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恋なのかな


「あれ……どうしてこうなった……」



颯は焼肉店の厨房で仕込みをしながら呟いた。


ちょうど空いているからと、この店の2階に住まわせてもらえることになったはいいのだが……

そのかわり、毎朝店の掃除や仕込み、買い出しや雑用などといったことを任されるようになったのだ。


「ま、いっか。俺ファミレスでバイトしてたし、嫌いじゃないぜこーゆーの。」


おりゃりゃりゃりゃーーーーっ!


ザクザクと野菜やら肉やらを猛スピードで切り刻む。


「やぁ、おはよう颯くん。今日も早くて助かるよ。ランチタイム宜しくねぇ」


「あ!おはよっす店長!もうランチの仕込み終わったんでディナーの方やってるっすよ!」


「えっ!!」



とてつもなく仕事の早い颯なのであった。


そのとき……



「おはようございます!」


「おぉ朱星ちゃん、おはよう」



朱星がにこやかな笑顔で登場し、エプロンを身につけた。



「おはようございます朱星さん。

ランチオープンまでもうやることないっすよ」


「えっ!!」



そんなこんなで今日もランチ営業を開始したのだが、颯はここ数日気になっていることがあった。


かなり頻繁に来る客の1人と朱星がいつも親しくしていることだ。

一見、絶対に知らないはずの男なのだが、どういうわけか見たことがある気がしてならない。


男は今日もランチに来ていて、朱星と仲良さげに話していた。


「あのぅ、朱星さん?

あちらの方は誰なんですかー?

もしかして彼氏さんとか?」


思い切って聞いてみると、朱星は一気に顔を赤くした。


「ちっ、違うよ!一条さんっていって、最近よく来てくれるから、少し仲良くなっただけで……」



「はっは〜ん。朱星さん、さてはその人に惚れてるんですね?」



わかり易すぎる彼女に思わずニヤついてしまった。



「なっ……!ち……そうじゃなくて……」


「別に隠さなくったっていいじゃないですかぁ。俺じゃなくてもその顔見たら一目瞭然っすよ!」


朱星の顔はますます赤くなっていく。

たちまち俯いてしまったため、颯はからかいすぎたか?と慌てて何か言おうとした瞬間、朱星は小さく口を開いた。


「本当に……違うの……」


「え?」


「なんだか初めて会った時から……絶対初めてじゃない不思議な感じがするっていうか……」


颯の目が見開かれる。


「ずっと昔に何度も……会ってるような気がするっていうか……」


「朱星さん……それは……」


林檎のように赤い顔を火照らせながら、朱星がハッとしたように颯に言い訳しようとした。

が……


「それこそ運命の相手ってやつですよ朱星さん!」


「え……っ」


実は颯は、少女漫画を読むことを趣味としていた。

そのため、たまに光にも失笑されるくらい脳内が乙女チックなロマンチストなのである。



「いやぁ〜恋かぁ〜うんうん、いいなぁ〜

俺も早くそんなズッキュンな出会いが欲しいよぉ〜」



「こ、恋……なのかな?

確かに素敵な人だなぁとは思うけど……」


朱星は恋愛などという経験が全く無いため、初めての感情に困惑していた。


「朱星さん!こうなったらデートっすよデート!じゃなきゃ始まらねぇっす!」


「えっ、で、デート?!そんなのどうしたら……」


「普通にそのまま言えばいいんですよ!今度私とどこか行きませんか?的な!

可愛い朱星さんの誘いを断る男なんて絶対いないっすから安心してください!」


「そ、そうかな……」


朱星は耳まで赤くしている。


「いいですか朱星さん!次に会ったとき、さっそくGOですよ!!」


「つ、次……あの……颯くんっ!よかったら練習させてくれないかな……?」


「勿論っすよ!少女漫画ヲタクのこの俺が!セリフから表情の作り方から声のトーンまで!ありとあらゆるノウハウをみっちり叩き込んであげますよ!!」


「ほっ本当?!わぁ……ありがとう!」



颯は練習に付き合いながら内心思っていた。


その一条という男は、まさに光の父親に違いないと。



まさか俺が光を生み出したキューピットだったとは……!!


これはなにがなんでも2人をくっつけなくては!!




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