脱線しまくりの解体作業と意外な発見?
「ええと、全然作業が進まねえな。よし、とりあえず身の殻を剥いじまおう」
「あはは、確かに全然進まねえな。脇道に逸れまくりだな」
アレクさんの言葉にダイさんも笑って、置いたままだった巨大な胴体部分を見る。
「ところでケンさん。この、頭のところ、使うか?」
頭の殻を取った中身の部分には、味噌が大量にあってこれがまた美味しかったんだよ。
是非ともこれは料理に使いたいので満面の笑みで頷き、即座に自分で収納しておいた大きなバットを取り出した。
「その頭の部分。じゃあ、ここにください」
「おう、ちょっと待ってくれよな」
そう言ったダイさんが道具箱から取り出したのは、どう見ても剣だろう! って突っ込みたくなるレベルの巨大な包丁。
あれ、俺の元いた世界の魚市場で見た、マグロの解体ショーの時に使ってた包丁とタメ張るレベルだよ。
それを持って、軽々と味噌が付いた頭の部分を丸ごと切り落としたダイさんは、それを俺が差し出したバットに置くと、普通のカニの脚より太いお腹側にある脚も、まとめてその包丁で切り落とした。
「この太い部分にも中には身が入っているんだが、殻が硬い上に細いから割って出すのが大変なんだよ。下手に割ると殻が身に食い込んで食えたもんじゃねえ。だから、大抵はそのまま茹でて出汁を取るのに使っているよ」
そう言いながら、切り落とした大量の脚を置いてあったトレーに山積みにする。
「ええ、中身は使わないんですか?」
「やってみろよ。細い上に硬くてそう簡単には割れないんだ。だから胴体部分優先なんだよ」
思わずそう言うと、笑ったダイさんが切り落とした脚を一本渡してくれた。
うん、俺の知る普通のカニより太いぞ、これ。例えて言うなら、タラバガニの一番太い脚の部分くらい。充分食べられる太さだと思うぞ。
ちょっと棘があったので、そこに気をつけつつ両手で持って無言で関節部分を捻るようにして捻って引っ張る。殻は思ったよりも固かったけど、関節部分はさすがに柔らかかったので、案外簡単にむしる事が出来た。
そのままゆっくりと引っ張ると、当然、俺の知る普通のカニの脚より遥かに太い身がするりと出てくる。
「いただきます!」
にんまり笑って、そのままパクッと一口食べてみる。
「うう〜〜ん、これはまんまカニ刺しだよ。めっちゃ甘くて美味しい!」
「ええ、今何をしたんだ?」
「ええ、どうやってその身を取り出したんだ?」
ダイさんとナフさんが、揃って驚いたように俺を見る。
「ええと、何って……こうやって、この脚の関節の柔らかくなっているところを反対側に軽く捻りながら引っ張るんですよ。ほら、取れた」
無造作に作業台の端に山積みにされていた鎧海老の脚をもう一本手に取り、彼らに見えるようにしながらもう一回捻って身を取り出してやる。
慌てた二人が、それぞれ同じようにしてやってみて、するりと抜けた身に無言で齧り付いた。
そのままもぐもぐもぐ……。
「何だこれ!」
「めちゃめちゃ美味い!」
「ええ〜〜これを今まで捨てていたのかよ……」
いつの間にかヴォイスさんまで、同じように脚を持ってもぐもぐやっている。
「可食部分が大幅に増えたな。これはこれで別の需要があるぞ」
にんまりと笑ったヴォイスさんの言葉に、首がもげそうな勢いで頷いているアレクさん達三人。
「ううん、これってここまで下ごしらえしておけば、このまましゃぶしゃぶに出来るな。よし、これはスライム達に頼めそうだ」
「任せて〜〜〜!」
「やってみるね!」
俺の呟きを聞いていたアクアとサクラが、得意そうにそう言って山積みになっていた鎧海老の足をそれぞれ一本ずつ取りそのまま丸っと飲み込む。
「出来たよ〜〜!」
「これでいいですか? ご主人」
「ちなみにこっち側にもちょっとだけ身があったよ」
太い脚の先にあった細い脚の部分に入っていた身まで、スライム達にかかれば取り出せちゃうみたいだ。
「おお、それならこの細い部分は、酢のものとか卵とじ、雑炊なんかにも使えそうだ。じゃあ、これは後でまとめて処理しておいてくれるか。それで、今から胴体部分の殻を剥ぐらしいから、よく見て覚えてくれよな。あ、すみませんが、後でもう一回頭の殻を剥ぐ部分もこいつらに見せてやってもらえますか」
サクラとアクアを手の上に乗せて、そう言いながらアレクさん達に見せる。
「ええと、つまりスライム達が鎧海老の解体をする。って事か?」
「スライムにそんな事が出来るのか?」
「まあ、確かに今、この脚の身は取っていたが……」
めっちゃ不審そうなアレクさん達の呟きに、俺はもう笑うしかない。
「と、とりあえず胴体部分の殻を剥ぎましょう。それはどうやって剥ぐんですか?」
無理やり話を戻すと、顔を見合わせた笑ったアレクさん達が揃って吹き出す。
「また脇道に逸れたな」
「じゃあ戻って胴体部分をやっつけちまおう」
笑ってそういい、今度は普通サイズの出刃包丁を道具箱から取り出した。いや、出刃包丁よりもまだ分厚そうだ。
「これが腹の部分の殻を切る専用の包丁だ。もしケンさんがこれを購入するなら売っている店を紹介するよ」
笑ったヴォイスさんの言葉に、まじまじとその出刃包丁を見る。
確かにこれは、普通の出刃包丁とはレベルが違う。
「是非購入したいので、お願いします!」
目を輝かせた俺の言葉に、ヴォイスさんは任せろと言ってドヤ顔になっていた。
「まずは、この腹側の真ん中部分に突き刺すみたいにして切り込みをいれ、一直線に切るんだ!」
海老の腹側の曲がった部分をダイさんとナフさんが引っ張って伸ばし、アレクさんが剥き出しになった腹側部分に出刃包丁を垂直に差し込んで、そのまま一気に引く。
ギギギと金属同士が擦れるような嫌な音がして、腹側の殻が見事に切り開かれる。
「あとはさっきと同じだよ。この身と殻の隙間にこいつを差し込んで、身を剥がしながら殻を引っ張って外すんだよ。ここも縁の部分に大きな棘があるから気をつけるように」
そう言いながら、三人がかりであっという間に殻を剥いでいった。
ちなみに取り出された胴体部分の身は、デカい車海老の胴体部分の五倍くらいは余裕であるデカさで、胴回りに至っては、俺の胴体なんかよりも遥かに太い。いや、ハスフェルよりもデカそうだ。
「これのお味は……ちょっと失礼しますね」
ドドンと目の前に置かれた胴体部分の巨大な身を見て、にんまりと笑った俺は胸元に装備していたナイフを抜く。
これはバイゼンで購入した積層鋼の波紋のあるナイフだ。
そのナイフで、身の部分を少し切り取る。
「では、いただきます」
プリップリの身は、歯応えもあってこれまた甘い。俺の知る伊勢海老の刺身なんかよりも遥かに甘くて美味しい。
「ううん、これで握り寿司を作ったら絶対美味いやつだ。よし、何匹か解体したら午後からは料理タイムだな」
「任せろ! 持ってきた分は全部解体して渡してやるからな!」
「なんならケンさんが市場で買った鎧海老も、渡してくれたら解体してやるぞ」
「アクアもする〜〜〜!」
「サクラもやりた〜〜い!」
「アルファもやりたいよ〜〜!」
俺の呟きを聞いて目を輝かせて笑ったアレクさんの言葉に、スライム達がいきなり張り切り出した。
「じゃあ、この子達も手伝ってくれるらしいので、全部まとめて解体してください!」
自分で収納していた、市場で購入した鎧海老を嬉々として取り出す俺の言葉に、アレクさん達は大笑いしていたよ。




