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僕がずっと死にたかったのは。  作者: 青山葵
第1章 青き春

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青き春・終

回想、そして追想

 静寂。


 襲われかけていた所を僕が助ける事が出来て、今は少し安心している気持ちが強かった気がする。


 僕は茉姫奈に部屋を貸した。茉姫奈は「そんなの悪いよ」って言ってくれたけど、僕が何故かそうしたかったから、無理やり貸した。

 静かなのに、何故か頭の中ではピアノの様な旋律が流れていた気がした。


 薄い鉛筆で丁寧になぞるように精緻で、綺麗な音が、聞こえもしないのにずっと頭の中で反響する。


 リビングのソファーで毛布と一緒に無防備に横たわっている僕は、ずっと変わらなかった昨日と、偶然が重なって変わった今日と、昨日の様な生産性もない人生が始まってしまうのでは無いのか、という不安感に駆られていた。


 見える色も、そこから溢れる感情も、結局は僕だけがみているだけに過ぎなくて、皆からみたら偽物で、境遇も、紡いでいる今も──汚ればっかりで。


 僕は、変わっていく世界が怖かった。


 辛うじて息が出来ている世界が、僕をいつの間にか息が出来なくなる所まで行ってしまうのではないかと、そんなことばっかり思っていた。


 ぽっかりと空いた何かが満たされなくて。


 何が理由で自分をまだ動かしているのか。


 何かある筈だ。


 だが、1番思い出したいことが思い出せなくて、自分でも呆れた。


 いや····死にたい理由はその思い出せない『何か』そのものなのでは無いのか?


 急に、そう思い立った。


 死にたいのに死にたくなくて、死にたくないのには、病的なまでに生に執着する何かが。


 そもそも、今の医学では、死に恐怖する感情そのものが病気とまで言われている。


 死恐怖症(タナトフォビア)──結局何の感情でも病名が付けられる世界だ、けれど死という恐怖が欠如している人間もきっと病的な何かなのだろう。


 でも、死にたくないっていう人間の方が大多数を占めているのは明らかで、死が近いと言われたら必然的に正気じゃなくなるのが、人間の本能的に当たり前の行動だ。


 だから、僕は正常だ。


 正常だと、言い聞かせて──死にたい気持ちを今も探している。


 そして、死にたくない気持ちも。


 単純に、死ぬのが怖いっていう理由なんて、たかが知れている。


 ずっと死ぬのが怖いから死にたくないという気持ちがあったのに、今は何故か腑に落ちなかった。


 何かがおかしい、おかしいのだ。


 本当の理由は別にある。きっと。


 思い出せもしない偶然を探るみたいに、茉姫奈の笑顔が浮かんだ。


 女性不信とか、女性恐怖症だと思っていたのに、きっかけ1つでそんな簡単に茉姫奈の顔が思い浮かぶ自分の意思も薄弱。


 もう1回、灰を被るように布団を深く被った。


 消えそうな心を必死に消さないように。


 僕は、そのまま沈んで行くように目を閉じた。


1章終了です

2章目もぼちぼち読んでください

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