7話 「突然変異体」
俺たちは昨日、ギルドで最近起こっているある"異変"について話し合った。ネオゴブリンのような魔物の突然変異体が最近になって、急に姿が多く確認されるようになった。そして、新たな情報により魔物が以前よりも人間界に近くに出るようになったそうだ。そこで、俺らはギルドに行き情報収集をすることにした。
「こんにちは。ユウキさん」
「あのー、突然変異体について情報が欲しくて、最新のありますか?」
「突然変異体のことですね。最新情報はいくつかあります。しかし、その前にお願いがありまして」
「はい?なんですか?」
「突然変異体の調査依頼を受けてほしいと、ギルド本部からの伝達で」
「俺たちに?」
「はい。ユウキさんは『強き者』を持っていますし、最近変異体に会いましたよね?」
「まあ、そうですけど」
「まあ丁度調べようとしてたんだから、いいんじゃねえの?」
「ま、そうだな。じゃあその依頼受けます」
「ありがとうございます」
俺らはまだそこまで実績もないのになんで?確かに俺が『強き者』を持ってるよ?でもそれだけで推薦みたいにされるか?
「でも、そのクエスト確かランクBではなかったですか?」
「はい。そのとおりです」
「それなら、私たち受けられないじゃない。だって今はパーティーランクEよ?Cまでしか受けられないじゃない」
「そうなのか?」
「説明してなかったか。基本的なクエストはランクの2個上までしかうけられない。だから、俺らは今Cランクまでしか出来ない」
「なるほど」
「あと、経験値も説明しとくか」
経験値もあんのか。ゲームみたいな設定もあんのか。
「同じランクの魔物ばかり倒していても、ランクは少しずつ上がる。だが、自分たちより格上の魔物を倒した方が、昇格はずっと早い」
「なるほど、だからみんなランクより上のクエスト受けんのか」
てことは、今俺らはギルドの依頼を受けられないのか?じゃあどうすんだよ。おいギルドのお偉いはどうなってやがる。しっかりそこまで確認しやがれ。
「ギルド側の処置として、貴方達のパーティーランクをDに引き上げました」
「本当ですね。確かに上がってます。でも、そんなすぐあげてもいいんですか?」
「今回は特例です」
「なるほど」
ギルドはどうしてそこまでして、俺らに頼みたいんだ?俺らよりランク上の冒険者なんてそこら辺にいっぱいいるだろ。そこまで『強き者』はすごいのか?でも、それぐらいしか考えられん。
「じゃあ、大丈夫ね」
「そうですね」
こうして俺らはギルドから、依頼を受けた。突然変異体の謎は深まるばかりだ。
「では、変異体の最新情報をお渡しします」
「はい」
「突然変異体にも種類があることがわかりました」
「種類?」
「はい。今まで確認されてきたような突然変異体と異様に強力な変異体が確認されています。前回ユウキさん達が打ち倒したネオゴブリンは通常の突然変異体だと思われます」
俺らが前戦った、ネオゴブリンが?そんなバカな。俺でも少し苦戦したんだぞ?ふざけんなあれで?通常?まてよ?魔王軍幹部ってどんだけ強いんだよ。カイルがすかさず質問をした。
「その強力な突然変異体は何が原因なんだ?今までそんなものは聞いたことない。ってことは誰かが無理矢理作ったのか?」
「今、私たちが持っている情報ですとその可能性が高いそうです」
「なるほど。やっぱりそうだったか」
「すいません。渡せる最新の情報は以上になります。それではお気をつけて」
「はい、ありがとうございました」
誰かがって誰がだよ。そんなバカみたいなことやってるバカは誰だよ。鼻くそでも食ってそうだな。
「一旦、ギルドで確認をしてから調査に行きましょう」
「そうだな」
俺たちはギルドの空いている席へ移動し、向かい合って座った。正面にはレオン、その隣にはカイル。俺の隣にはミアが腰を下ろす。足元には、デュラの入った袋をそっと置いた。肩にはグムを乗せている。今日は昨日に比べて冒険者も少なく、大声で喋ればみんなこっちを向きそうだ。
「それじゃあ、さっきお姉さんから聞いた情報を整理しよう。カイル、頼んだ」
「あぁ。えっと、最近になって突然変異体に新たな種が生まれた」
「確か、普通のよりも強力なんでしょ?」
「そうだ。そして、その強力な変異体は何者かの手によって作られた説が濃厚だ」
「でも、誰がそんなことすんだよ」
「俺の考えでは魔物側の人間、もしくは知的型魔物の可能性が高いと考えてる」
「魔物側の人間っていんのか?」
「いないわけじゃない。実際にアーメリーという街は魔物と人間が共存している」
「魔物と人間がか?」
魔物と人間が共存できんのか?…いや、待てよ確かグムが「知的型には友好的な奴が多い」みたいなこと言ってたっけ?
「まあ、共存と言っても知的型しかいないがな」
「そうなんだ」
「では、とりあえずその強力な変異体を作り出している何者かを探せばいいんですね?」
「そうだな」
「そうとなれば、決まりね。早く森に行きましょ」
「まて、ミア」
「なによユウキ。ビビってんの?」
こんなに弱いのに戦闘好きな回復役いるか?いや、ここだけにしかいないな。頭狂ってるんか?
「ちげぇよ。昨日の確認すんだよ」
「仕方ないわね。早くしてよね」
なんか出会った時と同じ感じに戻ってね?なんで?嫌われた?ショックなんですけど。今日終わったらまたあの店行くか。
「えっと、それじゃあ昨日の確認をする」
みんなが一斉に頷く。
「じゃあまずはカイル前に出て魔物の攻撃を受ける囮役となる」
「そあだな」
「で、次に俺が攻撃を仕掛ける。それでも倒せなさそうな場合はレオンも攻撃をする」
「わかりました。ただ、ユウキさんが攻撃している間は何をすれば良いですか?」
「スキルで補助的なことをしてくれ。このパーティーには魔術師がいないからな」
「わかりました」
「そして、ミアは1番後ろでみんなの回復を頼む。もしも、苦戦していそうならデュラに攻撃の合図を出してくれ」
「わかったわ」
あとはグムだな。うーん、グムはどうせ攻撃できないだろうしまあ魔物を観察してその情報を渡すとかでいいか。あいつ、見る目だけはあるからな。
「じゃあ、グムは魔物の情報提供をしてくれ」
「おっけー」
よし、これで俺の完璧な作戦が出来上がったな。これでネオゴブリンの時のような失態は犯さない。
俺たちはギルドで作戦会議をし、俺はグムを肩に乗せ、デュラの入った袋を持ち、街を出て大東森へと向かった。
「ネオゴブリンよりも強いって、私たち勝てんの?」
「うーん、まあ俺がいるし平気だろ」
「でも、ネオゴブリンの時は吹っ飛ばされてたじゃん」
「油断してたんだよ。もう、油断はしねぇよ。俺はバカじゃないから2度も失敗はしない」
「どうせ、そんなこと言ってまたやられるんでしょ?」
何こいつ?また性格変わったか?にしても本当うるせぇな。躾のなってない犬かよ。と、言ってたらもう大東森に入りそうだな。大東森に入ってすぐにグムがおかしなことを言い始めた。確かに、いつもおかしなことしか言ってないが、いつものおかしなこととはちがう。
「なんか、昨日入った時よりも魔力が揺らいでる」
俺はグムがそう言った時、全く意味を理解できなかった。恐らく、みんなもそうだったであろう。
「どいうことだ?」
「魔力の流れが変わったってことだ」
「は?」
「だから、この森の雰囲気が異様だって言ってんだ」
「そうか?別になんか変わったか?」
「ふんっ、どうせバカにはわかるまい」
「誰がバカですって?いつもリスのくせに生意気だとは思ったけどここまでだったとはね!」
「わからねぇ方が悪りぃんだろうが」
「まあ、そこまでにしましょう。今は依頼を受けている最中ですから」
レオンがいつものように喧嘩の仲裁に入ると、グムが突然木に飛び移った。
「何してんだ、グム」
しかし、返事はない。
「おい、聞いてんのか?」
するとグムはいつもとはちがう口調で静かに言った。
「一旦、全員黙れ。なんか気配を感じる」
気配ってなんだよ。でも、こいつの勘は意外と当たる。
「なんか、いるぞ姿が見える。全員木の影にはいれ」
「わ、わかった」
俺たちはグムの言う通りに木の陰に入り込んだ。
「みろ、魔物が群れをなしてる。しかも、種類が違うやつとも一緒にいるぞ」
「それって変なことなのか?」
別に群れをなすくらい生き物ならするだろ。
「えぇ、普通の魔物は種類によりますが群れをなしません。ましてや他の種と一緒にいるなんて考えられません」
「え、群れをなさないのか?」
「あぁ。特にこのデストゴンとガブヴァルは単独行動を好む魔物だ」
「まじか」
この説明を聞けば誰でもおかしいと気づけるはずだ。まさかこれが強力な突然変異体か?
「どうすんの?殺すの?」
「いや、少し待て。しばらく観察する」
俺らは魔物の観察を始めた。デストゴンは四足歩行で緑色の鱗が全身を覆っている。歯が鋭そうだ。見るからに凶暴そうだ。ガブヴァルは体毛があり、全身が赤い。嘴があり、鋭い。少し、観察してわかったが巣がありそうだ。主に、ガブヴァルとデストゴンのメスっぽい方が巣を守っている。一方でデストゴンのオスらしき方は巣の周りを警戒しているように見える。
俺は小声で
「おい、グム。デストゴンの方が強いのか?」
「そうだ。デストゴンはDランクでガブヴァルがEランクだ」
だから、デストゴンのオスは1番前線にいるのか。
「やっぱり、異様だな」
「なんか、わかったのか?」
「あの2種は普段は敵対するような関係だ」
「そうなのか。てことはやっぱ突然変異体の集まりか?」
「可能性はある。ただ、魔力を見るとネオゴブリンよりも個々の強さが圧倒的に弱い」
「え?こいつらは強力な突然変異じゃないのか?」
「そうみたいだ」
「意味わからんわ。何が起こってんだよ」
「それを探りに来たんだろうが」
確かに。そらそうか。初めてこいつにまともなツッコミをされたな。
「どうすんの?このまま観察してるわけにもいかないでしょ?」
「なんでだ?」
「は?だって、私たち冒険者は野良の怪物型魔物はからないといけない義務なのよ?」
「そうだったよか」
「はあ。どうやって今まで生きてきたの?」
めんどこいつ。
「ま、ミアの言う通りだな。そろそろ観察は終わりにして、殺るか」
「敵は何体ぐらいんのか?」
「ざっと20ぐらいだな。合わせてランクはCってところかな」
「わかった」
「では、俺が先にでる。その後に──」
「俺がいく。気をつけろよカイル」
「あぁ」
そして、カイルが木の影から飛び出した。それに気づいた5体のオスデストゴンらは一斉に攻撃をカイルの盾目掛けて放った。攻撃は噛みついたり、尻尾での攻撃だ。さらに、数体のデストゴンのオスとガブヴァルのオスが気づき、カイルに攻撃をしようとしたところで俺が攻撃を仕掛けた。
「『風魔法 エアスラッシュ』」
その瞬間に風の刃が出てきて魔物をシュッシュッと鮮やかに切り裂いた。しかし、魔物も怯むことなく襲いかかってくる。
「レオン、いまだ!」
俺がレオンの名を叫んだ瞬間にレオンは木の影から飛び出て魔物を一体ザシュッと音と共に切った。カイルが倒しているのと合わせればもう10体は倒したであろう。そして俺らは順調に倒していき、全ての魔物を倒した。しかし、巣には卵があった。
「これはデストゴンとガブヴァルの卵だ」
「結構いい値段で売れるぞ」
「そ、そうか。なら持って帰るか」
まあ、この前の火災のせいで、どこかに行ってしまったデュラの卵の殻の代わりだな。
「一度帰って、ギルドに報告しましょう」
「そうだな」
俺は足早に街へと向かった。カイル曰くこの事象は聞いたことがなく新しい情報になりかねないため、早めにギルドに報告する必要がある。
街に到着し、ギルドに駆け込んだ。
「お、お疲れ様でした。中々お早いお帰りで」
「お、お姉さん。もしかしたら、新しい情報を発見したかもしれません」
「本当ですか?」
「あぁ。俺も聞いたことない事例だった。変異種なのかわからんがデストゴンとガブヴァルが群れをなしていた」
「えっ!?そんなことが?それはどの辺で?」
「大東森に入ってすぐだった」
「なるほど。では上のものに報告しておきます」
「ありがとうございます」
やはり、カイルの言った通り初の事例だったらしい。しかし、やはり謎が深まるばかりだ。
「カイル、次はどうする?もう一回大東森に入るか?」
「それもありだが…もしかしたら手がかりがある可能性がある街に行くという手もある」
手がかりがある街ってなんだ?どんな街なんだ?
「そこはどこだ?」
「共存都市『アーメリー』だ」
「『アーメリー』?共存都市?」
なんだそれ。共存ってことは人以外がいんのか?
「ほんと、なんも知らないんだね。いいわ、私が説明してあげる」
「あ、いや、いいです。俺はカイルの説明の方がわかりやすいと思うんだわ」
「ひどくない?私が説明下手みたいなこと言って」
「だから、そう言ってるんだよ」
「もういいわよ!」
あ、やべ。少し言い過ぎたか?まあ、こいつの説明が下手なのが悪い。
「あーあ。怒ってどっか行っちゃったよ」
「お前はだまれ、クソリス。ためになることを話せねぇのか?」
「まあまあ。ミアはまだ、心は子供っぽいですから。仕方ありませんよ。でも、あれでも一応みんなのことを考えてやってるんですよ。だから、責めないであげてください」
「わ、悪かったな」
「それはミアに言えよ」
「お前は黙っとけ。お前の声聞くだけで頭おかしくなりそうだ」
「あっそ」
くそ、どいつもこいつも自分のことばっか考えやがって。いや、レオンはそんなことないか。あーでもムカつく。
「レオン、お前はいい奴だな。誰のことも責めないし、みんなのこと考えてる。ま、だからリーダーなんだろうな」
「そ、そんなことないですよ」
少し、レオンは照れたような表情をした。
「私だってイラッとくることだってムカつく時だってあります。それでもみんなのことを思い出せばそんなの吹っ飛びますよ。ただ、それだけです」
それだけ…か。今の俺には到底できないことだな。
「ユウキさんはここ最近、突然変異体についてよく調べていましたね。その疲れもあると思いますよ」
疲れか。確かに最近は朝方まで考えてたな、戦術や突然変異体のこととかスキルの使い方とか。でも、それじゃあみんなを救えないじゃないか。
「1人で抱え込まないでくださいね。何かあれば相談に乗ります。だって私たちは仲間でしょ?ユウキ」
「そ、そうだな。確かに少し1人で考えすぎたかもな。ありがとう、レオン」
「おい、グムさっきは悪かったよ」
「別に怒ってないよ」
「じゃあなんだよ。いや、なんかいうようになったなと思って」
「は?何言ってんだキモい奴」
ミアはどこに行った?仕方ない、謝りに行くか。じゃないと先進めないもんな。俺はレオン達をギルドに残し、ミアを探しに出た。




