スライム達も参加するぞ!
「よし、じゃあとっとと身の殻も剥いじまおう!」
「「「おう!」」」
満面の笑みのアレクさんの言葉に、全員のやる気満々な声が返る。
「あ、その前にこれ返しておくよ。ええと、水で洗えばいいな」
ここで口に咥えたままだったスプーンに気が付いたらしいアレクさんの言葉に、俺は笑って壁際に置いてあった鞄を振り返った。やっぱりここはスライム達の出番だよな。
「皆、出てきてくれるか〜」
「はあい、今行きま〜す!」
元気な返事の後に、鞄の口が勝手に開きスライム達がわらわらと飛び出してきた。
驚きのあまり言葉もないアレクさん達のところへ、アクアとサクラ、それからアルファとベータが飛びつき、一瞬で手にしていたスプーンに張り付く。
「おい、ケンさん! スライムがスプーンを食っちまうぞ!」
大慌てなアレクさんの叫びに、ヴォイスさんが吹き出す。
「大丈夫だよ。ケンさんのスライム達はちゃんと食っていいものと駄目なものを理解しているからな。ほら、じっとしていろ」
弾き飛ばそうとしているのだろう。焦ったような顔でアクアごとスプーンをブンブンと振り回しているアレクさんの背中を、笑ったヴォイスさんがポンポンと叩く。
「いやしかし……」
「大丈夫だから見てみろ。完璧に綺麗になっているだろうが」
完全に面白がるヴォイスさんの言葉に、アレクさんだけでなくダイさんとナフさんも、手にしたスプーンをまじまじと見た。
心得ているアクア達がするりと三人のスプーンから離れて床に転がる。
「うわっ、本当だ!」
「何だこれ、めちゃめちゃ綺麗になってるぞ」
「ええ、スライム凄え!」
それぞれ自分が手にしているピカピカになったスプーンを見た三人の悲鳴が重なる。
「だから、ケンさんのスライムは凄いんだって!」
何故かドヤ顔になったヴォイスさんの言葉に、俺はもう堪えきれずにちょっと吹き出してからそんな彼らを見た。
「別に俺のスライムだけの特技ではありませんよ。テイムするとスライムだって知能が上がって賢くなるんです。だから、ちゃんと食べていいものと駄目なものをしっかりと教えておけば、今みたいに汚れだけを取ってくれるようになります。特に俺のスライム達は賢いし器用みたいなので、俺の料理の手伝いなんかもしてくれるんですよ」
笑った俺がちょっとドヤ顔になりつつそう説明すると、アレクさん達はもう揃って驚きすぎて声もない有様だった。
「ご主人、ちょっといいですか〜〜?」
その時、足元にいたイプシロンが触手を伸ばして俺の足をツンツンと遠慮がちに突いた。
「おう、どうかしたか?」
いきなりこんな事をしてくる時は、ほぼ何か問題があって言いたい事がある時だ。
慌ててそう言って、足元にいたイプシロンを捕まえて抱き上げてやる。
「あのね、あそこの大きな水槽の中と、新しい水が流れてくる管の内側がちょっと全体に汚れているみたいなの。そのお水をご主人も使うんだから、全部綺麗にした方がいいよね?」
その言葉に、思わず突き当たり奥にある巨大な三段になった水槽を見る。
「ええ、綺麗に見えるけど汚れているんだ」
「おいおい、言いがかりはよしてくれ。ちゃんと定期的に掃除しているぞ」
俺のこぼした呟きを聞いた若干不満そうなアレクさんの言葉に、振り返った俺は笑ってイプシロンをおにぎりにしてやる。
「もちろん掃除は行き届いていると思いますが、こいつらは俺達には見えないようなわずかな汚れまで全部綺麗にしてくれるんですよ。とりあえず、騙されたと思ってここはスライム達に任せていただけますか」
イプシロンを見せながら笑ってそう言うと、一瞬驚いたように俺を見たアレクさんは、無言で俺の手の中にいるイプシロンをガン見した。しかも顔を寄せてきたので顔面にイプシロンが当たりそうだ。
「恥ずかしいでしゅ」
心持ち小さくなったイプシロンの言葉を通訳してやると、アレクさんだけでなくダイさんとナフさんも揃って吹き出していた。
「じゃあ、何だかよく分からんが綺麗にしてくれるか。頼むよ」
顔を上げたアレクさんの言葉の若干不思議そうな言葉の後、待ち構えていたスライム達が次々に三段になった水槽へ飛び込んでいった。
今のスライム達の大きさはバレーボールサイズくらいだったんだけど、ググッと小さくなってテニスボールサイズになる。まあ、配管内まで掃除するならあれくらいの大きさの方がいいのだろう。
黙って見ていると、水槽の中だけでなく水が流れる水槽の縁部分や外側の側面をはじめ、内も外もそれから配管の中まで、スライム達が張り付くみたいにして嬉々として動き回っている。
「配管の中まで綺麗になったよ〜〜」
「水槽の中も外も綺麗になったよ〜〜」
「念の為、排水を流す方の配管内も綺麗にしておいたよ〜〜」
「こっちにはちょっと奥の方にゴミが絡まっていたから綺麗にしておいたよ」
「美味しかったで〜〜す!」
「美味しかったで〜〜す!」
「ご主人!」
「後でいいのでここの水槽で遊ばせてくださ〜〜い!」
何故か最後はスライム達全員揃っての大合唱になり、俺はもう堪える間も無くまたしても吹き出したのだった。




