表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1122/2070

いっただっきま〜〜〜す!

「ええと、今夜はからあげ祭りです。これは一枚唐揚げ。それからあっちのお皿に他にも色々ありますので、良ければ好きなのをどうぞ」

 簡易祭壇に供えた自分のお皿を前に、手を合わせて小さな声でそう呟く。

「それから、さらにバージョンアップしたデザートのケーキも出す予定ですのでお楽しみに」

「それじゃあこれもそのまま供えておくか」

 ハスフェルの声が聞こえて、俺のお皿の横に大きな木箱が置かれる。

「うわあデカい。これがそのデコレーションケーキ?」

「おう、店で一番デカいのを買ってきたからな。まあどんなのかは開けてみてのお楽しみだ」

 にんまりと笑ったハスフェルと一緒に、俺も改めて手を合わせた。

 いつもの収めの手が俺の頭を何度も撫でて、それからハスフェルの頭も撫でてから巨大唐揚げを撫でまくってからお皿ごと持ち上げる。それから小鉢とおにぎりのお皿も撫で回したあとにいそいそと巨大な木箱を撫でまわし、がっちりと掴んで何度も持ち上げる振りをする。それから向こうの机に置いてある山盛りの唐揚げ各種を盛り合わせたお皿も、嬉々として撫でまくって持ち上げてから消えていった。

「あれ、絶対大はしゃぎしてたな」

「だな、手しかないのにはしゃいでるのが分かるって、ある意味すごいなあ」

 苦笑いしたハスフェルは、置いてあった木箱を一瞬で収納してしまった。

 そこで俺は重大な事実に気がつく。

「なあ、シャムエル様。俺が作ったデザートと、ハスフェル達が買ってきたデコレーションケーキの両方食う?」

「ええ、駄目?」

 当然食う気満々だったらしいシャムエル様の声に、俺は遠い目になる。

「一応提案なんだけどさあ。明日がお誕生日本番で、今日はいわば前夜祭だろう? それならデコレーションケーキは明日にして、今夜は俺が作ったデザートだけにしないか。そうすれば二日続けて豪華なケーキが食べられるぞ。何なら、その次の日は俺がまだ持ってるシフォンケーキとか、ハンプールで買ったあの全部乗せ巻きだっけ、あれを出しても良いよ」

「おおう、一気に食べずに毎日ケーキか。確かにそれは魅力的な提案だねえ」

 尻尾をプルプルさせながらシャムエル様が真剣に考え込む。

「確かにそっちの方が、ケーキを楽しめそうだなあ、いいじゃないかシャムエル。そうしてもらえ」

 横で聞いていたハスフェルもそう言ってくれたので、顔を上げたシャムエル様も俺を見ながらうんうんと頷いた。

「分かった。じゃあ今夜はケンのデザートをお願いします! それで明日は、ハスフェルが買って来てくれたデコレーションケーキね。明後日は、シフォンケーキと全部乗せ巻きを希望します!」

「よし、じゃあそう言う事で行くか」

 笑って頷き、自分のお皿を持って急いで席に戻った。



「ああ、待っててくれたのか。悪かったな」

 皆が当然のように食べずに待っていてくれて、俺は慌てて謝って席につく。

「もしかして、今、祭壇に一緒に捧げていたのが買ってきたケーキですか?」

 ランドルさんの言葉に、ハスフェルがドヤ顔になる。

「おう、そうだよ。だけどこれはケンと相談の結果、明日食べる事にしたんだ。俺の収納も時間停止だから安心していいぞ」

「あれ? それじゃあ今夜は……」

 それを聞いたアーケル君がものすごく残念そうな顔で俺を見る。

「あはは、もちろんあるよ。今夜は俺が作ったケーキの盛り合わせだ。色々あるからお楽しみに!」

 にんまり笑ってサムズアップしてやると、なぜか全員から拍手を貰った。そしてお皿を持ったシャムエル様も、当然のように俺のお皿の横でものすごい勢いの高速ステップを踏んでいたよ。



「で、どれくらい食べるんだ?」

 改めてお皿を埋め尽くしている巨大な唐揚げを見せると、真ん中あたりで半分に切る仕草をした。

「半分ください! それからあっちのは一通り食べてみたいから一個ずつ全種類ください!」

 予想通りの言葉に笑って、まずは巨大唐揚げを半分に切って大きい方をシャムエル様のお皿に乗せてやる。それから空いた場所に味の違う唐揚げを先に二個ずつ一通り取り分けた。

 多分、食うのは俺が一番遅いだろうから、無くならないように先に一個ずつ確保しておく作戦だ。

 多分、これだけあれば俺の分は余ると思う。全部は食べきれないと思うけど、まあ残ったら自分で収納しておけばいいもんな。

「はい、お待たせ。唐揚げ各種盛り合わせだよ」

「ふおお〜〜〜〜! これは素晴らしい! では遠慮なく、いっただっきま〜〜〜す!」

 そう叫んで、まずは半分に切った巨大唐揚げに頭から突っ込んでいき、ものすごい勢いで齧り始めた。

「あはは、肉食リス再びだな」

 その様子を見て笑った俺も、半分に切った残りの巨大唐揚げに大きな口を開けてかぶりついたのだった。



「ううん、これは確かに美味しい。そして食べた満足感が半端無いっすねえ!」

 あっという間に巨大な一枚唐揚げを完食したアーケル君は、空になったお皿に各種唐揚げを取りながらご機嫌だ。

 同じくハスフェル達もあっという間に巨大なあの唐揚げを完食してしまい、こちらは既に取り分けた山盛りの唐揚げ色々を爆食中だ。

 ランドルさんやリナさん達もほぼ完食直前。やっぱりこの世界の人達は食う量がおかしいと思うぞ。

 まだ半分近く残っている自分の巨大唐揚げを見て、既に半分の唐揚げを完食して次の唐揚げに突入しているシャムエル様の尻尾をこっそりともふりながら、ちょっと虚無の目になった俺だったよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ