私だって戦える
光は店の地下室を出てから逃げつつも、朱星を庇いながら戦っていた。
しかし、
「光!私だって戦えるよ?!
私のことは気にしなくていいから!」
なんと朱星もスキルを使いだした。
光はそのパワーに目を見張ってしまった。
やはりこの時代のエスパーは只者では無い。
しかし追いかけてくるアダマスエスパーたちも相当の強さだ。
なかなか巻けないし、そもそも5人もいる。
光は走りながら虫を呼び寄せた。
一気にたくさんの蜂や蛾や蝿などがアダマスに襲いかかっていく。
これは賢吾のスキルだ。
2人のエスパーの視界を奪い、そのまま光は急いで空中に蛇の絵を描いた。
かなり歪でモトキのようにはいかないが、蛇は視界を奪ったエスパーたちの方へ行き、大きな口を開けて飲み込んだ。
その隙に、朱星が太陽光を掴むように手をかざしたかと思えば、一気にそちらに目掛けて放ち、2人のエスパーは目を白黒させて落ちた。
「す、すごい朱星ちゃん……」
そんなことを言っている場合ではない。
光の首に、何かが巻き付いた。
それは、包帯のようなものだと分かったが、光は呼吸を妨げられ、動けなくなった。
「光っ!!」
しかし朱星もほかのエスパーを相手しているため、補助に行けない状態だ。
ヤバい……息がっ……
次第に目が見えなくなってくる。
そのまま迫ってきてトドメを刺そうとしてくるエスパーの姿が見えた。
ダメだ……っ!意識を失うな!
光は意識が途絶える瞬間、間一髪で体中に炎を滾らせた。
首の包帯は燃え落ち、そのまま力を振り絞って目の前に迫ってきたエスパーの顔面をスキルと共に殴る。
バリンッ!
そのエスパーの仮面が割れた。
「っ!!あなたはっ……」
それは、アダマス本部で1度出会った白人美女、パウリナだった。
「……やはり一筋縄ではいかないですね光さん……」
血の着いた顔面を拭きながら、パウリナはニヤリと笑った。
「俺はっ、あの時あなたのことを信じていたのにっ」
「はぁ、何を仰っているのです?
何かを信じれば必ず失敗すると、貴方はその身をもって学ぶべきですね」
バシュシュシュシュ
「っく……」
クルクルと舞い上がりながら、妙な粉を撒き散らすパウリナ。
光はそれを吸い込んでしまったため、また呼吸ができなくなり、ガクッと膝をついた。
「さて……仕上げですよ」
上からゆっくりと垂らしてくる液体。
それが粉に触れる瞬間、光は無意識に、震える手で靴に触れていた。
次の瞬間、光は消えていて、ドカンドカンドカンと凄まじい音で粉たちは爆発しだした。
パウリナは成功したと思い口角を上げながらその爆発を眺めていたが、煙が薄れてきたのと同時に、そこに光が居ないことに気が付き唖然とする。
「なっ?!一体どこへっ」
朱星は自分を追いかけていた2人のうち、1人を殺すことに成功していた。
落ちていた箒を大きな刀のような刃に変え、グサリと心臓に一突きしたままもう1人のエスパーを見る。
もう1人のエスパーはそんな恐ろしい少女の光景に驚愕していた。
「クソっ……小娘が!!」
朱星はそのエスパーの後ろに、苦しそうにもがいている光が見え、ハッとした。
急いで刃を抜き、もう1人が出してくる技を瞬時によけつつ肩に刺し、光の方へ駆けつけて行った。
後ろでエスパーが叫んでいるのが聞こえる。
「光っ!どこかやられ……っは……!」
妙なものを吸ったのだと分かり、あまり得意ではない治癒のスキルを光の喉に施す。
しかし、あまり効き目がないようだ。
「無駄ですよ、お嬢さん」
「あんたたちっ、一体なんなの!そのマント……見たことない。政府の奴らじゃない……」
「えぇまぁ…この世界の住人ではないですので」
「……は?」と朱星は耳を疑った。
全くもって意味がわからない。
しかし、そこに言及している余裕が今は無い。
「政府の奴らじゃないなら、どうして私たちを狙うの」
「真の平和のためです」
パウリナはさぞ当たり前かのように即答した。
「……光を…元に戻して」
「すみませんが、それはできません。
まとめて2人とも始末できるこの状況を、みすみす逃すわけには」
ニコッと笑ったのと同時に、当然真後ろから気配を感じたため、光を引きづり避ける。
先程朱星に肩を刺されたエスパーが凄い形相で後ろから攻撃してきていた。
ここは屋上。
朱星はそのエスパーを囲むように手すりにパワーを込めた。
こちらに飛んでこようとしていたエスパーは、手すりに閉じ込められるようにして邪魔された。
「っは!光っ」
朱星が目を離していた隙に、光はなんとか力を振り絞ってパウリナの攻撃を弾いていた。
パウリナの舌打ちが聞こえる。
「光っ、だいじょ」
光は独自のスキルを新たに開花させ、呼吸を妨げていたパウリナのスキルを少しずつ抹消しているようだった。
徐々に息を吹き返していくが、まだ思うようには行かないようで、苦しそうにしている。
「はぁっ……はぁっ……」
光は治癒のスキルを自分へ向けて発動しながら、更にパウリナの方へと手を伸ばしていた。
しかし、ダブルでスキルを出すということは、並のエスパーには到底不可能なのだ。
手元がブレる……パウリナの姿もよく見えない……
でもやらなきゃ……俺がやらなきゃ……
朱星ちゃんは向こうのエスパーで手一杯だ。
俺のことを心配させるなんて情けなさすぎる……
俺は何しに来たんだ……!
どんな状況になっても諦めるな……!
光は伸ばした手の先になんとか集中する。
そして、なにか技を放たれる寸前で拳を握るような動作を取った。
それによって、シュッと技を握り潰すことが出来た。
その見たこともないスキルに、パウリナは目を見開いている。
その瞬間、パウリナにたくさんの鳥が集ってきた。
「ひゃっ!なっ!ぃやっ…ぁあっ…!」
なんとか椛のスキルを使うことができたが、まだ息が思うように吸えない。
しかし、そんなことは言ってられない。
今がチャンスだ。
光は今にも雨が降りそうな曇っている空に気がついた。
ボワっ!
パウリナのスキルによって、鳥たちは一瞬で燃やされてしまった。
ドゴーン!
しかしそれとほぼ同時に、パウリナに雷が落ちた。
ビリビリと電気が体中を巡り、突き刺すような痛みにパウリナは動けなくなった。
「うそ……っ……こんなところでっ…終わるっ…わけには……」
這いつくばって、グッと拳を握り、
歯が砕けるほど食いしばる。
「亜…斗里、様っ……モ…ニカ……っ……」
なぜだろう…
最初に会った時の姿が浮かぶ。




