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病み憑き  作者: 雪鳴月彦
第三部:風岡夏純 ①
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第三部:風岡夏純 2

 と言うより、この二つの行方不明事件が一つの事件としてまとまるのなら、そこに絡む共通点は真美以外にありえない。


(もし本当にばれてるんならヤバイじゃん……)


 嫌な予感が込み上げてくる。


「……とりあえずさ、担任に確認してみない?」


「確認って?」


 わたしが出した提案に、愛が首を傾げながら食い付く。


「一昨日、貴秀と何を話したのか。貴秀の様子が一気におかしくなったのがあの昼休み以降なのは、二人とも薄々気づいてるんでしょ? いなくなったのも、その後だし。一応調べる価値はあるんじゃない?」


「あー、まぁ、それは一理あるかもね」


 素直に納得する愛。


 だけど、そんな愛とは対極的に、慎重な面持ちで茜が口を開いてきた。


「でも、まだ暫くは様子見の段階で良いんじゃない? 連絡が取れなくなったって言っても、二日しか経ってないし。実は具合が悪くて家で寝込んでるだけって可能性もあるわよ? 真美の妹と状況が似てるっていうのは確かに気になるんだけど、現時点で結論を出すのは時期尚早じゃないかしら」


「……うん、その言い分はわかるけど」


 茜の言うことはもっともだけど、わたしの中にわだかまるモヤモヤを払拭してくれる程の効果はない。


 貴秀の家は絵にかいたような放任主義。


 彼が十四のときに再婚してくっ付いた義理の父は飲んだくれのヒモ男。


 母親はパートの仕事を掛け持ちし、常にイライラしている印象で貴秀には無関心。


 そんなんだから、ほんの数日息子が戻らないくらいは特に気にも留めない。


 学校からの確認の電話にも、本人へ確認を取るでもなく具合でも悪いんだろう程度の曖昧な返事を勝手にしたりしてしまう親だ。


 それ故に、きっと貴秀に今までとは異なる異変が生じていることなど家も学校もまだ把握なんてできていないはず。


「どうしても気になるなら、一度角田くんの家に行ってみたら?」


「え?」


「それで、家にいるかどうかまずははっきりさせられるでしょう?」


「それはそうだけど……」


 茜の提案に、参ったなという心地でわたしは口元を歪める。


 貴秀の家は当然知ってるし、遊びに行ったことだって何回もある。


 だけどそれは、三年前までの話だ。


 三年前に彼の母親が再婚して以来、わたしはあの家に近づいていない。


 新しく来た義理の父が家庭の中を重苦しい空気に変えたことで、近づくことが怖くなってしまったから。


「――わざわざ行かなくても、もう確かめてきたから大丈夫だ」


 返す言葉に詰まりかけていたわたしの代わりに、そう言葉を割り込ませてきたのは竜次だった。


 女子三人、同時にその声がした方向へ首を曲げる。


「正直、俺もあいつのことは気になってたからな。今朝、家に寄ってきた」


 空手でも習っていそうながっしりした身体をこちらへ近づかせながら、難しい表情を浮かべて喋る竜次。


「それで、どうだったの?」


 そんな友人を見上げて先を促すと、肩を竦めて見つめ返された。


「二日前から帰ってきてないとよ。母親と父親、二人揃ってそう言ってたから嘘ではないだろ。親たちはお前の家にでも転がり込んでんじゃないかって思ってるみたいだったぞ。ありゃ、暫くは捜索願すら出すつもりはなさそーな雰囲気だな」


「……」


 告げられた内容に、わたしは無言で視線を落とす。


 働きもせず酒かパチンコしか能のない義父。


 そんな男のどこを気に入ったのかわからない母親は、昔は穏やかで気さくなおばさんだった。


 それが今ではもう、目つきが変わり常にストレスを抱え込んで生きているような有り様。


 息子がいなくなったことにも頓着がないあの二人では、貴秀の身に起きた得体の知れない事態をつきとめる手助けにはなりそうもない。


 同じように親が離婚していても、まだわたしの方が恵まれているのだから皮肉なものだ。

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