き〜」第六巻です。
いよいよ、早駆け祭りが始まります!
そして、お祭りの後のあれやこれやからクーヘンのお店が開店まで。
怒涛の展開な第六巻を、どうぞよろしくお願いします!
2026年2月13日、アース・スターノベル様より発売となりました「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」十三巻の表紙です。
もちろん今回も、れんた様が最高に可愛いくて素敵な表紙と挿絵を描いてくださいました!
冬のバイゼンでの冬祭り、スライムトランポリンでまたしても大騒ぎです!
どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m




