14話 「大書庫」
グレイヴァスとの話し合いが予定よりも遅く行われた。
「すまん、昨日は飲みすぎた」
「まあ、そういうこともありますよ」
グレイヴァスは俺らに何の用があるのだろうか。
「私が君たちを呼んだのは他でもない変異体についてだ」
なんとなく変異体のことだろうとは思っていた。たぶん、今回の件ではギルドトップとして関わっているのだろう。
「君たちに変異体調査を依頼したのは私だ」
「グレイヴァスさんだったんですね。でも、なぜ実績の少ない私たちなんですか?」
グレイヴァスは間を開けた。
「私は君たちにしか任せられないと判断した」
「それは、どうしてでしょうか?」
「君たちはパーティーランクEで変異体相手に誰も死なずに倒した。それに、君たちは変異体調査に意欲的だったからな」
「でも、私たちよりも上のパーティーランクの人たちもいますよね?」
「確かに、Bランク以上のパーティーの者に依頼することも考えた。しかし、高ランクのパーティーは目につきやすい。だから、そこまでランクも高くない君たちに任せたい。これが本当の理由だ」
なぜか俺にはグレイヴァスは隠していることがあるように感じた。
「わかりました、納得しました。なぜ、私たちなのか疑問に思っていたので」
グレイヴァスは表情をひとつも変えない。
「今のところ、私は変異体の大量出没の原因は魔王軍幹部ではないかと疑っている」
魔王軍幹部って確か、七人いるんだな。その中の誰かってことか?
レオンは真剣な顔をした。
「それって、ソドの可能性はあるんですか?」
「わからん。魔王軍幹部の可能性はあくまで私の憶測にすぎん。だが、魔王軍幹部の可能性は高い。ただ、誰かまでは私も想像がつかん」
「そう…ですか」
「しかし、噂では魔王軍幹部の空いていた席に新たな幹部がついたらしい。そいつの可能性もある」
てことは、魔王軍幹部は最近までは六人だったのか?誰がその一人を殺したんだ?
「なるほど、わかりました」
「今すぐ調査を再開しろ…と言いたいところだが」
グレイヴァスはユウキを見た。
「少し、世界についての知識が少ないようだ。この屋敷にある大書庫に行くといい」
「わ、わかりました」
「ミハル」
「はい、グレイヴァス様。御用でございましょうか」
「こいつらを大書庫に案内しろ」
「はい。それでは皆様こちらです」
ま、ちょうどいい機会だ。俺もこの世界のことをもっと知りたかったからな。歴史とかスキルとか魔法とかのことを調べたいところだな。
「大書庫は何冊ぐらいの本があるんですか?」
「約40万冊の本が置かれております」
「よ、40万冊ですって?さすがは六代英雄の屋敷なだけはあるわね」
俺らは階段を降りて地下に向かった。地下への入り口には小さな扉がついてた。その扉を開けると石階段が真っ直ぐ下に向かって伸びていた。先は暗くて何も見えない。ミハルは松明を持ち、階段を降り始めた。
「地下なんですね」
「はい。これほどまでに大きい書庫ですと、屋敷の中には入りきりませんから」
「なるほど」
階段を降りると先の見えない長い通路があった。通路には装飾はなく、天井も壁も地面も全て石でできていた。無機質な通路を真っ直ぐ進んでいると、突然、巨大な両開きの木製扉があった。濃い茶色の木肌には古い紋様が精巧に彫り込まれ、中央には真鍮製の大きな取っ手が取り付けられている。その扉からは、長い年月を経てもなお威厳を失わない重厚な雰囲気が漂っていた。
「ここです」
ミハルは重そうな扉をゆっくりと開けた。中が見えてきた。書庫の中の天井は地下とは思えないほど高く、まるで一つの図書館が地下にそのまま収められているかのようだった。壁という壁はすべて本棚で埋め尽くされ、数え切れないほどの本が整然と並んでいる。さらに二階にも本棚が続き、渡り廊下の両側まで本で埋め尽くされていた。
「ほぼ図書館じゃん…」
真ん中には木製の机とイスが置いてあり、そこで本を読めるようになっている。
「本は分野ごとに整理されております。ご興味のある分野からお探しください。」
「わかりました」
俺らは各々で自分の気になる分野から探し始めた。
(まずは、何から見ようかな…。ま、最初は魔法から見るか)
俺は魔法分野の本を探した。魔法分野の本は一階にあった。
(どれどれ…)
すると、『魔法の詳細』というめっちゃ安直な名前の本が目に留まった。
(名前からして、魔法の詳細が書いてあるんだろうな…)
俺はその本を手に取り、椅子に座って読み始めた。
──────
『魔法の詳細』
著:セラフィナ・ルミエール
魔法には大きく分けて自然魔法と特殊魔法がある。
自然魔法には基礎となる四大自然魔法がある。
四大自然魔法には炎・水・風・岩の四つがあり、この他の自然魔法は全て四大自然魔法の派生型魔法である。
自然魔法にはレベルがあり、1〜7まである。
・レベル1〜2は初級魔法
・レベル3〜4は中級魔法
・レベル5は上級魔法
・レベル6は王級魔法
・レベル7は神級魔法
レベルが上がるごとに魔力消費量と制御難易度が増加する。
レベル6の魔法は世界でも数少ない大魔法使いのみが扱える。
レベル7の魔法を習得した者は、歴史上でもほんの数人しか存在しない。その中でも自在に扱えた者は、さらに少ない。
派生型魔法はレベルが3〜7までしかない。基礎であるレベル1と2は存在しない。
理由は四大自然魔法は魔力操作の基礎から学ぶ必要がある。しかし派生型魔法は、既存の属性を変化・応用した高度な魔法であるため、初級段階では存在しない。
派生型魔法には純粋派生型魔法と複合派生型魔法の二つがある。
純粋派生型魔法は一つの四大自然魔法を変化・発展させた派生型魔法である。属性の性質への高い理解力や魔法操作の高い技術が要求される。
複合派生型魔法は複数の四大自然魔法を組み合わせた派生型魔法。純粋派生型魔法とは異なり、複数の魔法を組み合わせることで、新たな性質を持つ魔法を生み出すことができる。複合派生型魔法には、高い魔法構築力、魔力の流れを感覚で扱うことと、異なる属性の性質への高い理解力が必要になる。
純粋派生型魔法の紹介をする。
炎魔法の純粋派生型は『青炎魔法 ゼノフロム』、『黒炎魔法 ネロフラム』がある。
水魔法の純粋派生型魔法は『氷魔法 グラキアル』、『霧魔法 ゾフォス』がある。
風魔法の純粋派生型魔法は『音波魔法 ソヌコス』、『裂空魔法 ゾラーレ』がある。
岩魔法の純粋派生型魔法は『砂魔法 アンモスハレーナ』、『結晶魔法 クリスタス』がある。
複合派生型魔法は種類が多くここでは紹介を省く。
次に四大自然魔法の紹介をする。
まずは炎魔法からだ。炎魔法の初級では単純な火炎の操作を行い、中級以降は炎の密度や熱量を高めることで、より強力な攻撃魔法へと発展する。
Lv1 ファイアヒット
小規模な炎を生成し、対象へ放つ最も基本的な炎魔法。炎魔法の基礎となる術式である。
Lv2 ウォータークール
炎を放つだけでなく、身体や武器に炎を纏わせることができる初級応用魔法。
Lv3 フィティアースフェアラ
圧縮した炎を球状に形成し、高速で射出する中級魔法。
Lv4 プロクスアクティーン
高密度の炎を一直線に放出し、強力な熱線として攻撃する中級上位魔法。
Lv5 イグニススティーロスト
巨大な火柱を発生させ、広範囲を焼き尽くす上級魔法。
Lv6 メテオリーティス
炎魔法と隕石落下現象を融合させた王級魔法。燃え盛る隕石を降らせ、広範囲へ壊滅的な被害を与える。
Lv7 ピリニコスクラティス
炎の魔力を極限まで高め、核爆発級のエネルギーを発生させる神級魔法。発動地点には巨大な破壊痕が残るとされる。
以上が炎魔法の魔法体系だ。
次は水魔法だ。水魔法は水の流動性や形状変化を利用した魔法が多く、攻撃だけでなく防御や拘束など、幅広い応用が可能である。
高位になるほど操作する水量や圧力が増加し、氷結などの複合的な現象を伴うようになる。
Lv1 アクアスプラッシュ
少量の水を生成し、対象へ放つ最も基本的な水魔法。水魔法の基礎となる術式である。
Lv2 ウォータードロップ
水を一滴単位で高密度に操作し、圧縮した水滴を飛ばす初級応用魔法。
Lv3 ハイドロアクティーン
圧縮した水流を直線状に放出する中級魔法。高い貫通力を持つ。
Lv4 ネロスタゴネス
複数の水球を同時に生成し、連続して攻撃する中級上位魔法。
Lv5 カタラクティス
大量の水を一気に生成し、巨大な滝を発生させる上級魔法。圧倒的な水量で敵を押し流す。
Lv6 パゴーノペリフェリア
巨大な水球を形成し、内部または周囲の水を瞬時に凍結させる王級魔法。水と氷を組み合わせた高難度魔法である。
Lv7 テラスティオスネロスタグナ
超巨大な水球を生成する神級魔法。その質量と圧力は大規模な災害に匹敵し、広範囲へ甚大な影響を与える。
以上が水魔法の魔法体系だ。
次は風魔法だ。風魔法は、大気の流れや圧力を操作する四大自然魔法の一つである。
初級では単純な風の発生や操作を行い、中級以降では風速や圧力を高めることで、攻撃力や制圧力を増加させていく。
高位の風魔法では、大気そのものへ干渉し、広範囲に及ぶ自然現象を引き起こすことが可能になる。
Lv1 ウィンド
微弱な風を発生させる最も基本的な風魔法。風魔法。基礎となる術式である。
Lv2 エアスラッシュ
圧縮した風を刃状に形成し、対象へ放つ初級応用魔法。
Lv3 ヴェンティスレピダ
高速の風刃を生成し、連続攻撃を可能にする中級魔法。
Lv4 シフォルボ
広範囲に強力な旋風を発生させ、敵を吹き飛ばす中級上位魔法。
Lv5 サエヴィーエペスタクス
巨大な暴風を発生させ、周囲一帯を破壊する上級魔法。
Lv6 パルミコスアネモス
超高速・高密度の風を放ち、大気との衝突による強力な衝撃波を発生させる王級魔法。
Lv7 ネフェローマヴォルテクス
巨大な雲状の渦を形成し、大気全体を巻き込む神級魔法。天候に影響を与えるほどの力を持つ。
以上が風魔法の魔法体系だ。
最後は岩魔法だ。岩魔法は、大地や岩石を操作する四大自然魔法の一つである。
初級では岩石の生成や射出を行い、中級以降では岩の硬度や質量を高めることで、攻撃・防御の両面に優れた魔法へと発展する。
高位の岩魔法では、個々の岩だけではなく、大地そのものへ干渉し、地形を変化させることが可能になる。
Lv1 ロック
小規模な岩石を生成する最も基本的な岩魔法。岩魔法の基礎となる術式である。
Lv2 ロックキャノン
生成した岩を弾丸のように高速で射出する初級応用魔法。
Lv3 ルピスハスタ
地面から鋭い岩の槍を発生させ、対象を攻撃する中級魔法。
Lv4 ティリスレペクス
巨大な岩壁を生成し、攻撃を防ぐ中級上位魔法。
Lv5 マシスグラヴィタス
巨大な岩塊を生成し、その圧倒的な重量によって敵を押し潰す上級魔法。
Lv6 テラフムスグベルナティオ
大地そのものを操作し、地形を変化させる王級魔法。
Lv7 スティーロストルクティオー
大地から無数の巨大岩柱を出現させ、広範囲の戦場を支配する神級魔法。
以上が岩魔法の魔法体系だ。
次に特殊魔法の説明に入る…
──パタン。
ユウキは本を途中で閉じた。
(情報量が多すぎる。少し休憩してから続きを読むか…)
ユウキはしばらく考え込んだ。
俺は魔法をほぼ、感覚でやってたけど、こんな仕組みがあったのか。魔法は感覚だけではなく、仕組みを理解することも大切なのか。しかも、今俺が使える最高のレベルは3か。俺もまだまだなんだな。
魔王軍もこの魔法体系を取り入れているのか?それとも人間だけなのか?よくわからんが、いずれ調べればわかるか。




