甘い香 2
とうとう恐れていた時期に入ってしまった。
身体が熱くなり、動悸が激しくなる。
-発情期-
ザットに見つかれば何をされるか分からない。
それに私の理性もおかしくなっているから何かしてしまう事も考えられる。
シュースに連絡して時期までは休みを取ろう。
そして彼に私を寄せ付けない様にしてもらわないといけない。
部屋の隅で毛布をかぶり膝を抱えうずくまる。
妖精たちの発情期はそれぞれで、女と男で好みの香りが合えば
対となる。もちろんお互いが愛し合って対となる事もある。
毎回この時期は自分が変になるのが嫌で家で過ごしているが、
今回はやはりザットの事を考えれば恐ろしいのだ。
今までの事を思えば自分に向ける感情が何かも分かっている。
ここで会ってしまえば、自分が自分でなくなる事も怖いのだ。
終わるまでは・・・・。
「なあ、シュース、今日リンツいないみたいだけど何かあったの?」
「体調が悪いみたいで家で寝てるよ。」
ザットが心配そうに聞いてくるので答える。
発情期だとは言わないけどな。
「そうか。残念だな。」
おいおいここは見舞いにいきたいとかぐいぐいくるとこだろ。
いつもの調子はどうしたんだ。
よし、しょうがない。
「あいつすごい体調悪くても仕事するし、今日はよほどの
事があったかもしれないからさあ。俺急ぎの仕事があって、
代わりに様子見てきてほしいんだけど。これ家の鍵、きっとあいつ
お前を頑なに家の中入れなさそうだし、
緊急用に渡されたものだから使って家の中に入ってくれていいよ。」
しらじらしく渡すが、後からものすごくリンツから怒られそうだな。
「それは心配だな・・・、分かった。」
家に勝手に入ることに抵抗を感じたのか、
顎に手をやり一瞬考えたみたいだが、心配と会いたい想いが勝ったな。
俺がリンツの家までの簡単な道のりを教えたら、すぐに鍵を持って走って行った。
悪く思うなよ、リンツ。素直になれないお前を見ててイライラしてたんだよ。
まあ後はザット次第かな・・。
続く