5話 「成長」
「うーん」
俺が目覚めるとそこは冒険者ギルドだった。
そういえば昨日、盛り上がって飲みまくったんだっけ? 今は何時だ? 頭いてぇ。
「お、やっと起きたか。寝過ぎだぞユウキ。もう昼過ぎだぞ」
あー余計頭が痛くなったわ。朝からうるさい声出しやがって。
(うん? いま、昼過ぎって言ったか? まあ気のせいか)
「おい、早くクエストするぞ! 昨日のせいで金が全然ねぇぞ。まあ、お前がいなかったから宿代浮いたけどな」
「それにしても、飲み過ぎよ。それで具合悪くなって、クエストできなくなったらどうしてくれんの?」
(リスもこの頑固女もうるせぇ)
「ミア、お前俺が心配なのか? たく、顔は可愛いのに性格は可愛くないやつ」
「は? 褒めてんの? けなしてんの?」
酔っててよく顔が見えなかった。
「みなさん、クエスト受けてきました」
「なんのクエスト?」
「えーと魔物ランクDの土モグラです」
「土もぐらかぁー。あれ目ないのに攻撃が妙に当たるのよね」
「多分魔力探知が優れてるんでしょうね」
頭がポワポワする。たく、こちとら初の酒なんだわ。
(え? 未成年だって? 安心せいこの世界は15が成人だ。だから15以上なら誰でも飲める。ちなみに俺の年齢は17でパーティ最年少。そんなのどうでもいいって? うるせぇ、せっかく説明してやったのに)
「ユウキ、いくら初酒だからって早くクエスト行くぞ。お前がいなきゃこいつら死ぬぞ」
「そこのリス! 誰が弱いですって?!」
「いや、弱いとは言ってないやん」
「屁理屈言うのね、リスのくせに」
「なんでこんなに俺って舐められんの?」
「へっ? なめられる? 俺も舐められたーい」
「な、なにいってんの! この変態!」
そして俺は思いっきり頬をビンタされた。
「あちゃー。変なこと言うから。でも酔いは覚めたんじゃない?」
「はい、覚めました。ありがとうございました。それでは行きましょう」
「いや、賢者になっとるやん」
「あ、あとすいません。私、武器ないです」
「はぁ? なんでよ。そんな冒険者いる?」
「だから、今から買いにでも行こうと思いまして」
「はぁ。本当あんたのせいで時間が無くなるんだけど!」
「す、すいません」
ユウキたちは急ぎ足で武器屋に入った。
「おやじ、なんでもいいからいい剣くれ」
「なんでも良くないやん」
「これなんかどうだ? 2万ガナドだか、中々にいい剣だぞ」
「じゃあそれで」
「いいの? そんなに高いので」
「俺は金ならいっぱいあるから」
「はぁ? それは私たちのおかげでしょ?」
(うるさいなぁ。なんでもいいだろ、口出しすんなこのクソ女)
「まいど!」
これで武器も揃った。完璧だ。俺の英雄になるまでの一つのピースが埋まった。
街は一度はいれば冒険者資格さえ見せれば出入り自由だ。クエストのため街からユウキたちはでた。
「クエストの場所ってどこ?」
「ニーホの東にある大森林大東森の入ったとこすぐだ。ここはめっちゃでかい森だから、迷いやすいからはぐれるなよ」
「まあお前は俺の肩に乗ってるから、偉そうな態度取れるもんな。俺がお前下ろしたらすぐ迷子だな」
「いや、俺は魔力探知力は高いですー」
「へーそうなんだ。"魔力探知力は"ね」
「うざ」
「てか、質問なんだけど、ランクってなんだ?」
「あ? ランクか? 説明してなかったか?」
「されてねぇよ」
「悪りぃ悪りぃ」
(絶対悪いとおもってないな)
「まず、冒険者ランクと魔物ランクがある。どちらもF~Sまである。そして、お前の冒険者個人ランクはFだ。まだ駆け出しだ。基本的には、自分のランクの2個上までしか受けられない」
「なるほど。個人てことは、パーティランクもあるのか?」
「よく、気づいたな。その通りだ。個人ランクとパーティランクは少し、違う。パーティの人の総合ランクだ。レオン、今はパーティのランクはなんだ?」
「えーとですね、今はEランクです」
「それって強いのか?」
「い、いや弱いです」
「あ、そ、そうか」
「これがランクだ。わかったか?」
「うん」
(なんか色々覚えんのも面倒だな。てか、俺って炎魔法と回復魔法以外何持ってんだスキル)
「俺ってなんのスキル持ってんの?」
「はぁ? そんなのもしらねぇのかよ」
「お前、なんでも教えるっつったよな」
「はぁ。仕方ない。前説明した炎魔法と回復魔法は覚えてるな?」
「うん」
「それ以外に風魔法エアスラッシュ、水魔法アクアスプラッシュ、岩魔法ロックキャノン、高速移動魔法ハイスピードがある。もちろん全部詠唱が必須だ」
「なんで、炎魔法だけ名前おかしいんだよ」
「知るか」
まあいいか、なんでもそんなことより森が近づいてきた。本当にでかい森だ。先が見えない。
「つきましたね。それでは土もぐらを探しましょう」
(もぐらって強いのか? もしかしたらもぐらじゃなかったり? それだったら名前つけたやつ見つけ出して、名前変えさせてやる。うん? なんか地面が揺れてる?)
「来るぞ!」
そう、グムが叫ぶと地面からでっかい真っ黒の毛に覆われたモグラが出てきた。爪が長く、いかにも危険そうだ。
「これが、土もぐらか。今回は名前通りだな」
目は本当についてなさそうだ。すると、とつぜん爪を振り上げてきた。
「やばい! 避けろ!」
なんとかみんな、避けれたみたいだ。しかし、中々の威力だ。木が一本折られた。
(よし、炎魔法で燃やして尽くしてやる)
とおもった瞬間、土もぐらは地面に潜った。
「くそっ、逃げやがった」
「いや、ユウキさん逃げたのではありません。攻撃準備です!」
「俺がまず盾で土モグラの攻撃を防ぐ」
カイルは盾を持ち直し、前に出た。
「レオンとユウキは後ろで待機して、出てきたところを攻撃だ。ミアはさらに後ろで回復魔法を使ってくれ」
「わかった」
「わかったわ」
(カイルは戦闘の指示役なのか)
すると地面が揺れ、土の中から、もぐらが飛び出しカイルに攻撃した。カイルは飛ばされた。コントのごとく。
「行いますよ、ユウキさん!」
「お、おう!」
「おりゃああああ」
レオンは思いっきり剣を振りかざした。しかし、モグラに当たったにも関わらずもぐらはなんの反応もないというか、反撃してきた。このままではまずい、レオンがやられる。
「くそ、これでも喰らえこのデブもぐら!」
俺は剣に魔力をためそこに炎魔法 ウォータークールを発動させ、剣に炎を纏わさせた。そのまま剣を振り上げ、もぐら目掛けて一直線に剣を振り下ろした。
ゴォォォォォっという音と共に、もぐらはズドォォオンッと倒れた。
「ユウキさん、また助けてもらってしまいましたね」
「いいんだよ、いまやばかっただろ?」
(あれ? またグムがいない。なんでだ? まあいいか)
「とりあえず、クエスト完了だな」
「そうですね、またしてもユウキさんのお手柄ですね」
「まあな」
「本当調子のいいやつね」
「は? 俺いなかったらお前も死んでるぞ」
「いや、私がすぐにカイルを治して、きっとレオンがやられる前に倒せるわよ!」
「じゃあ俺なしでもう一回同じクエスト受けるか? てか、カイルまだ治し途中じゃねえか!」
「あ、あんたのせいで傷が深くなったのよ!」
「おい、お前ら俺を巻き込むな」
(この女どこまで性格尖ってんだ? まあニーホに帰って、報酬多めに貰お)
「おい! ユウキ達! 油断すんな!」
グムが突然現れ、俺たちに向かって叫んだ瞬間、目の前にムッキムキのゴブリンのような奴が現れた。俺は間一髪で剣で対抗したが、そのままドォォォオンと吹き飛ばされた。痛みは感じないが少し衝撃が来た気がする。これは明らかにさっきのやつより強い。速さも段違いで、衝撃のせいか地面が少しえぐれている。
「やばい、ネオゴブリンだ! ゴブリンの突然変異体だ! ゴブリンの数倍の強さだ! 魔物ランクB以上はあるぞ!」
「く、くそ。ユウキさんまでやられるとは。カイルの言う通りこの魔物はネオゴブリンだ! 一旦退避!」
しかし、ネオゴブリンはおってくる。
「くそ、追いつかれる」
「もうやるしかなさそうですね。ユウキさん! いけますか!」
「あぁ。もちろんだ!」
もう一回さっきみたいに剣に魔力を込めてそこに炎魔法ウォータークールをかける。剣に炎が纏い、剣は銀色から真紅へと変わっていった。
(もぐらを倒したみたいにやればきっと)
俺はネオゴブリンと向き合う。そして一直線にネオゴブリンの方に突っ込んだ。
「おりゃああああ」
切った感触があった。
(よし)
とおもったが、切れたのは腕だけだった。まずい。とおもった時にはもう遅かった。ネオゴブリンのもう片方の腕が俺の腹に命中した。木々を倒しながら思いっきり飛ばされた。気づいた時には数十メートル飛ばされていた。
「くそ、痛くねえがここはどこだ? 一瞬で飛ばされたからわからん。木が倒れているところがあるからそこの方面からきたのか」
(あいつらは平気だろうか。いや、あいつらならすぐやられる。早く行かなくては)
ってあれ? なんで? 足が……動かない? 震えてる。
(まさか俺は怖がってんのか? こんな最強能力を持っておいて。そんなのありえんだろ。くそ、何やってんだよ。また、あの時みたいに大切な人を見殺しにしていいのかよ)
あの時、俺は目の前で見てたんだ。あいつがこどもを庇って死ぬところを。
学校の帰り道だった。いつも通り馬鹿げた話をして盛り上がっていた。けど、スマホを見ながら運転してたクソじじいが信号を無視して、横断歩道に突っ込んできた。そこにはまだ小学校にもいってなさそうな子が渡っていた。
あいつはそこに迷わず走っていった。俺はそれを止めようとした。でも止められなかった。
そして、駿は車にはねられた。
子供は擦り傷で助かった。でもあいつは……死んだ。俺の目の前で。
あの時、俺はどうするべきだったのかは今でもわからない。ただあの時俺は行動するより先に考えていた。多分駿は、考えるより先に行動した。
(俺はまた失うのか? また、踏みとどまるのか? 逃げるのか?)
いや、誓ったはずだ。もう、踏みとどまらないと。
俺はずっと、あっちの世界でも考えてた。本当の強き者は何なのか。こっちの世界で最強のスキル『強き者』を手に入れた時、これこそが最強ということだと思っていた。でも違った。
本当に強くないといけないのはーー
俺は胸に手を当てた。
(ここだったんだ)
俺は震える足を、手で無理矢理制止させながら立った。
(俺が行かなくてどうする。俺は勇者だ)
その言葉で俺は足の震えが止まった。
ふぅぅー。
肺にできるだけ多くの空気を取り込んだ。空気が肺に流れ込む。肺胞で酸素が血液へと溶け込み、逆に血液中の二酸化炭素が肺へ移る。その流れを意識しながら、ゆっくり息をほぉぉーっと吐いた。
(よし。俺の仲間を助けに行かなければ)
脚に魔力を思いっきりかける。
「高速移動魔法 ハイスピード」
そう唱えると高速で走れるようになり、俺が飛ばされてきた道を高速で戻った。そして、ネオゴブリンらしき姿が見えた。剣を構え、スキルの準備をする。そして、一気に飛び上がる。
その一瞬でレオン達、俺のパーティがみんな血を出して倒れていた。
「よくも、俺の仲間を傷つけてくれたな。このクソブス、脳筋!」
ネオゴブリンも声に反応する。赤い瞳がキラッと光こちらを睨みつけた。しかし、見るからに少し弱っているようにも見えた。
(だが、今はそんなこと関係ない。仲間の仇を取る。あの時のようなことはくり返さない!)
ネオゴブリンが片手で防御体勢に入る。もう一方の手で攻撃をしようとしてくる。
「遅延魔法 ゾーン」
そう唱えるとネオゴブリンの動きが遅く見えた。
(これならいける)
俺は今までにないスピードで剣を振りかざす。しかし、何とかネオゴブリンも避ける。すかさず俺は、地面を思いっきり踏み込んだ。地面がえぐれるくらいに。相手の拳を避けながら相手よりも早いスピードで剣を振った。
そして切ったときの音よりも、切った時の感触の方が早かった。
ザシュッッッといってネオゴブリンの上半身は切られ、ドンッッッと言う音と共に上半身だけが下に落ちた。下半身だけはまだ切られていないかのように立ち尽くしていた。上半身からは腸などの臓物が出てきて、くぼんだ地面に血の海が広がっていた。下半身は遅れて切られたことに気付いたかのようにパタンと音を立てて倒れた。そこからも大量の血が出てきた。そしてそこに小さな魔物が群がり始めた。
俺は小さな魔物の群れを剣を一振りしただけで殺した。
「レオン、大丈夫か?」
「ユ、ユウキさん。またしても倒してくださったんですね。しかし、すいません。もう長くないようです」
「大丈夫だ。死なせたりはしない。俺だって回復魔法ぐらい使える」
「この傷では通常の回復魔法では無理でしょう。私たちは弱いにも関わらず2年も続けられました。今までは運が良かっただけです。もう潮時なのです」
「安心しろ。俺はそう簡単には諦めないよ」
魔法は魔力を込めれば威力があがる。ということは回復魔法も同じなはずだ。魔力を手に全力でかけた。
「ヒーリングッ!」
と思いっきり叫んだ。
すると、辺り一帯が緑色に激しく光り始めた。
光が止むと、
「あ、あれ? 生きて、る?」
レオンの声がした。
(良かった。助けられた。今度は助けられた)
しかし、ミアとカイルには魔法をかけていない。
(まずい)
と思った瞬間、
「痛い、あれ? 痛くない? あれ、私助かったの?」
ミアの声だ。
「助かったのか」
カイルの声だ。
(良かった。みんな無事だ)
すると、グムとデュラが来た。デュラも戦ってくれたのか。だから辺り一面が焦げてたのか。
「あれ? でも何でデュラが攻撃したのにあいつ死んでなかったんだ?」
「あのネオゴブリンは炎耐性があったぽいな」
(なるほど。だから炎を纏わせた剣が効かなかったのか)
「てか、グムは平気なのか?」
「あぁ。まあ俺は木の上にいたから」
「ぶ、無事ならいいんだ」
「ユ、ユウキさん。この度は本当にありがとうございました!」
「おい、レオン。いや、リーダー。俺はもうこのパーティの一員だぜ? 助けて当然だろ? それに俺の方が下っ端だから、さん付けとか敬語使わなくていいんだよ」
「そ、そうですね」
「ほら、また敬語だ」
「あ、本当だ。癖で」
「まぁでも、敬語使う方がなんかリーダーぽいな」
「ユウキ、さっきはごめん」
「何がだ?」
「さっき酷いこと言って」
「まあ、さっきだけじゃないけど俺もムキになりすぎた、俺も悪かったよ」
「でも、私が先に喧嘩売ったし」
「仲間だからそういうことがあるくらいが丁度いいだろ?」
「それもそうね」
(今初めて俺の意見にミアが賛同した)
「すまん。ユウキ。俺はあんたのこと調子のいいガキだと思っていたが、それは訂正しよう。やる時はやるガキだったな」
(ガキは変わらないんかよ)
まあいい、こうしてみんなの俺に対する誤解が解けたであろう。
「よし、じゃあ戻るか」
「オッケー」
「そうですね」
「そうね」
「そうだな」
「キュイーン!」
こうして俺は改めてこのパーティの一員となった。
「えぇぇぇっっっ? 何で? 俺らクエストとクエスト外のネオゴブリンも倒したんだよ? 命懸けでそれなのにたったの20万5千ガナド? ふざけんな! もっと高くていいだろうが」
「今日はゆっくり宿で休みましょう」
「そ、そうだな」




