521 鱗じゃないけど…
「「黒白無常です」」
「ねぇ、さっきから聞いたことがない名前ばかりなのだけど、大陸の妖怪なの?」
私の知識にはない名前ばかりを言われる。
青嵐と月影の普段の服装から気になってはいたのだけど、大陸の方にも常闇が繋がっていたってこと?
いや、摩耗している石ということは古くからこの世界にいるということだ。
ということはだ、最初は大陸のほうに常闇が繋がっていたけど、徐々に移動していったと予想できる。
そうだよね。敷き詰められるほどの石があるのだ。島国だけで賄える量ではないよね。
「「はい」」
「それでこくびゃく?」
「「黒白無常です」」
「それはどんな妖怪?」
「閻魔の使いです」
「閻魔の命により人の魂を冥界に連れて行くモノです」
「ヤバいやつだよね!」
「「しかし、この世界に閻魔がいるとは思えません」」
はっ!確かに。
地下には獅子王がいるものの、閻魔はいない。
ならば、その者たちが己の役目を果たすことはないということだね。
「それはどの石?」
私はどの精霊石かを尋ねる。
すると青嵐と月影の両方が同時に指でさし示した。
白と黒がマダラに混じった石だった。
私はその石を手にとって席を立つ。二体出てくるということは幅をとりそうだからね。
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私は呆然と見る。眼の前に顕れたモノを見る。
確かに一対と言われたから二体だと思った。それはいい。
それよりも……これは……怪しい格好をした人だ。
一人は白い衣を着て頭に高帽をかぶり、白い旗のようなものがついた棒を手にしている。
もう一人は青みがかった黒い衣をまとい頭には高帽をかぶっている。
なにかの祭事を行う者のような格好の者が二人現れたのだ。
それも子供。5歳か6歳ほどにしか見えない。
これ。大丈夫なの?
「子供なのだけど?」
「「そうですね」」
「角が見えるのだけど?」
お偉い人が被るような高さがある帽子の下から小さなツノが見えている。
「「鬼ですから」」
思わず酒吞と茨木の方を見てしまった。
威圧感というものが子供二人からはかんじられないのだけど?
「これ、使えるの?」
「「そこのおなごよ。先ほどから無礼である」」
「率先力が必要なのだけど!子供って……」
「「そこのおなごよ。子供とは我らのことであるか?我らの力を見た目という尺で測ろうとするでない」」
私が青嵐と月影に話しかけているのに、白と黒の子供が割って入ってくる。
人が話しているときに割り込んでくるのは無礼じゃないの?
「しかし、ずいぶんと摩耗しておりましたので、致し方がないかと」
「我らも喚び出された当初は弱き龍でしたので、そういうものかと」
はっ!世界に食われた後の出涸らしだった。
「確かにミミズとツチノコもどきだったよね」
「「「ぐふっ!」」」
何故か蛇共が胸のあたりを押さえてうずくまっている。
思い返せば、青嵐と月影がリトを半月ほどで使えるようにすると言っていた。おそらくそれは、全盛期とはいかないまでも、ある程度の力を回復させるという意味だったのだろう。
「ねぇ、シロとクロ」
「「それはもしかして我らのことを言っておるのか?犬畜生のような呼び方をするでない!」」
なんだか、凄くプライドが高そうなクソガキだね。
わかりやすくていいじゃない。
「じゃ、ポチとポンタ」
「「どちらがどちらなのかわからぬ呼び方をするでない」」
単体ではポチとかポンタでもいいのか。
でも多分、青嵐と月影は何も反応していないけど、茨木からクスクスという笑い声が聞こえているから、花咲かじいさんの犬につけられた名前だと知れば、怒ってきそうだよね。
「それじゃ、真白と烏衣」
見た目でわかる呼び名だ。真白はそのまま白い衣を着た鬼に、烏衣は烏のような黒い衣のことなので、黒い鬼に。
そのままという名前だ。
「「まぁ、よい。それでなんであるか?」」
「使えそうに無いから戻って」
私は白と黒のまだらの石を掲げる。
すると、目の前の子供二人は唖然とした姿のまま、石に吸い込まれるように消えていった。
「ぶはははははは!まさか、喚び出して名付けまでして石の返すって、普通ないよな」
酒吞の笑い声が室内に響き渡る。
そんなにおかしいことかなぁ?だって、流石に子供二人を、ぽつんと一軒家に置きっぱなしって駄目でしょう。
「ねぇ。今度は人型じゃないのにしてよ。森の中で大人しくしていそうなの」
私は追加の要望を青嵐と月影に言った。
出涸らしでも、小物を威圧するほどの妖怪はいるはずだよね。
「あの……主様。石の中で騒いでいるようですが?」
「これはあまりにも非道な仕打ちかと」
ヘビ二匹が子鬼共に同情をし始めた。
別に非道っていうことほどじゃないでしょう。
「邪魔なプライドの塊はへし折るか、相手にしないのが一番いいんだよ」




