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アクシア潜入



光、雀、燕の3人が辿り着いたアクシアの拠点。

それは具体的に言えば、東京、銀座だった。



「懐かしいわ〜ここ……。アタシと燕はね、元々は夜の街の住人だったのよ。ま、光くんにはちょっとまだ早すぎる世界でしょうけど」



歩きながら雀はそう切り出した。



「あの時期は2人で生きてくのに精一杯でねー……親に捨てられた身だったし、大変で辛かったなぁ……」



雀は想いを馳せるように上を向いた。

今日の空はくっきり澄み切っていて、とても綺麗な青だ。



「夜の街にいれば、いろんな情報が混在する。私たちのスキルのおかげもあって、いつのまにか情報屋みたいになってたの。

そしたらある日ね、頻繁に情報だけを買いに現れるお客が現れたのよ。それが茂さん」



「そうなんですか?」



「不思議な人だった。本当に。酒にも私たちにも手をつけず、ただお金払って情報だけ聞いて帰ってくのよ。」



夜の世界がどんな感じかはもちろん光は知らないが、茂さんのことだ。

他のことには興味を示さず、仏頂面で完全に自分の世界にだけ入り込んでいる様子が易易と想像できた。



「私に興味示さないお客だって思ったら、なんだか腹が立っちゃって……たまには飲みましょうよ!って強引に誘ったらね、なんて言ったと思う?!」



「え?うーん……忙しいからとかなんとか?」



「違うわよ!!この世で1番ロマンチックな言葉を言われたの!後にも先にも、言葉一つで燃えるような恋をしたことないわ!」



「えぇ……な、なんて言われたんです?」



随分と興奮気味な雀に若干引いてしまう。

しかしこう近くで見ると、確かに色気があってかなりの美人だし、夜の街で働いていた頃なんかはきっと、メイクや髪型でもっともっと凄まじい魅力があったのだろう。

茂さん以外の客はイチコロだったに違いないと予想がつく。



「君を丸ごと買おう。いくらかな。

ですってーーーー!!!きゃぁぁあ」



「うるっせぇな」と後ろで呟く燕の声が微かに聞こえ、光は初めて疑問に思う。

雀は納得いくが、燕は本当に夜の接客なんてできていたのか?客を不快にさせてばかりいたんじゃないだろうか?……と。



「何見てんだよ……」


「いや別に……」



しかしまぁ、なるほど。

そういった流れで茂さんのところにいるのか。

俺のように、皆それぞれいろいろな経緯があるんだな……




「ささ、着いたわよ」



「……え?どこです?」



「ここよ。」



「……んん?」



ココと言われても、どう見ても何の変哲もない小さな公園だ。

そもそも銀座に公園があること自体が予想外なのだが、砂場に滑り台、シーソーとブランコが置いてあるだけで、ここのどこがアジトなのか全くわからない。


キョロキョロとしていると、雀が光の肩に手を置いた。そして、燕の手を取り、もう片方の肩に手を置かせた。



「?」



「いい?光くん。今からこの下に潜っていくわ」



「は、はい?」



下……と言われても、土しかない。

まさか地面に潜っていくということだろうか?



「あなたには私たちと同じスキルも眠ってるはずよね。だから今から速攻で感覚を掴んでもらいます」



「えっ、」



何かを発する前に、2人は同時にスキルを使いだした。

その一瞬のプロセスが、なぜか光の中に、手に取るように流れ込んできた。


あ……これが感覚……


そう気付くのに時間はかからなかった。



そっか……

俺の中にある特殊なスキルの蕾は、そのスキルを持つエスパーが俺の神経に流し込むことによって、共通のスキルを引き出すわけか……



3人はそのまま、徐々に下へ下へと下がっていき、地上からは完全に姿を消した。





そうして降り立った場所は、大きな美しい城のような建物の前だった。



「すごいな……なんだか映画で出てくる宮殿みたいですね」



「趣味悪すぎだろう」



「………。」



この女とは一生仲良くできそうにない。と思いながら雀について行く。


先程、透明になるスキルも会得したため、今は3人とも外部からは認識されない状態だ。



「そういえば……あのさ、燕さん。

今更だけどあなた、抹消のスキルがあるんでしたよね?それに加え、雀さんみたいに透明能力やすり抜けも?」



ルミエール病院では、その凄まじい抹消のスキルで全員を消してしまったはずだ。

あまり話したくは無いが、光は少しでも気になったことは聞かずにはいられないタイプだ。



「いや……あのスキルはもうない。」



「は?どういう……」



「あれはアダマスのトップ、亜斗里(あとり)様のスキルだ」



「?!」



そいつにはスキルを譲渡したり剥奪したりするようなスキルがあるのか……?!


また何か言葉を発しようとした瞬間、



「!!!」



「こんにちは。何か御用でしょうか?」



目の前に、ニコニコ顔の美青年がいる。



まだここに入ってわずか数メートルしか歩いていない。

しかも今は3人とも無色透明のはずだ。

にもかかわらず、この少年に、さも当たり前のように見つかってしまった。


3人の中に一気に緊張感が滾り出した。



「……えぇ。もちろん用があって来たわ。お友達を連れ戻しに来たの。何のことだかわかるわよね?」



さすが冷静な雀姉さん。一瞬も怯まない。

しかし少年も、その穏やかな笑みでは想像もつかないほど強く出る。



「さようでございますか。しかし彼女は只今手が離せない状態でして、お会いするのは不可能と思われます。今日のところはお引き取り願えませんでしょうか?今なら不法侵入を見逃してさしあげます」



「は?あんたたちが勝手に攫ったんだろう。ならばこっちも勝手に連れ戻させてもらう。いいな」



やはり燕も一切怯まず、少年の横を通り過ぎようと数歩前に出た。


その瞬間……



ズバババババババー………



朗らかな笑みのまま少年が杖を振るように人差し指を振ると、燕は目にも止まらぬ速さで数メートル遠くに飛ばされて行った。


あまりにも一瞬のことすぎて2人が唖然としていると、少年が指を鳴らした。



「うあっ!」

「捕まって!」



床を通り抜け、凄い勢いで下へ下へと落ちていく真っ暗闇の中、雀が光を引き寄せ、そのまま雀のスキルで別の場所に辛うじて脱出した。



「うっ、おぇっ……ど、どーすんですか?

燕さんとはぐれちゃいましたよ」



あまりにも早すぎて目が回り吐き気を催す。

しかし雀は至って冷静だ。



「ここまでの流れは想定内。

そもそもアクシアでそう簡単に動けるわけないんだから」



「えっ」



「今頃あの少年は、燕が足止めしているわ」



雀は「ついてきて」とだけ言い、周囲に視線を走らせながらあらゆる所を通り抜けていった。


何度か通り抜けた先で、大きな庭園のような場所を見た。

一瞬だけだったが、その庭には、何度も見たことがある気がする小さな白い花が一面に咲いていた。


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