第10話 ラグナ流
ここ二日間ほど、体力回復を計る為にほぼ動かずに過ごしていた。その間、武器の手入れをしたり、ゴブリンの肉を少しでも美味く食べることに力を入れていた。
武器は、この前の死霊騎士と死闘を繰り広げた時、最後の突きで破壊してしまったから、ゴブリンたちで集めていた予備の槍を使用している。
使っていると言いはしたが、実際にはまだ手入れくらいしかやっていない。
この部屋の扉は、重くて簡単には開けられないから、魔物がまず侵入することは不能。そうすると、必然的に槍の出番も無くなる訳だ。
料理の方は少しでも美味くしようと、ゴブリンフルコースを作ったら、この世のものとは思えない劇物が出来た。
あの肉に火を通すぐらいで、改善されると期待したのが間違いだった。肉の臭みを消すには、ハーブが必要だけどダンジョンで採取出来るわけもなく、持っていない。そんな状況で、まともな料理をしようとしたのが端から可笑しかった。とのことで、早々に諦める。
そろそろダンジョンからも出たいし、部屋の中央にある明らかに怪しい魔方陣を調べたい。だけどその前に、HPとMPが何処まで回復したか、見ておくか。
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フェルト 男 年齢:15 種族:ヒューマン
職業:農民Lv27/30
Lv21
HP470/470
MP115/121
筋力 89
耐久 26
敏捷 103
魔力 31
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さっきゴブリン肉を食べるとき、【水属性魔法】を使ったのを考えれば、多少MPが減少してるけど、完全回復出来たってことでいいよな。なら久し振りに、身体でも動かしてみるか。
槍を構え、突きや薙ぎ払いをし、身体の具合を確かめる。
(軽い!)
二日間前、筋肉痛で動けなかったときとは段違いに身体が動き、能力値が上昇したこともあって、以前以上に槍捌きが冴え渡る。
(特にスピードが突出してるな。)
能力値で敏捷だけが、三桁に上がっている。これは恐らく、死霊騎士とコンマ数秒の世界でやり合っていたから、敏捷の上昇量が高くなったのだろう。こうして、ステータスを再び閲覧すると、魔力の上がり幅が大きいことに気づく。
(魔力だけLvアップ前に見たときより、4倍にくらいなってないか?)
死霊騎士と戦う前に確認したときは、確か魔力が8だった。そして、現在は31で4倍近くに増えている。
最後の突きで、【魔闘気】や【魔力撃】等のMPを消費するスキルを使ったのが、今回一気に上がった原因だと思う。でもこの二つのスキルは使い勝手が悪くないため、これから使用していくことも考えると、魔力の上昇率が上がるのは有難い。
自画自賛するのもなんだが、俺は以前にも比べ強くなった。そして身体のリミッターを外せる今なら、記憶にあるが、身体能力的に使うことが無理だった、ラグナ流が使えるかもしれない。
ラグナ流とは4代目槍聖ラグナ=ファウストが作った槍術流派だ。このラグナ流は主に七つの型が軸となっていて、武術の全流派の中で断トツに難しいと言われている。
これを作ったラグナ=ファウストは歴史に名を残す大英雄。突きを放てば山が消し飛び、払えば大地は抉れ更地と化す。崇められる程の大英雄が使っていた七つの型。それがラグナ流だ。
ラグナ流は七つ型があるが、攻撃の型は三つだけ。
他の流派なら攻撃ばかりに片寄るはずが、ラグナ流は例外。攻撃以外の動きが四つ存在する。だが攻撃を含めて、常人では到底扱うことが不能な程の難易度。七つ全ての型が出来た人族は、二百年以上経っているが、本人を含めて今だ三人だと言われている。
この七つの型は順に、第壱の型[制空権]、第弐の型[朧]、第参の型[斬槍]、第四の型[瞬光]、第伍の型[柳]、第六の型[無極]、終末の型[天地神明]。これが大英雄の型。
今の俺に出来そうなものは、第壱の型[制空権]。ラグナ流は型の数字が大きく成る程、難易度が高くなっていき、終末の型[天地神明]が出来たのは僅か三人。
どれも一筋縄では行かないが、第壱の型がラグナ流では一番簡単。今ならこの第壱の型ぐらい挑戦可能な位の力はある。
第壱の型[制空権]脊椎反射を使用し、間合いに入った敵を攻撃する。簡単に説明すればこんな感じ。しかし、脊椎反射を自分の意思で使うのは並大抵のことではない。それこそ可能にするには、血の滲む努力が必要だ。だが習得することが出来れば、相手より一瞬早く動け、攻めに回りやすい。攻めに回れれば、それだけ有利に戦況が傾く。
これ程、高難易度の技を覚えるには練習相手が必要不可欠だ。魔物でも十分鍛練は出来るが、もうゴブリンの顔は見たくないから、やるにしても他の魔物で鍛練する必要がある。
さっきも言ったが、尚更ダンジョンから出る理由が増えた。なら、ここの部屋にもいい思い出はないし、早速脱出する準備を始めるか。




