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瞳子と八朔


そしてまず連れてこられたのは、アダマス本部の城とは別の建物。

そこはまさに、エスパー開発改造実験機関SKJだった。


外部も内部も、無機質で殺風景。

温かみはあまりなく、ただ清潔感だけを重視しているような佇まい。


「SKJを国が担っていた頃は、とても劣悪な環境だったそうです。しかし、アダマス創設者・甘艸亜斗里様が取り仕切るようになってからは、しっかりとした開発プログラムの元、日々ここで優秀なエスパーを生み出しています」



「ん……?ちょっと待ってください。SKJは、今は国が担っているわけではないということですか?」



「?ご存知なかったですか?

もう国などというものは存在しません。」



「はい?!」



「今は全て、アダマスが取り仕切っています」



建物内に入り、長い真っ白な廊下を歩きながら、瞳子は尚も説明を始めた。



「国管轄だった頃のSKJは、確かに被験者を無理に扱い、人権は無いに等しかった。そのせいで突然死したり、寿命が縮んだりしていた。

アルファベットと番号で割り振られ、まるで動物実験さながらでした。」



それは以前な志門や茂範から聞いていた話と同じだ。



「でも今はもう、ほぼ100パーセント、同レベルの優秀なエスパーだけを生み出せるようになったので、惨いやり方は無くなりました。

きちんと教育を受けさせ、体に負担のない実験と改造、そして豊かに暮らせる設備により、より高度なエスパーの世界が模倣的に再現されています。」



「……でも結局実験も改造もしてるなら、やっていることは同じでは?」



「全然違いますよ。

それに、人類が進歩する過程で、実験改造は避けては通れない道です。

それをいかに合理的に効率的に、できる限り人道的にやれるのか……亜斗里様はその全てを既に実現化させています」




そう言いながら、たくさんのドアのうちの1つを、目と指紋でパスワードを解除してから開いた。



「っ!!」



開かれたドアの先で、光は目を見開いた。

そこにはまた別次元が広がっていた。


まるで一種のテーマパークのように、いろいろな形の遊具のようなものやオブジェ、アトラクション的なものが揃っている。

そこには数名の子供たちが楽しそうに遊んでいた。



「ここはいわゆる、自由に遊べる息抜きの場です。もちろんスキルの行使は原則禁止。でも仮にスキルによって何かが起きたり壊れたりしても、大体の子が自分で直しちゃうんですけどね」



そしてまた次の部屋に移動した。

扉を開けた瞬間から熱風を浴び、マグマが見える。

そこはまさに、一言で言えば火山だった。

それを前に、小さな男の子が大人の女性の指導の元、訓練のようなことをしているのが見えた。


ジュババババババ!!!


男の子が放った滝のような凄まじいスキルによって、なんとマグマが氷化した。


「すごいっ……!あんな小さい子が……」



次の部屋、またその次の部屋も、川や滝に囲まれた水の地の部屋、草木に囲まれた大地の部屋、砂漠、岩と崖の部屋、空中の部屋、様々な楽器が置かれ音楽がひたすら流れているだけの部屋、カラフルな部屋、真っ暗な部屋など、コンセプトごとに数え切れないほどの部屋があった。

他にも研究室や治療室などまだまだあるらしい。


光は、今まで想像していたものは単なる自分の思い込みに過ぎなかったのだと分かり、千鶴の言っていた言葉の意味を悟った。



「少し前までは、あなたたちサイ組織やアクシア組織によってSKJが襲撃され、一部の被検体たちがここから連れ出されました。

今年に入ってからは、アクシアの手配により数名が脱走しました。

まぁでもそれももう二度と起きることはないでしょう。」



脱走の話も、以前志門が言っていたことと一致する。



「とにかく以前の国管轄を排除してからは、全く別の機関へと生まれ変わったんですよ。

まぁ私はその頃ここにはいなかったので、詳しくは知りませんが、経験していたエスパーの話によると、まるで今は別次元でしょう」



「瞳子さんは、一体いつからここに?」



光がふと疑問を尋ねると、瞳子は歩みを止め、少し沈黙した。



「さぁ……覚えてません」



「え……?」



瞳子は止まっていたことに気がついたかのようにハッと顔を上げると、



「では最後に、亜斗里様をご紹介しますね。」



そう言ってまた別の離れた棟へと向かった。



その途中で、前から1人の少年が歩いてきた。

アダマスの皆とお揃いのマントを羽織っている。

少しパープルがかった髪がサラサラと風に揺れていた。



「誰を連れている、瞳子」



「お疲れ様です八朔(はっさく)様。こちらはSPIの月詠光さん。環様に言われて館内を案内しております。」



八朔……?

どこかで聞いたことのある名だ。

……一体どこで?



" 志門くん……八朔と仲良くしてくれてありがとう。あの子、まだあんなに小さかったし、寂しがり屋だから、志門くんがいてくれて救われてたと思う。"



ふと、小鳥遊柚の言っていたことを思い出した。

そして玲二が志門にした説明。



"……4年前かな…。茂さん指導の元、SKJ潜入計画があった。その時僕は、柚のことは助け出すことができたんだけど……弟の八朔くんは……手遅れだったんだ"



"またかよ……俺は死神なのか……?

俺と仲良くしてた奴みんな、みんなみんな、やっぱり消えてくじゃねぇかよ……"



あのときの絶望している志門の顔も。

つまり……八朔は死んでなかったということだ。

これを知ったら、志門も柚も大喜びするだろう。




「八朔くんっ……!」



光はつい大きな声を出してしまった。



「小鳥遊八朔くんだよね?!柚さんの弟さんの!!生きてたんだ!よかったーっ……本当に……」



「あ?なんだお前は。」



「俺は柚さんと同じ組織にいる後輩なんだ!志門くんのことも分かるよね?!志門くんもキミのことを、」



「おい、なんの話しをしている?

人違いじゃないのか?そんな奴ら知らん。」



「え……え、ちょっと待ってっ」



さぞ気味悪そうに光を一瞥してから、マントを翻し足早に去っていってしまった。



「………。」


人違い……か?

いや、でも……

髪の色も、見た目の年齢も、名前も、全てが一致する。


まさか何かおかしな術の類をかけられて……?


だけど玲二さんは、手遅れだったんだと言っていたし、きっとそのとき確実にその子の死を目の当たりにしたはずだ。


だからもしかしたらこの子は本当に赤の他人かもしれない……

そもそもここにはあまりにもたくさんの人がいるはず……


このことは柚さんにも志門くんにも言わないようにしよう。

俺の勝手な解釈や憶測で下手に期待を持たせたり失望させたりなんてことになっては困る。




「光さん、こちらです」



黙って瞳子の後を追う。


まさか……この人もなんらかの術にかけられてたりなんてことは……?

だから同じ夢を見るとか……?


ということは……

もしかして俺も………??


いや……これもただの俺の勝手で無知な解釈……憶測か……

情報が無さすぎていくら考えても分からないことは決して分からない。



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